78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎東京シャープストーリー(第6話)

2019-09-18 01:27:09 | 東京シャープストーリー

※読む順番
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話第2話最終話

◎東京シャープストーリー(序章第1話第2話第3話第4話第5話

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【第六部:悲しみの祝福】

 2018年12月5日、送別会前日。僕はいつものように目の前の仕事に追われていた。

 しかし、その事実は突然耳に入ってきた。

 

──11月22日に、シャープは入籍していた──

 

 青天の霹靂。10年来の彼氏が居ることは知っていたし、2人が同棲していることも周知の事実だった。

 それでも、いざその時が来ると、その事実を真っ直ぐ受け入れられない自分が居た。

 

 

 どんなに悲しくても夜は更け、やがて朝が来る。

 その日を待ちに待っていたはずなのに、素直に喜べないもどかしさ。

 

 

 16時。その日の仕事が終わるや否や、僕は新宿伊勢丹の洋菓子店に向かった。

 ウェディングドレス姿の少女を模ったケーキを購入し、早めにこっそり居酒屋へ行き、冷やしておいてもらう(※事前に電話で伝えてあります)。

 

 18時。アルタ前に3人が集合、いよいよ店へ。僕は下見も含め3度目の入店となった。

(シャープ)「すごーい、8階にあるんだ」

(僕)「夜景が見えることも重視しました」

 

 真剣に店を選んだ甲斐もあり、シャープは喜んでくれた。

 しかし、乾杯の直前に、シャープの口から出た言葉は、

 

(シャープ)「私、結婚しました」

 

 目の前で、とても近い距離で、心の底から嬉しそうな顔を僕に見せた。

 知っていたことでも、改めて本人の口から聞くことで、ようやく実感が沸いてきた。

 そうか、本当に結婚したんだ……。

 

 その後は3人で他愛も無い話で盛り上がった。

(シャープ)「ここだけの話なんだけど、実は職場のA男さんとB子さんが付き合っています」

(僕)「えっ!?」

 

 宴も終盤に差し掛かる頃、僕はトイレに行くフリをしてキッチンの店員に、仕込んでおいたケーキを持ってきてもらうよう頼んだ。

 席に戻り間もなくしてサプライズのケーキが登場。

 

(僕)「結婚のお祝いとして急遽用意しました」

(シャープ)「すごーい。ありがとー」

 

 デジカメでの写真撮影も成功。後日プリントアウトしたものを2人に渡した。

 僕はその写真を今でもフォトスタンドに入れて飾ってある。

 嬉しくも悲しい思い出は、こうして形に残すことが出来た。

 

 

──3つの季節を経て、この物語があのような結末を迎えてしまうことになろうとは、この時の僕は微塵も思っていなかった──

 

(つづく)


◎東京シャープストーリー(第5話)

2019-09-18 00:51:11 | 東京シャープストーリー

※読む順番
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話第2話最終話

◎東京シャープストーリー(序章第1話第2話第3話第4話

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※これまでのあらすじ

 2018年10月、シャープを飲み会に誘い、断られた。

 これにより、シャープが僕を嫌っているのではないかという疑惑が浮上していた。

 

【第五部:大逆転ホームラン】

 2018年11月某日。友人の運営するスポーツサークルの集まりに、僕は参加した。

 不得手な卓球で一恥かいた後、近くの居酒屋で2次会が開かれた。

 どういう流れだったのか、話題はいつの間にか僕の恋愛話に。

(僕)「それでシャープさんに『忘年会いつにします?』とLINEで聞いたら、『その話まだ生きていたの?』と返ってきました。それでもう無理かなって」

(メンバーA)「え、それで諦めるんですか?

(メンバーB)「もう一度聞いてみたらどうですか?」

 意外にもサークルのメンバーは前向きな見解を示した。

(メンバーC)「もう一回送っちゃえYO!」

 悩んだ末、僕はその場の勢いに身を任せることにした。

 

(僕LINE)『やっぱり忘年会やりませんか?』

 

 10分か5分か、その返信は早かった記憶がある。

 

(シャープLINE)『いいですよ』

 

 

 それは奇跡だった。当初の予定メンバー・アラシックスではなく、20年選手(40代♂)を呼ぶことを条件に参加をOKしてくれたのだ。

 

 それから約2週間、僕は幹事となり忘年会の準備を進めた。

 気心知れた3人だけの忘年会でも気を抜かなかった。居酒屋は何店舗も下見をした。掘りごたつ式の個室はもちろんのこと、内装が綺麗であることや、トイレが男女別など、女性目線で店を決めた。

 また、シャープの気持ちを尊重し、忘年会は3人だけの秘密にすることにした。

 それでも思い出として写真に残したい。1枚だけ集合写真を撮ろうと決めていたが、スマホで撮影すればそのままSNSにUPされるのではと疑われるかもしれない。そこで、押入れに眠っていたコンパクトデジカメを取り出し、充電や動作確認をした。デジカメなら少しは安心させられるはず。

 とにかく準備には余念が無かった。こんな大チャンスは二度と訪れないと思っていたから。

 

 

 しかし、送別会の前日、悲劇は起きた。

(つづく)