78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎自分が本当に心の冷たい人間であることに気付いた話

2013-05-20 10:31:50 | 思ったことそのまま
2つ言いたいことがある。


(1)5月20日、2週間ぶりにカピバラに会い、
何の言葉もかけられなかったことに後悔している。

少なくともエールを送っても良い2つの理由があった。
一つは1週間後にカピバラの8時間にも及ぶ長時間勤務が確定していること(高校生ではまずあり得ない長さ)
もう一つは翌日から1週間高校の試験があること

前者はどんなエールを送ろうか言葉が浮かばなかった(ただ「頑張って下さい」しか言わないのは薄っぺらい感じがして嫌だった)
後者はカピバラが退勤してからやっと気付いた(いくつかの情報を繋ぎ合わせれば事前に把握できるはずだったが当方が馬鹿だった)

1年前の当方なら絶対に何か言葉をかけていた。
そもそも1年前なら「来てくれるだけで感謝」だった(『無断欠勤少女物語』参照)が、今はそんな気持ちさえも薄れている。
カピバラと滅多に会えなくなってから彼女の偉大さに気付いた。
冷静に考えれば学校へ行きながらバイト、しかも土日も働いているだけでもすごい。高校さえも続けられなかった当時の当方にはとても出来ない偉業。
しかもそれだけでなく、高校生とは思えないほど真面目に頑張っている。
仕事をしている彼女しか知らないから、なかなかそういうことを忘れてしまいがちになっている。

そして何よりも、笑顔が可愛い。
1年前は何とも思わなかったのに、今では思う。
人前、特にお客様の前であの自然な笑顔はなかなか出せない。
当方が未だに出来ないから偉そうなことは言えないが、
あらゆるコンビニ、スーパー等で様々な店員の顔を見ていると分かる。彼女の笑顔はレベルが高い。
守りたい、この(ry


それなのに何故……何の言葉もかけてあげられなかったのか。
「頑張って下さい」は、それだけだと薄いかもしれないが、言わないよりは言った方が良かったのではないか。
迷惑をかけたわけではないが、何も言葉をかけないのなら他のスタッフと一緒で「ただの一社員」でしかない。
学校の作品展を観に行けなかったのも酷いが、それ以上に酷いことをしてしまった気がする。
もう次いつ会えるか分からないのに、本当に悔しい。



(2)おっさん社員について

とにかく軽すぎる。
あの人は当方と違い何度もカピバラと一緒にシフトインしている。
それを当たり前だと思わないで欲しい。
昨日はおっさんとカピバラの2人シフトの時間帯に当方が事務作業で居残りしているという感じだった。
まだ入社2ヶ月ちょっとの分際で馴れ馴れしく彼女と雑談をしている。
当方は1年もかけて関係を築き上げてきたのだ。それでも今は雑談を封印しているというのに。
あまり調子に乗るとWの時みたいにロリコン呼ばわりされるんだよ。だから色々注意してるってのに。
あなたはカピバラの何を知っている。なめるな。

当方「ああ何で試験期間ってことに気付かなかったんだろう。やっぱこういうときはエールを送らないと駄目ですよね」
おっさん「イヤ知らないですよそんなこと~(笑)。『明日から試験です』って貼り紙でもしてないと」

こっちはどれだけ悩んでいると思っているのだ。どうしてそんなに軽いのだ。
まだどこかでカピバラと組めることを当たり前だと思っているのだろう。
この辛く厳しい仕事で最後の希望が女子高生であることもまだ分からないのだろう。




ああもう本当に意味がわからない。
ほとんど愚痴ですみません。

◎つぶやきをまとめてみた(『式の前日』編)

2013-05-19 07:43:36 | もはやチラシの裏レベル


このマンガがすごい!2位の『式の前日』が本当にすごい件。オムニバスだが最初の表題作がマジで騙された……こういうどんでん返しの話をガチ小説で書きたくなった。でも今書いているのはそんなのじゃないからなあ。どうしよう……

5/17 2:56


だって絵がついてるのに騙されたんだぜ?絵すらない文字だけの小説ならいくらでも最後のどんでん返し(叙述トリック)が作れそうな気がする。マジで書きたい。何か良い案浮かばないかな……
5/17 2:59



◎Wと再会した話

2013-05-19 07:30:48 | ある少女の物語
「お疲れ様です」
それは不意打ちだった。自店の最寄り駅からバスで20分ほどの店舗でヘルプ出勤をしていた僕が彼女に再び遭遇してしまったことは。
「お疲れ様です。お久しぶりです」
「お久しぶりです」
 21世紀のマリー・アントワネット、女子高生のWである。
自店で3ヶ月ほど勤務、良く頑張っていたのにも関わらず店長から良い評価を貰えず、シフトも削られ土壇場に立たされた矢先の病欠2回と茶髪騒動で辞職に追い込まれる末路。全てはタイミングが悪かった。そして、まだアルバイトの扱いに慣れない頃であったが故に彼女をちゃんと指導をすることが出来なかった僕にも責任はある。この反省を踏まえ、以後下位スタッフにはとにかく「教える」ことだけに徹した。


>同じ女子高生でも、Wに嫌われない事だけを考え何でも僕がやっていたあの頃とは真逆。カピバラに嫌われる覚悟を持ってやらせているが、彼女はとりあえず従順になってくれている。
(『カピバラルート攻略物語』より)


そう、カピバラをあのアラフォー女性店長に気に入られるまでに育てる事が出来たのも、Wの犠牲の上に成り立っているのだ。夏に新たに入った男子高校生スタッフ2名も、3クール以上経過した今でも未だに続けている。“去り行く高校生”を目の当たりにしたのはWが最後だった。彼女にもカピバラと同じように指導していれば辞職は免れたのかもしれない。当時僕は生きる希望を失うレベルにまで堕ちていたが、今でも後悔が絶えずにいる。



 2013年5月11日、23時30分。Wは女友達と上下スウェット姿で店に現れた。高校2年生になり、黒髪に戻してはいたものの、ギャルへの道を着実に歩んでいることが伺える外見だった。
 そして、彼女にはどうしても聞きたいことがあった。
「居酒屋のほうは順調ですか?」


>「でもウチ、居酒屋始めたんですよ」
>「居酒屋?」
>「居酒屋のバイトも始めたんですよ」
(『7月第4週』より)


 辞める一週間前、Wは既に居酒屋のアルバイトを掛け持ちしていることが判明し、その時点で嫌な予感はしていた。実は一度だけ90分もの大遅刻をしており、そのアルバイトの面接をしていたのではないかと勘ぐれるし、最悪のタイミングで茶髪になったのも居酒屋で先輩スタッフか誰かに勧められたからではないかという仮説も決して不自然ではない。

 しかし冷静に考えると、居酒屋のホールなんて忙しさ、厳しさはコンビニの比ではない。少しだけ経験したことのある僕は身をもってそれを理解していた。実は今年4月に派遣会社のスポットバイトとして一日だけ大手居酒屋チェーンの世界に飛び込んだのである。僕はそこでホールスタッフの現実を目の当たりにした。
「た、大変お待たせいたしました、く、串焼きの盛り合わせでございます……」
 緊張のあまり言葉が出ない。今までの接客経験は何だったのか。何人ものお客様に怒られる。そして何よりも体力勝負だった。中国人の女子大生スタッフが息を切らし、額を手で押さえ、サウナから出た直後であるかのような表情をしているのを僕は見てしまった。男の僕でも辛いのだ、女の子にとっては更に過酷な現場であることは彼女を見れば一目瞭然だった。だがお金の為にやらなければならない。特に外国人労働者は時給さえ高ければ仕事内容なんて選んでいられないのだ。

 そしてWは更に若い16歳。いくら時給が高いとはいえ、コンビニさえも続かなかった彼女に居酒屋のホールが勤まるのか、当時から疑問ではあった。ましてやもう10ヶ月も経過している。辞めていてもおかしくはない。

「居酒屋? あ、順調ですよ」

 意外にも彼女の答えはイエスだった。

「あと◎◎(他社コンビニ)も始めたんですよ」
「イヤ、ちょっと本当に無理しないで下さいね」
「ありがとうございます」

 彼女はどこまでタフなのか。お金への執着は相変わらずだった。
 そういえば居酒屋店員には総じてギャルが多い。何故彼女たちは鋼のメンタルを持っているのか疑問でならない。いずれにせよ、最初から今のような感じのWと出会ったのであれば、僕は当時のような助けてやりたい気持ちにはなっていなかっただろう。


>Wの携帯電話の着信音は浜崎あゆみの『SEASONS』だった。発売当時彼女はまだ4歳。このセンスの高さはガチだと感じ、僕は3枚組のベストアルバムをレンタルし全曲をDAPに入れてしまった。少しでもWの事を、現役女子高生のリアルな気持ちを知りたかったから。
(『7月第4週』より)


 黒歴史とは恐ろしいものである。

(Fin.)

◎春の終わり

2013-05-12 08:35:13 | ある少女の物語
 2013年5月4日。薄紅色の花びらたちはとうの昔に散っていた。
 僕にとっての「春の終わり」はその日だと言えよう。
 その日をいつも通りやり過ごすか、何か特別なことをするかで僕は悩んだ。



 コンビニエンスストアの社員になって早13ヶ月。別店舗での研修を経て今の店舗に正式配属してからはちょうど1年となる。
 正式配属とほぼ同時期に入ってきた唯一のスタッフが女子高生のカピバラだった。
 一部の基本的なことを除き、ほとんどの仕事を僕が一から教えてきた。僕は僕で試用期間を満了していない研修社員扱いであった為、共に成長することを勝手にテーマとして位置づけていた。
 2ヶ月にも及ぶTとの戦いは、今思えば僕等に与えられた最初の試練だった。

>僕の作業さえも何度も止まる。人に教えるほど効率の悪い事は無いと思い知らされた。それでもいつかはカピバラが戦力になってくれる事を祈り、カピバラルートの攻略に努めた。
(『カピバラルート攻略物語』より)

 その試練は、無断欠勤少女とWを失った反省も相まって、余計な感情は抱かず淡々と仕事を教えることだけに徹するという一つの答えを導いてくれた。
「こうやってラベラーを打つだけで貼れます」
「おおおお、すごいですね(笑)」
「ちょっと、この程度のことで感動してくれるなんて可愛すぎますよ」
 そして今、カピバラは指示を出さなくても自分から色々とやってくれるまでに成長していた。その過程を一から十まで自分の目で見てきた唯一のスタッフが彼女だった。地道に教えてきた一つ一つの成果が彼女によって初めて具現化されたのだ。どんな些細なことでも、実践で僕が教えたとおりにやってくれる様を見る度に自分を褒めたくなった。



 しかし、時の流れは環境に2つの変化をもたらした。一つはカピバラのシフトインの頻度の減少、もう一つは僕が半分異動状態になったことだ。週の半分以上が他店のヘルプ勤務となってしまい、これまで当たり前のように存在していた「カピバラとシフトインする4時間」が今後訪れることはほぼ皆無となる。
 5月4日は、僕がカピバラとがっつりシフトインする最後の日だと悟ったのだ。
 春が終わり、「共に成長」してきた一つの時代も終焉を迎える。
 この日をどう過ごすかは難題だった。別にカピバラは辞めるわけではないのでその手のメッセージも送ることは出来ない。そもそもカピバラは何とも思っておらず、5月4日はただの通過点に過ぎないだろう。

 5月4日に向けて僕は思考に思考を重ねた。まずは何を話すか。雑談をするかしないか、真面目な話はするのか。一応最後なので何か間接的なメッセージを送るべきか。
 この日が来ることを前々から予感していたのか、冬あたりからカピバラと会話のキャッチボールをすることが思い出作りの一環になっていた。
「カピバラさんの友達で言葉づかい悪い人とかいますか? 何とかじゃねーよ、とか」
「皆、言ってますよ(笑)」
「ニセコイの小野寺さんが神の領域に達していると思うんですけど」
「あんなの居ないですよ(笑)」
 カピバラと会う日に向けて話のネタを必死に探していた時期もあった。

 しかし、そんな努力も一つの失敗によって無に帰した。

>日程勘違いしてカピバラ高校のデザイン科作品展を見に行けなかった罪は大きい。多分他の社員もスタッフも行ってないだろう。何で行かなかったの?俺にしてあげられることなんてそれぐらいしかないだろ?これじゃカピバラがポストカードまで配って告知した意味がないじゃん。
(『アメーバなう』3/30 8:45のつぶやきより)

 カピバラの世界を垣間見るチャンスをあっさり失った。仕事をする彼女しか知らない僕は、彼女が学校でどのようなことをしているのか、とても興味があったにも関わらず、本当に馬鹿なことをした。結局僕は優しさの欠片も無い冷徹人間だったのだ。

 それ以降、カピバラと雑談をすることは無くなった。優しさの無い僕に許される行為ではないような気がしてきたのだ。仕事について質問された時だけ淡々とレスポンスをするだけに徹した。それでも頼られているような気がして少し嬉しかった。



 だが、果たして5月4日もそれで良いのか。その日が終わればカピバラとの4時間は二度と来ないかもしれない。未だ答えを出せないまま5月3日、前日になってしまった。


 その日僕は友人の主催するオフ会に参加することを許されていた。
 15名ほどの参加者の中に女性は6人ほど、全員20をとうに過ぎた社会人だった。
 僕はまた安定の孤立に終わるかと思いきや、左隣にいた20代前半の女性が話しかけてきた。
「どんなアニメを観るんですか?」
 女子高生ともまともに雑談できない僕に大人の女性との2ショットトークが勤まるわけがない。だが逃げちゃ駄目だ。僕は必死に言葉を探した。
「エーット……京都アニメーションの作品はほぼ全部観ています」
「京アニって『ハルヒ』とか『けいおん』ですよね?」
「あと最近では『中二病』とか『たまこまーけっと』とか」
「一番好きなのは何ですか?」
「『CLANNAD』ですね」

 その時だった。『CLANNAD -after story-』の9話、古典の教師・幸村俊夫(こうむらとしお)の台詞が脳内で再生されたのは。


――あの娘の事なら心配いらん。お前たちよりよっぽど強いししっかりしとる――


 主人公・岡崎朋也の卒業式の日。式に出ずに校内をうろつく彼と春原を見つけた幸村は、巣立ち行く仲間たちをよそにたった一人で留年せざるを得なくなったヒロイン・古川渚のことをこの言葉で2人に伝えた。

 僕はその言葉をカピバラとリンクさせた。彼女も何の心配も要らない存在なのだ。もう高校3年生。僕が思っている以上に大人だろう。そして、無断欠勤少女やWなど、過去に関わってきた女子高生たちに比べれば一番真面目な人であることは、彼女を一から見てきた僕が一番知っている。



 もう迷いは無かった。翌5月4日、カピバラに一切の指示を出さずレジ業務を彼女に一任し、僕はレジ以外の仕事をひたすらやり続けた。指示を出さなくても積極的に動いてくれる彼女の良い所を最大限に活かした。一年間の彼女の成長の全てがそこにある。雑談は一切無し。彼女に伝えるべきことは何も無い。最後であるにも関わらず、いつも通りの時が流れた。それで良いのだ。「共に成長」してきた僕等に言葉は要らないし、この厳しい環境を4クールも耐え抜いてきた彼女は、惰性の流れで続けてきただけの僕よりよっぽど強いし、しっかりしている。



 こうして僕の春は終わりを告げた。気が付けばもう27歳。女子高生とシフトインする4時間を唯一の楽しみにする「現実逃避」からいい加減卒業しなければならない。いつか「少女」ではなく「大人の女性」との付き合いが出来るようになる日を夢見て、今日も職場に向かう。

(Fin.)