78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎あの殺傷事件の余波で自己防衛に走るアイドル急増……ファンは自発的に意識改善すべき

2016-06-25 12:16:03 | ほぼ週刊サンマイ新聞
「ここぞとばかりにアイドルたちが『リプしなくても怒らないでください』『病まれるのは迷惑です』『文句言わないでください』『そんな人たちは応援に来ないでください』と今までやんわりとしか伝えてなかったことをストレートにツイートし始めてオタクをふるいにかけ始めた」

 2016年5月22日、ある男性会社員のツイートである。その前日には元アイドルの女性がファンとみられる男に20ヶ所以上も刺される凄惨な事件が日本中を震撼させた。
 地下やローカルも含め、今や日本に5000人以上居るとも言われている“アイドル”、その多くは握手会やSNSなどによるファンとの“接触型交流”を売りにしているが、それ故に迷惑行為をしてしまう心無いファンも少なからず存在する。それがエスカレートした結果が今回の殺傷事件である。

 そして今、保身の如くファンをふるいにかけるアイドルは急増している。2015年にSKE48を卒業した松井玲奈は主演舞台『新・幕末純情伝』でキスシーンや胸を揉まれるシーンなども演じることが確定しており、多くのファンが落胆の声を上げている。また“まりやぎ”の愛称で知られる元AKB48の永尾まりやは、6月17日に放送されたバラエティー番組でイケメンモデルとディープキスを交わし、画面の向こうに居る数多のファンを意気消沈させた。

 残酷な事件が起きてしまっている以上、彼女たちの自己防衛に口を出すことは出来まい。むしろ、ふるいにかけた先に残る“真のファン”のみを大事にしていくことがアイドルにとっての幸せなのかもしれない。しかし、今本当に必要なのは我々“ファン”側の意識改善ではないのか。

 突然だが皆さんは声優のライブをご覧になったことがあるだろうか。2014年夏にさいたまスーパーアリーナで開催されたアニソン歌手の祭典『Animelo Summer Live』(通称アニサマ)で、μ'sやミルキィホームズのメンバーでも知られる女性声優・三森すずこが登場したときのことだった。観客席のファン達が一斉に“キングブレード”と呼ばれるサイリウムをピンク色に切り替えたのだ。

「初めてのソロ出演で不安ですけど、ここにあるピンクの一本一本が、私の支えです」

 3万本のピンクを目の当たりにした三森のその言葉を、現場に居た当方は今でも忘れていない。もちろん歌唱中は合いの手で一体化。一人一人は名前も顔さえも覚えてもらえていないけれど、3万人が束になり息を合わせれば忘れられない思い出となって相手に届けられるのだ。そのことを全国のアイドルオタクは決して忘れないで欲しい。握手会に行きたい、SNSに直接メッセージを送りたい気持ちは分かる。それを止めるつもりは無いが、例え認知されなくても、返信が来なくても、あるいはふるいにかけられても悲観しないで欲しい。それがアイドルとファンの“本来の距離”であり、お互いが幸せで居られる“適度な距離”なのだから。

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◎予告編を観て幻滅!『四月は君の嘘』実写版は最低限の設定さえも無視していた

2016-06-08 03:49:15 | ほぼ週刊サンマイ新聞
 人気漫画やアニメの実写映画化は原作ファンからの反感を買いがちなのは定説だが、それでも何の事情が働いたのか、新川直司氏原作の人気漫画『四月は君の嘘』の実写版制作は発表され、2016年6月2日には「いきものがかり」の主題歌をバックに予告動画も公開された。当方は決して漫画の実写化そのものを全否定するつもりは無いが、今回ばかりは言わせて欲しい。このまま変更なく予告編の通りに公開された場合、とんでもない改悪が起きてしまうということを。

 そもそも原作は、母の死を境にピアノの音が聴こえなくなり、天才ピアニストの肩書きを封印していた少年・有馬公生が、譜面をなぞろうとせず我流の表現によって聴衆を魅了する自由奔放なバイオリニスト・宮園かをりとの出会いによって少しずつ心を開いていく物語。演奏シーンの丁寧な描写は漫画版・アニメ版とも評価が高く、特に綺麗な着色や壮大なサウンドも加わる後者は放送当時、納期ギリギリまで制作していたほどクオリティーにこだわった逸品となっている。
 また、かをりが難病を抱えるなどシリアス成分が物語の大半を占め、作中に頻発するポエム調のモノローグなどが独特の世界観を作り出したことも人気の理由と言える。

 では実写版における改悪の危機とは何か。予告動画の開始45秒、校内で倒れるかをりを見つけた公生が「宮園!」と叫ぶシーンである。公生とかをりは互いを名前ではなく「君(きみ)」と呼び合うことで、恋人でも友達でも無い独特の関係であることを表現していた。もちろん名前を知らないのではなく“あえて”君という呼称を連発するのだ。対して公生に片想いを寄せる澤部椿は一貫して「コウセイ」と呼ぶ為、公生との距離がかをりと椿で異なることも明確に表している。当方はアニメ版でこの作品を知ったが、そのような呼び方へのこだわりも魅力の一つだと思っていた。念の為原作漫画でも呼び方を数えてみた結果、お互い実に90回以上も「君」と呼んでいた。



 かをりは3回だけ公生に直接対面で名前を呼んでおり、そのいずれも意味のある重要なシーンとなっているが、公生にいたっては一度も本人の前で「宮園かをり」という名前を使っていない。それが実写版では、1分30秒に凝縮した予告編ですら1回「宮園」と呼んでおり、約2時間はあると思われる本編で一体何回使うつもりなのか不安を覚える。2人の年齢を中学生から高校生に改変したことは最早どうでも良い。呼び方一つで原作と大いに異なる雰囲気にしてしまっている事実を、実写版の制作スタッフには是非とも自覚していただきたい。



 尚、予告動画を観る限り、呼び方以外に関しては演奏シーンも含め期待をして良いと信じている。原作は累計300万部以上も売れているコンテンツで、キャスティングも旬の広瀬すずに山崎賢人、そしてE-girlsの石井杏奈と安牌。内容自体に大きな改変さえ無ければヒットは約束されたと言えるだろう。

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