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帆∞翼(セイル バイ ウイング) -太陽そして風と供に- 

海・南風・そして何より”真夏の太陽”が大好きな翔です。

「よろしく!」  

T-シャツ そして 隼

2017年05月02日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

本当に気持ちいい季節ですよね~ 

今日はバイク通勤。

朝は、さすがにまだグラブ、 帰りはジャケット脱いで、それを無造作にリアシートにくくりつけると、セルボタンを押す。

 

T-シャツでの帰宅 

 

もう・・・・・、そんな季節なんだよね! と、思うけど、 あと一月すると梅雨にもなる。

 

 

 

「あの日と同じ」

 

季節は駆け巡り、毎日体に飛び込んでくる様々は、とても刺激的でもある。

時計が180度動く程度の、短い様で長い時間、 朝と夕

同じ一日なのに 全く違う一日。

 

信号が変わり、ギアを蹴り込み、 エンジン回転にミートするクラッチ、 左指の感覚と右手の動き、耳に入るリズムと全身に伝わる振動がメロディーを織りなすと、

重力は下から後方へとシフトして、

ヘルメットシールドの、わずかな隙間から香るのは、太陽の香りと、春の天使が去りゆく際に残す羽の香り。

 

幼き頃からずっと繰り返してきた、何気ない季節の変化は、 僕の人生の歩みと供に変化して、

有る時は楽しく、有る時は悲しく、そして涙が出そうな夕日は、そうあの頃のまま。

 

変化しているようでいて、変化していないこの季節、

違うように思うのは、 積み重ねられた思い出が色を付けるから・・・・

 

By  翔


無題

2017年02月20日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

 

 

げんこつ

この、とてもおっかなくて、でも優しくて

手の平、

とても大きくて、でも何故か厳しい

 

げんこつより柔らかくて暖かいはずなのに・・・・

 

指に刺さった、ほんの小さなトゲ

怖いと逃げる僕をふん捕まえ、

目を細めてとげ抜きする、その不器用な指先

 

茶色、ささくれ、

ヘチマを握っている指  いや!やはり痛い~よ、全身ゴシゴシ。

薪風呂の香りと、トンボの入ったカゴ。

 

汚れている

親指が、爪先に入っている労働という汚れ。

それ見ながら、半分抵抗を諦めている僕が居る

 

何にでもムカついていた反抗期

 

 

分厚くて、何でも握りつぶす力。

 

でも、記憶に思い出す事に苦労するほど数少ない、本当に貴重な思い出はそこにある。

頭を撫でてくれた、心地よさ

 

親父の手

 

 BY 翔

 

 

 


最後の羅針盤 by 熊木杏里 そしてストリーム by 僕

2017年01月16日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

Anri Kumaki - Saigo No Rashinban

以下、例のごとくエッセイ というか、相変わらずへたくそな物を書いています。

だいぶ前に下書きしておいて、そのままになっていたのを、アップしました。

しかし酷い出来だ・・・・保留のままになっていたのがよく分る  です、ハイ!

夜に、一部訂正しました  冷汗、単純なミスが有りましたので、すいません。

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女にとって 素晴らしい男とは何だろう・・・・

経済力? 容姿? 高学歴という看板?

 

男にとって 女とはなに?

生命? 輝き? 光輝く小川?      それとも命の源?

 

それなら僕は何だろうね?  陽光? 暖かさ? ヒマワリ? ? ん?

 

いやいや違うよ、いつも傍にいて、君の両腕にやさしく触れる風、   それが僕。

 

けして怒らず、甘やかしもせず、悲しませもせず、 いつも髪を撫でつつ流れていくだけの存在。

 

満点の星空に現れる 銀河(*シルクウェイ)はなぜ波打っているか?君に解るかい・・・

*あえてミルキーウェイにしていません、ミルクのべたっとした感覚がどうにも・・・・シルクの輝きと波打ち方、手触り感の方が合っていると思うので。

 

それは地球(現実)と宇宙との狭間に流れがあるから。

 

星が瞬くのは何故か? 答えを教えよう 愛する君へ。

暖かくて、そして時として厳しい心のストリーム、 それが夜空の星を瞬かせるのさ。 

 

男なんて、いつもそんなものなんだ・・・・

 

「エアストリーム」 by 翔 

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桜2016

2016年04月06日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

桜 2016

 

とても暖かくて、 風が心地よくて・・・・ そんな桜の季節。

何時も一人で来て、静かに春の一時をすごす。

誰も知らない、静かでいて、でも僕にとって大切な場所。

草に寝転び、青空を見上げると、陽光の中に幾千の春の妖精達が舞う、

頬を擽る大地の息吹達は、小さな声で 「夏 夏 すぐだよ!」と囁く。

小さな一時、でも、とてつもなく大きい。 幸せは常に自分の側にある。

 

By 翔

 

 


無題

2015年08月26日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

「 無題 」    詩 By 翔

少しほどけたススキと、ゆるりと舞う赤とんぼ。

夕日に溶ける赤と、 ゴールドの翼。 

どこからか飛ばされてきた麦わら帽子に

浜ヒルガオも少し悲しそう

葉だけがまだ幾分かの青を残している。



まだ緑を残す桜の葉、絡み取られた蜘蛛の糸。

朝日にそまる森は、少しだけ先取り色

置き忘れられて穴の空いた虫取り網。

地面に落ち、二度と唄わず分解されてつつ

故郷(大地)に帰るセミ達



大気に薫る麦の穂、 風の舞う姿と恵みの夢

風見鶏が時を告げ、 気まぐれな唄と

嵐が連れてくる暖かくて、冷たい風。

人の姿も失われ、取り残された海辺の竹垣達が歌う 

季節の子守歌 



肌に残る太陽、 潮に焼けた髪とブラウンの瞳 

握られた暑い砂は、 細い砂の軌跡として散り

「まだ僕はいるよ!」そう呟く海の風。

乾きゆくセイルに、ミクロの粒となって飛んでいく水は、

想い出へと変わっていく




いつかの自分、 汚れた短パンに汗だくのシャツ

片手にカブトムシ、 片方にザリガニ、 

蛇口から溢れる生暖かい水の甘い感触

花火と火傷と歓声、 手を付けていない宿題に、

まっさらなままの絵日記



いつかの少年、 何時までも変わらない心

今あるこの一瞬、 僕につながる人達と

母である海、そして地球という親父

強さは人のために、 優しさは愛する人のために、 

記憶という煌めきだけが 僕の物






僕は僕の物であって、 僕だけの物でも無く、 

人の物ではなくて、人の物でも有る


世に生まれ出る事、それは取り囲む全てと溶け合うこと。

言葉では無く、 言葉で有り、 

だから僕たちは囁きながらも囁かずに去って行くんだと、



もうすぐ秋の風が来るから、「よろしく!」 

そう言いながら笑顔で去っていくシーブリーズ。

又来年会おうよ! そう彼らに送る言葉と供に・・・・



マーガレット

2015年05月19日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

マーガレット            詩 By 翔 

季節を隔てる レインシーズン

冬のような冷徹さは無く 夏の様に情熱的でもない

そんな空を僕は見上げる 

 

雨の滴が瞳に落ちると 一瞬だけ感じられるその冷たさは 曇り空に歪みを創りつつ

体の四方へ分散していき やがて手の指先から大気となって放たれ

足の指先から大地に染みこむ

 

懐かしいような 寂しいような いつかの自分がそこに居て

後どれくらいこの季節を迎えれば僕は あの香りから解放されるのだろうか

浜昼顔が咲き乱れる季節にストーリーは始まり 紫陽花が咲く前に

僕の前から失われた光。

 

写真嫌いの僕の腕を 強引に絡めて撮られた一枚の写真は そのまぶしさ故 に 引き出しの奥にしまわれたまま

始まりがあれば、終わりがある 永遠は無く しかしながら

記憶は消して消えること無く 又色あせることは無い

そう思うことが多くなった

 

路面のあちらこちらに有る 無数の鏡達は 雨粒が落ちる度に揺れ

その紋様は物理の理論通りに 正確に広がって 鏡面の角まで来ると折り返し 

元来たところに戻ろうとする あたかも僕の心を見透かすように

 

青き16才の夏も これから迎える夏も 違うようでいて

何ら変ることの無い自分がそこに居て それは現実であり 夢のよう

 

レインシーズン 中途半端であって しかしながらそれが無くては

季節はシフトしないのだ

パラパラという雨音はとても単純で しかしながら滴はその砕け散る対象物により

美しいメロディを奏でる それはあの歌声のように

 

タンポポの花達が雨の中で凜とした姿を咲かせ その横を濡れて歩く僕

雨粒と戯れ 嬉しそうに弾んでいた緑の葉達が僕に気付くと そっと囁いてくれれた

「僕たちの上に虹がかかり あの草原がマーガレットに覆われたら

夏が始まるよ」と

 

 

*浜昼顔の素晴らしい写真は、ここからお借りしました。

http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Ocean/3026/


ストリーム

2015年05月13日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

ストリーム         詩 By 翔

 

子供の頃、台風は恐くて、でも何故か心ときめいて・・・

ワクワクする存在だった。

流れる雲、 やけに綺麗な空と夕焼け、 そして雨戸を叩くストリーム


弱虫だった僕は


いつかはハリケーンの様な男になりたいと思った

でも、それって独りよがり

打ち付ける大きな雨粒と、泣き出しそうになる僕の心はストリーム



一度過ぎれば、その高揚感も、脈打つトキメキもなく

それはただ、何時もの時間に戻るだけ。

生きることは思いも行かない嵐との遭遇、 揉まれる心はストリーム

 

 

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今朝、台風明けの朝日は 暖かくて優しかったです。

早くTシャツで通勤できる季節にならないかな~  

 


タップ

2015年04月28日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

 

タップ    詩 by 翔


走りながら 左手で少しだけシールドを上げる

とたんにヘルメットの中に流れ込んでくるのは 初夏の風

その温かさは僕の心をタップする

 

その左手をクラッチレバーに戻す その一瞬

流れてくるエアストリームは5つの指先で4つの流れを創りあげ

乾いた空気が指先をタップする

 

アクセルを握る右手 少しだけ煽りこまれるスロットル

4気筒シリンダーのエンジンはメロディを刻み 踊る新芽達

木影の譜線に音符をタップする

 

常に変調を要求されるギアは 次々とシフトを繰り返す

左足の指先はあたかもリズムを刻むバスドラムのハンマーペダル

路端に輝く タンポポ達のシンバル

 

右足の指先は、いつも始まりと終わりをタクト

流れの速さも、強弱も、そして一つの曲の終わりは大地と供にあり

停止し静寂になった時、バイクはたたずむ

 

 

少しだけ汗ばんだTシャツを海風が貫き、空と海を蒼くペイントする

色とりどりの季節は確実に陽炎の季節へと変化し、そこには常に太陽。

ヘルメットを脱ぐと 瞳に流れ込む季節の光は眩しく それでいて心を躍らせる

 

 

目を閉じて心を研ぎ澄ますと聞こえてくる音


命の証明


生まれた瞬間からもらった     鼓動というタップ。


「ターボフロップ」 エッセイ

2015年01月14日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

「ターボフロップ」 エッセイ by 翔    

 

今日はいつもより長いな・・・・・、いい加減に鉛筆を持つ指が痛い。

僕の仕事は何かを販売する事でも無く、造るわけでもなく、 殆どが学習時間に割り当てられていて、

勉強することで給与をもらっているという表現の方がピタリとくる。

部屋の中のあらゆる物に微細な振動を与え続けているそれは、重低音と甲高い金属音、そしてワイトノイズの塊。 

もう2時間近くやっているかな・・・・

いい加減寒くなってきたな~と、そして「そろそろ休憩を取ろうか!?」と思った時、「キュ~~~ン」という音と供にジェット音が収まった。

部屋のドアを明けると、とたんにムッとした空気と、ジェット燃料がもえた独特の臭気が建物中央の廊下に立ちこめている。

この臭いは「好きか?」と聞かれれば、「いや余り・・・」と答えるけど、「嫌いか?」と聞かれれば、「それほどでも・・・・」と答える僕。

天井を見上げると、ラウンド型の鉄骨むき出し天井にかすかな煙が存在していて、よどんでいる。

大戦後に造られた、僕の居る建物は航空機整備用の建物を改造したもので、 建物番号は1番。 

ハンガーと呼ばれるこれは、ど真んを一本だけ通る廊下以外は、左右に倉庫と事務所という構成で、それぞれの事務所には隔壁と天井が着いてはいるが、 空調のダクトやら電線やらなにやらが、たいそう乱暴にむき出し放置されている。

それらの部屋の上には、だだっ広い空間で、ハンガーのラウンド天井との間には大きな空間があるけど、季節により鳥が入りこんで巣を造り、ツバメの雛の声として聞こえるときもある。

暗くて100mは有ろう、その廊下の南側には道路、 もう反対側の北側は直に滑走路に接続していて、その開け放たれた両ドアを真夏のサーマルウインドが通り抜けていく。

部屋を出た僕はその廊下をゆっくりと歩き、滑走路側に出るとすぐ横の壁によりかかって前を見る、そしてすぐに気づくのが、やけに音が今日は大きかった原因。

自分から約200m程度離れた斜め少し右前に、巨大な輸送機 C5がたたずみ、 そのエンジンはこちらに向いている、

エンジンテストの為の滑走路アンカーに機体は連結され、下に居る整備兵がトレーラ過般のデカイ発電機の横でウンザリしながら仕事をしているのが見える。 

「どおりで振動が凄かった訳だ・・・・・ 」何となくクスリと笑いが出てくるが、部屋を出て数十秒で、冷えていた体がすぐに暖まって来るのも同じタイミングで分かる。

ろくに温度コントロールの出来ない各部屋の空調は、外気温が上がるほど冷やしてくれるというとても親切な設計であるが、アバウトすぎて、こうした日は室温20度を割ることもある。

しばらく目の前の巨大な飛行機をみていたけど、 すでに暖まるという感じから汗が出始める感覚に移りつつ有り、今滑走路を焼き尽くしている太陽はそこいら中に陽炎も落としている事に気がつく。

けだるいような、それでいて週末に何をしようか?とワクワクした感覚を惹気させる夏の午後、その一時はとても気持ちが良い。

突然後ろから、Too hot!  So Hot!(熱いな~今日は・・・・) そう声がして、振り返ると。 

僕の属するメンテナンスチームのその少し離れた部屋にある、電子機器修理部門によく訪ねてくる、将校だった。

Yes, sir! と軽く答えて彼をみるけど、彼そのものは特段僕に目を向けるでも無く、それ以上話すわけでも無いまま、僕と同じく眼前にある巨大な銀色の翼をみている。

彼の横顔をちらりと見た僕だけど、再び視線をC5に戻そうとしたとき、その向こうのファイアーセクションの建物から、世界最大の航空機専用消防車がゆっくり出てくるのが目に入った。

「降りて来るな・・・・・」 そう思った僕は 反射的に東の空をみる。

そこに見えたのは4発のターボフロップエンジンを搭載した C-130輸送機。 

続けて プラット&ホイットニー社エンジンを搭載した Cー141らしき姿が遙か彼方に見える。

すでにランディングギアを出した深いグリーンのそれはあと数十秒しないうちに、目の前を通り過ぎるだろう。

僕を包むそれは、アスファルトの熱気でむせかえる程で、 多分温度は40度近いはず、いや越えているかも知れない。

ふと気がつくとさっきの将校は居なくなっていて、 その代わりに数匹のトンボが飛んでいる。

こいつが群れて飛ぶと、今沖縄付近にいる台風は間違いなくこちらにやってくるのだけど、恋人と約束している週末バカンスは、どうやらお流れになりそうだな・・・・

と彼らを見て思う。

そんな彼らが突然バッ!と散り、目も前を4発のグリーンが軽快なプロペラ音と供に通り抜けていった。

あと2時間もすれば今日の仕事は終わりだ、 そろそろ、部屋に戻らなくては・・・

再び暗い廊下を歩きつつ思う。

今夜のデートも、あの娘はきっと輝くほど綺麗さなんだろうな・・・・と




*エッセイです、僕の若き日の思いでのワンシーンを綴りました。


「8ノット」   超短編小説 BY 翔

2014年12月09日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

「8ノット」

どれくらいの時間が経ったのだろう、すこし慌てる僕・・・・

時計をみると、たった数分の事だったと知り、少しだけ安心する。

青い空は変わらずで、一つだけ違うのは太陽の角度がさっきより左にすこしずれているだけの事。

ウトウトしているわずかな時の狭間に、バウ(船の先端)へ降りた数羽のカモメが羽を休めている。

船の速度は8ノット、静かにヒール(セイルに風を受けて傾いた状態)するハル(船体)は滑るように海面を飛ばす。

このところ、彼女の事で掻き回されている僕は少々寝不足。

右の遙か彼方に、わずかに見える陸をちらりと見てラットを固定、急ぎウインチのロックを外し、両腕でメインシートをギリギリと引き込む。

*クルーザーはセイルを引き込むときにハンドウインチを使います

そして再びラット(操舵輪)をリリースすると、少しだけ船をクローズ方向(風上)へ向ける。

ヒールは増し、右のガンネル(船の横ヘリ)が海の中に浸り始める。

速度は10ノットに増し。 南の風は、僕の体に夏を届けつつ、北へ向かっていく。 

「秋を呼びに行ってるんだろうな・・・・」 なんて少しだけ思う。

もう一度空を見ると、 ブルーを割るように真っ白なセイルが風を孕んでいる。

デートの約束をほっぽらかして、船を出した僕。

焼きもち焼で、可愛くて、心に素直なあの娘。

きっとプリプリ怒りながら、ハーバーへの道を車で飛ばしているだろうなと・・・・

そう思うと、クスリと笑いが出てくる。

バウが海面を割るたびに上がる波飛沫は シーブリーズによってさらに細かく砕かれ、太陽と結託した虹を僕の前に創りあげつつ、後ろへと流れていく。

少しだけ大きなブローがやってきた、コンパスはそれを浮遊させている液体の中で揺れ動きつつも、同じ方向を指し示す。

時計をみると、時刻は14時13分、そろそろ帰らないとね。

メインセールのウインチロックを解除、同時にラットを回すと、マストは独特の振動をハルに伝えつつ、 船は風上を向き、そして、そしてぐるりと回頭する。

オートマチックジブ(二枚帆の前)がまず風を捉える、少しだけ遅れて、メインセイルに風が入るのを確認すると、 ウインチにシートロープを数回巻き付け、 ギリギリと巻き上げる。

両腕の筋肉が盛り上がるけど、十分に焼けた腕はウインチに似合うなと一瞬だけ思う。

ブローを捉えると船はヒールを初め、押し出す様に34フィートのクルーザーを走らせるが、 すこしだけランニング(追い風)方向へ向けているせいか、不安定だ。

コンパスを再度確認して、 ラットを右へ数分(5度位)だけ進ませると、なつのストリーム(気流)の中に、ヨットはすっぽりと入りこむ。

潮の流れはマリーナ方向へ進路をとっているので、 2時間もすると多数のマストが見えてくるはず。

さっきと真逆の位置に来た太陽が、新しい顔を僕に見せてくれているけど、
少しだけ困った表情をしている、 「わかっているよ・・・」、 どう彼女に言い訳したらよいかを心配してくれているんだよね。

「ありがとう!」そして 「なんとかなるさ・・・・」

ラットをもう少しだけ進ませる。

ヒールはさらに強くなり、多数の虹が現れては消え、 相変わらず南の風は僕の傍らを黙って通り過ぎていく。

耳に入るのは風の音と、波の音、 とても静かで居て、幸せな一時。

マリーナに段々と近づくけど、 もう少し行かないと防波堤に阻まれた桟橋は見えない。

タック(方向転換)した際に驚いて飛び去ったカモメが再び現れると、今度はマストを支えるサイドステイに留まろうと試みる、 それは真っ青に踊るホワイトの踊り子。

しばし翼の動きに瞳をとられるけど、無事にマストに留まったのを確認した僕は視線を前に。

白と濃紺で彩られた、建物、 多数のヨットには傾き始めた陽光が当たり、全てを輝かせている。

そして桟橋に眼を移すと、 真っ白なワンピースが両腕を大きく振ってここに居るよ!と合図している。

怒っているはずなのに、 合図って・・・・

すこしだけ、苦笑いする僕だけど、 どうやら今夜はとびっきりの夕飯をおごらされそうだ。

そう思いつつ、オレンジが少しだけ入り始めている夏の光に照らし出される彼女を目指して、僕は舵をにぎる。


「相撲」

2014年11月24日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

「相撲」         エッセイ BY 翔

夕飯は鳥鍋、 その前にビールを飲みつつ親父と二人で相撲ウオッチ。

実のところ、僕そのものは相撲をほとんど見なくて、逆に親父と母親は大の相撲好き。

僕が親父と一緒に相撲を”じっくり”見るのは、正直言って始めての事かもしれない。

誰がどうなっているのか?が、よく解らない僕は親父に聞きつつ見ているけど、 僕の質問に余り明確には答えない。

と言うか、多分面倒くさいのだと思う・・・・・

 

遙か昔、小学校低学年の頃の話。

セミの声がヒグラシに変わる頃に、外から泥まみれになって帰ってきた僕の首根っこを捕まえると、そのまま風呂場に連れて行き、風呂に放り込んだ。

薪で焚かれた風呂のお湯は、今のようにガスで沸かされた物とは違い、肌に刺すような刺々しさがある。

いやあちらこちらに出来た擦り傷に沁みていたという方が正解かもしれない。

頭からシャンプーと石けんまみれにされて、薩摩芋みたいにゴロゴリ洗うと、必ず最後はバケツで頭からお湯をドカッ!・・・。

洗っている間に、火力が落ちにくい薪釜故、 湯温が上がっていても、お構いなしにやる親父なので、時々「あちちち!」

先に僕をあげると、母親がタオルで包んでくれるが、頭をごしごしと拭いている時の柔らかい音と、 親父が体を洗うタオルの音が混ざり合う。 

 

風呂上がりにタオルを首からさげ、パンツ一丁でビールを飲む親父が見ていたのは、相撲・野球・ボクシング・そしてプロレス。

枝豆をつまんでいる親父の皿から、ポチポチと手を出して盗み食い?していた僕の記憶に残る親父の顔は、ひげそり後の残るツルツルだった・・・・

「ノコッター! ノコッター!」 の声に浮かぶかすかな記憶。

 

今はそこに多数の皺が刻まれ、その一本一本に、当時の懐かしい面影と想い出だけが残されている。

 

テレビに映る力士の取り組みは、次第に重量級となっていき、それまでの若手から頂点を制する物達の闘いへシフトし、いよいよクライマックスを迎える。

その横から、「御飯出来たよ!」 と声をかける母親。   

これもも何一つ変わってはいない・・・・

ふっと心は時を飛び越え、 そこには当時も今も変わらない親子の姿、 家庭の姿がある。

 

幸せでいて、しかしながら必ず将来は終わりがくる小さな宴(幸せ)。

後どれくらいこうした時が送れるのだろうか・・・・・と、何とも言えない悲しい気持がふつふつと沸いて来るが、それが人の定めなのだと。

 


シンクロ

2014年11月12日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

シンクロ」    エッセイ BY 隼

信号が赤から青へ、少しだけアクセルを開け、ギアを蹴り込む!

クラッチをミートさせると同時に、4気筒エンジンの奏でるサウンドは気持ちとシンクロしながら車体を前に押し出す。

ファースト、セカンド、サードとリズミカルにシフトをしていくと、
ライディングジャケットの開けてある襟や袖から、朝の空気が流れ込んでは体を洗いながして後方へ・・・・

そんな僕を無視するかのようにして、彼女は何も語らず、体を柔らかいケースに包まれつつ、少しだけ斜めの姿を後方に晒している。

安物だけどね、純白の砂浜にだけ見られる、コーラルブルーの姿は、これから向かう季節にあらがうように、僕へ暖かさを届けてくれるんだ。

夏の間はね、 シーブリーズ達が僕を取巻き、 無口なその娘は部屋の片隅にずっとたたずんでいるけど、

季節が替わって、ふと暖かさが恋しくなった僕は、そっとケースを開けて取り出す。

そして、綺麗なクロスで丁寧に拭きあげてチューニング。

いけね・・・・弦を張ったままだった・・・・

しばらく会えなかった恋人みたいに、まるで拗ねているかの様に音が微妙にずれる。

優しく「ごめんね!」とその娘につぶやくと、そのまま左腕でフレットを押さえ、右手の指で撫でるように弦をはじき始めると、

不機嫌はすぐに和らぎ、 素敵な表情を見せ始めると同時に、美しい声を僕の心へ流し込んでくれる。

4速から5速、そして6速にシフトすると、 再び5速へギアを蹴り落として、レブカウンターを2500回転に保つ、

「クッ!」 後ろのやつがウザい、 別に格好付けているわけじゃ無い。
彼女(ギター)を離したくないから連れているだけだ。

ウィンカーを左に出してそいつに道を譲ると、そいつは不機嫌そうに横を通り抜け、 テールランプを僕の目に突き立てつつ離れていく。

朝まで降っていた雨は、アスファルトの上に透明のベールをかぶせ、街路灯の明かりをキラキラと反射させている。

次の交差点を左に曲がれば着くけど、そこは霧とシンクロする朝日がとても美しいところ。

日常の中で、うっかりすると消えてしまいがちで、でも少しだけ注意をすれば得られる幸せ、というのはあらゆる処に存在してる。

サイドスタンドを出して車体を傾けると、イグニッションキーをオフにする。 

あたかもそれがリセット信号のように、4気筒、弦、太陽の全てが静寂というシンクロで統一。 僕の一日はそこからスタートする。


「落葉」

2014年10月30日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

落葉     詩 BY 翔

一枚拾い上げる
指先で触れてみる、
手のひらで包んでみる

瞳を閉じてみる
命を感じてみる
季節を読み取ってみる

たった半年
暖かい春の光の中で生まれ、
夏の強烈な光の中で涼しい影を創り
秋の静けさの中でそっと散りゆく

握り込んでみる
破いてみる
大地にそっと落としてみる

たった半年
命を支えるために生まれ
光合成で栄養をひたすら創り
最後は虫たちのベッドとなる

ほんの少しの、
何気ない時間だけど、
彼らの、かすかな声を聞き取れたような気がする、

「美しき春の為だからね・・・・」 と。


「クォーターコイン」 超短編小説 BY 翔

2014年10月21日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

あ~ぁ すっかり濡れちまったな・・・・・・

 
イグニッションキーをOFFにすると同時に、4シリンダーは沈黙する。

 
0 を指したレブカンターを見つつシートから降りると、マフラーに落ちる雨粒がシュッ!という小さな音と同時に、これまた小さな蒸気となり、消えていく。


今日は雨になると 天気予報で言っていたけどね、来ちまった。

ヘルメットを脱いで、 歩いてその店へ近づくと、オシャレなテーブルと椅子の並ぶ小さなウッドデッキの下から 一匹の子猫が出てきた。

僕と同じですっかり濡れている。

メットをデッキの上に置き、僕は着ていたジャケットを脱ぐと、腕の中にそのこを抱きかかえた。 

そしてジャケットを肩にかけて半分左側へずらし、小さな雨よけ空間をつくる。

どうやら捨て猫らしいが、このまま抱いて店の中へは入れない。

 

そのままそっとバイクのところへ戻ると、傾いた車体のシートに半分体を預け、もう一度子猫を見る。

ぶるぶると震えながら、小さな声で幾度か鳴いて、その後は僕の目をずっと見つめている。

首輪が付けられているけど、それには”この子をお願いします”とタグが付いていて、「これじゃ~飼い猫と間違えるだけだろ?」と苦笑する僕。

くたびれたアーリーアメリカン風のその喫茶店には 幌馬車の木製輪がぽつりと置かれ、 上と下に大きなガラスがはめ込まれている古ぼけた木製ドアは、 建物と同じアイボリーに彩られてる。

ただ、所々が剥げていて、木目がそのままむき出しになっている事が、独特の雰囲気を創りだしている。

この店は僕にとって思い出の場所で、「あの日もこんな日だったよな・・・・」、と空を見つめる。

秋の雨は優しくて、同時に冷たくも有り、 「それはね、月の涙から出来ているからなの・・・・」と教えてくれた彼女。 

全て僕のせいだ・・・・今更ながら後悔しても時は戻らない。

こんなに濡れて、と 右手で子猫の背中を撫でると、柔らかい毛の感触が伝わり、同時に吸い込まれていた雨の感覚が手のひらに姿を現す。

無精してハンカチ等を持ち歩かない僕は、それをズボンのポケット辺りで拭うしかないのだけど、何度かやれば少しはこのこも乾くだろうと。

ふと、ポケットの中の感触に気がついた。  数日前に部屋の片付けをしていて、引き出しの奥から出てきたクォーター(25セント)のコイン。

そうだよな・・・・今日、この店に来たのはこれを還す為だった。

といっても相手はもういない。 

手をポケットに突っ込んで握りしめ、取り出しながら開いてみると、銀色に輝くそれが姿を現す。

ぽつぽつと空から落ちてくる滴の一つがその上で弾け飛び、小さな輝きをたくさん造りあげていく。

アメリカのインディアン呪術師が 雨を練り込んだという不思議なコインらしいけど、果たして僕の人生をどう左右してきたのだろうか?なんて考えてみたけど、答えは出てこない。

指さきで、つるつると拭うと、それは満月の輝きと重なる様で、秋の雨は月の涙という言葉が又頭の中をかけめぐる。

コインを指でつまみ、 子猫の体にそっと触れさせ、 喫茶店のデッキの片隅まで歩いていくとそれを置く僕。  

どうやらそれで、思い出は、良き思い出になりそうだなと・・・・ あきらめと満足感みたいな不思議な感覚を、僕にもたらしてくれる。

コーヒーを飲んで・・・・なんて考えていた僕だけど、この腕の中の子猫が温もりを取り戻しながら、僕の体温と中和していく間にそんな思いは飛んでしまった。

一緒に帰るか?と子猫にそっと囁いてみる。

ジャケットを再び着ると胸のジッパーを半分降ろし、 そこに子猫を包み込むと、スタンドを挙げてキーを回す。

再び起動した1300ccのエンジン音は、ドロドロした低いサウンドを地面に這わせ、軽くスロットルを煽ると レブカウンターの針は目の覚めるような早さで動く。

メットをかぶる前にもう一度空を見あげてみると、僕の瞳の中に小さな雨粒が弾け飛んだ。

そしてそれは、なぜか不思議と頬をながれていく。

「あの娘は今、幸せになっているだろうか?」と思うけど 1速に蹴り込んだ際に出るミッションサウンドは、「いい加減に前を向けよ!」と僕にささやく。

そうだよな・・・・  「ありがとう!」と、誰に向けるでも無くぽつりと一言。

クラッチを繋いで走り出した先には、綺麗な夕焼け空がひろがり初め、その中に飛び込んでいく自分がここにいる。

 


ゴールド

2014年10月10日 | ど下手な 詩集やエッセイ等

 

Photo: http://normantour.exblog.jp/m2011-09-01/

 

 

「ゴールド」

立ちこめる朝霧の中を歩く、 目の前に広がるは一面のゴールド。

朝の太陽はあらゆる物を輝かせ、それが痛いほど瞳を貫きつつ、時間を停めてしまう。

 

左の手のひらを広げ、霧を掴んでみる。

同時に、右手の指先で立木の葉に触れてみる。

 

滑って転げ落ちる滴が指先に冷たい感覚を与え、もう一方は指先からスルリと逃げていく空気。

繋がるようでいて、僕を介して接続できないこの二つは、やがて空に昇り雨となって大地に降り注ぐ。

 

いつぞやのそれはとても暖かく、 雷鳴を轟かせ、虹を演出しながら僕を洗い流していた。

傘を忘れて、 たったそれだけで泣いていたんだよね、純粋で弱虫だった・・・・

 

そんな時、「君はまだ知らないことが多いね」と 優しい笑顔を見せながら消えていく積乱雲。

緑から始まる季節の変化は、嵐の訪れを重ねるたびに深くなり、黄から赤へ、そして大地の色になって地中へ溶け込んでいく。

 

目の前に広がる金色が尚一層輝いて周りが見えない、ただ、それに包まれる事に微塵の不快さはない。 清々しいくらいだ。

あと1時間もすれば景色はいつもと同じになり、時計はまた正確な時を刻みはじめる。

 

ほんのわずかな時間に起きる変化の中に身を浸すという事、そしてそれをどれだけ幸せに受け取れるか?

知らないことを知る素晴らしさとは、

そう、あのときの積乱雲が僕に教えてくれたことだ・・・・

 

少しだけずり落ちたバックパックのショルダーベルトを握ると、「ありがとう」と一言だけつぶやき、再び歩き出す。

あの日、雨に打たれていた少年の心のままに・・・・

 

詩  BY  翔