※読む順番
◎仕事上のコミュニケーションを今更頑張った話(第1話→第2話→最終話)
↓
◎東京シャープストーリー(序章→第1話→第2話→第3話→第4話→第5話)
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【第六部:悲しみの祝福】
2018年12月5日、送別会前日。僕はいつものように目の前の仕事に追われていた。
しかし、その事実は突然耳に入ってきた。
──11月22日に、シャープは入籍していた──
青天の霹靂。10年来の彼氏が居ることは知っていたし、2人が同棲していることも周知の事実だった。
それでも、いざその時が来ると、その事実を真っ直ぐ受け入れられない自分が居た。
どんなに悲しくても夜は更け、やがて朝が来る。
その日を待ちに待っていたはずなのに、素直に喜べないもどかしさ。
16時。その日の仕事が終わるや否や、僕は新宿伊勢丹の洋菓子店に向かった。
ウェディングドレス姿の少女を模ったケーキを購入し、早めにこっそり居酒屋へ行き、冷やしておいてもらう(※事前に電話で伝えてあります)。
18時。アルタ前に3人が集合、いよいよ店へ。僕は下見も含め3度目の入店となった。
(シャープ)「すごーい、8階にあるんだ」
(僕)「夜景が見えることも重視しました」
真剣に店を選んだ甲斐もあり、シャープは喜んでくれた。
しかし、乾杯の直前に、シャープの口から出た言葉は、
(シャープ)「私、結婚しました」
目の前で、とても近い距離で、心の底から嬉しそうな顔を僕に見せた。
知っていたことでも、改めて本人の口から聞くことで、ようやく実感が沸いてきた。
そうか、本当に結婚したんだ……。
その後は3人で他愛も無い話で盛り上がった。
(シャープ)「ここだけの話なんだけど、実は職場のA男さんとB子さんが付き合っています」
(僕)「えっ!?」
宴も終盤に差し掛かる頃、僕はトイレに行くフリをしてキッチンの店員に、仕込んでおいたケーキを持ってきてもらうよう頼んだ。
席に戻り間もなくしてサプライズのケーキが登場。
(僕)「結婚のお祝いとして急遽用意しました」
(シャープ)「すごーい。ありがとー」
デジカメでの写真撮影も成功。後日プリントアウトしたものを2人に渡した。
僕はその写真を今でもフォトスタンドに入れて飾ってある。
嬉しくも悲しい思い出は、こうして形に残すことが出来た。
──3つの季節を経て、この物語があのような結末を迎えてしまうことになろうとは、この時の僕は微塵も思っていなかった──
(つづく)