開業医の妻のたわごと

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老爺と写真立て

2011年01月05日 00時30分07秒 | Weblog

この年末年始の旅は私のお腹との相談で(和食を食いたい!)、

夫はしぶしぶ国内旅行にしてくれた。


うちの旅行は、いつも約1年前に決める。

 

今回はロンドンへ行く予定をしていたが、

飛行機のティケットが私の分(マイレージでビジネスクラスを取る為)しか取れておらず、

昨年の12月に入ってからも約60人待ちという状態だった。

で、夫は仕方なしに12月には京都旅行も計画してくれていた。

 


(最終的に12月20日頃には飛行機のティケットもキャンセルが出て

夫の分も確保されたようだったが今年だけは私の強固な反対に屈したようだ・・・というか思いやり?)

 

宿は

1日目(12月30日)は京都駅にあるグランビアホテル泊。

2日目(12月31日)、3日目(1月1日)は

お気に入りの定宿「ホテルフジタ」に泊まった。

 

久しぶりの日本でのお正月、しかも京都。

何だか、嬉しかった。

荷物もいっぱい持って行かなくても、どこにでもユニクロやコンビニがあり何でも買えるし、

万一、腹痛に悩まされても、何とかなりそうで、安心だった。

 


それから、クリスマスツリーもいいが、門松や和風の生け花に心がとても和んだ。

海外で過ごすお正月、すごく贅沢だとは判っているが、

ギリギリまで仕事をして(主に夫がだけど)とても慌ただしく出かけ、

ヨーロッパまで行こうものなら、

旅の間中、寒さと闘い、帰宅すると山のような洗濯物にいつも悩まされていた。

もちろん、お金の事も気になるし(借金だらけだから)、

体力がいっぱいあれば、きっともっと楽しいのだろうけど。

 


さて、今回の話のメインはここから。

 


ホテルフジタが1月28日に閉じる事は12月初めに予約を入れる段階で知った。

フジタは鴨川が真横にあり、京都の繁華街に近く、ロケイション抜群で、

宿泊代も高くないリーゾナブルなホテルであった。

このホテルの良さを知ったのは数年前。

 


部屋自体は広く無いし、ホテルにあるお食事処は残念ながら、

どこもお口に合わなかったが、川側(反対側は景色が悪い)のホテルに入った途端、

私は窓にはりつき、何時間も飽かずに外の景色を眺めていたものだった。

(今回の写真も7階の部屋から撮ったものです)

 

前にブログに書いたが、

ジョッギングをする人、自転車に乗る人、犬の散歩をさせる人、

仲間同士でお喋りに夢中になりながら歩く人々、子供を肩車しながら歩く外国人。

白鷺の集団。鴨の群れ。


青い空とその下に連なる山々と民家と道と川。

窓は、それらを背景にした動く絵そのものだった。

 


ひとりで見ていても飽きないが、

夫とふたりで「ホラ、あそこの人、暑いのにランニング頑張ってはるわ。」とか

「あの犬、可愛いわ~!」とか話しかけると、夫がウンウンと頷いてくれて、会話が弾むのだ。

 

多くの人に愛されたホテルフジタ、一階のロビーの壁の一部には

「寂しいです。30年前にここで結婚式を挙げました。」

「毎年、春と秋にここへ来るのが楽しみでした。」などの手紙が多く貼られていた。

 


作家:山村美紗女史もホテルフジタが好きで

彼女の作品(スミマセン。彼女の小説はあまり好みではありまへん)には、

ホテルフジタがよく出てくると言う。

 

1月2日、朝、夫と朝食を採る為、地下の和食どころへ行った。


隣の席には80歳ぐらいの老人がひとり居て朝食の写真を撮っていた。

その姿を見て、夫がカメラを忘れた事に気づき、部屋に戻った。

 

夫が席を外していたので、

私は隣のおじいちゃんの後ろ姿をまともに見る事になった。

朝食の写真を撮っているその老人のテーブルの上には

朝食以外に写真立てが置かれていた。

 

老爺はその写真と朝食をいかに綺麗に撮るかで、アングルをあちこち考えている様子だった。

15分程経過しただろうか。

彼はカメラを大事そうにカメラケースに収めカバンに入れ、立てていた写真をねかし、

朝食を摂り始めた。と思ったら、またカメラを取り出し、先程と同じ事を繰り返していた。

 

写真はどうやら、彼の妻らしかった。

彼は妻と旅をたくさんしてきたのだろう。

そして、今回の旅も妻を連れてきたかったのだろう。

 

彼の人生の歴史は知らない。

が、少し腰の曲がった老爺の一連の仕草を見てると、何だか涙がこぼれた。

 


私がもし先に亡くなったら、夫は同じ事をするのだろうか。

イヤイヤ、そんな事、少しでも考えること自体、夫に申し訳ない。

夫はすごく寂しがり屋だから、私は彼を残して先には絶対逝けない。

 

カメラを手にして元気よく戻ってきた夫に隣の老人の話を少ししながら、

私は一生懸命生きる為に、頑張って朝食をいっぱい、いっぱい食べた。

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
生きること (kyonhime)
2011-01-05 09:35:13
そうだよ!エリリン!一生懸命生きるんだよ!
あなたの命は、あなただけのものじゃないんだよ。
もう少し体力がついてきたら、思いっきり馬鹿話して笑おうぜっ!
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Unknown (まなりん)
2011-01-05 10:59:36
今は冬だけど必ず春がやってきますよ!
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きょんちゃんへ (えりりん)
2011-01-05 11:02:58
ワ~イ、強い励ましありがと!
嬉しくて泣けてきたよ・・・。

去年は毎日がしんどくて、友達、誰にも会えなかった・・・トホホ。

今年の春には義母が義兄の家族を連れてうちへ泊まりに来ると昨夜言っていた。義母だけならどうにか接待できるけど、布団も無いし、体力無いし、10kgも痩せてしまった現状を身内の人は、なかなか理解してくれなくて・・・。

実母でさえ、「どこそこへ一緒に食べに行こう」っていつも誘ってくるんです。
何だか超つらいよ~!!!(老母に向かって怒っている私自身にもまた怒りが出て、反省し、そしてへこむんです)

って、へへ、根は明るいんだけどね、つい、心許せる友には愚痴ってしまいたくなります。新年早々ごめんね。m(__)m
色々とつらいのは私だけじゃないのは判ってますです。(=^0^=)
是非、また遊んでd(^-^)ネ!
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まなりんさんへ (えりりん)
2011-01-05 11:09:59
暖かいコメント有り難うございます。

桑田佳祐氏も復活したし、御高齢の小澤征爾氏も復活されたし(今度は腰痛でお休みのようですが)私もがんばりまっす。(=^0^=)
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感動 (モモ)
2011-01-05 11:34:59
なんだか下手な小説よりも感動する話ね 10キロも痩せると体力がきついよね。でもえりりんちゃん少しずつもとに戻れればいいよ。むりなくがんばろ 私はしばらくお手伝いさんに来てもらうことになりました。昨日から午前だけ来てもらい、掃除と洗濯助かります。えりりんちゃんも大変なときは人に頼みましょう
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ももちゃんへ (えりりん)
2011-01-05 15:38:56
ももちゃんの優しさにいつも支えられています、私。
あなたのように苦労してないのに、わがままな私。
今は優しい義母にも何にも優しくしてあげられなくて(電話ぐらいしか)なさけない思いをしてます。

ハハ、新年早々、愚痴言ったり泣いたりしてちゃイカン。喝!(自分にだよ~ん)

う~ん、お手伝いさんかあ・・・。
私、すごく貧乏性で(生まれも育ちも普通の家だったせいか)、お手伝いさんに来てもらうのは抵抗があるのよねぇ。その前にお掃除しときゃなきゃ・・・みたいな、変に神経質なとこもあるし。
ももちゃんは足の怪我だから、動けなくて当然。家族もワンパクざかりのご子息ふたり居るし。
そうだ、うちは夫が「お手伝いさん」の役目もしてくれてるから要らないのだった。笑
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心優しい (tone)
2011-01-05 23:05:49
心優しいえりりんさんだからこそ、出会った光景なのでは?
なんかねー、世の中には偶然ってないって思うんですよね。全てが仏様(神様)の計画というか。そのおじいさんを見かけられたのも「えりりん、この光景を見るんだよ。しっかり生きるんだよ」って、仏様が見せてくださったのではないかな?と思いました。
ほんとーに色々ありますよねぇ。一難去ってまた一難。でも一個一個、労わりあって乗り越えていけたらなーって思います。
ちなみに、私、えりりんさんのホテルねた、むっちゃすきです。
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toneちゃんへ (えりりん)
2011-01-06 00:08:29
そうかあ。なるほど。そう解釈するか・・・。
う~ん。妹に負けた・・・って、将棋の話でもあるまいに・・・。

>「私だから出会えた光景」・・・
何て素敵な角度から、というか、立場からの見方・・・とても考えさせられました。

ブログを書いていてヨカッタな、って色んな人に慰められたり励まされたりした時に思うけど、違う考え方を教示された時には本当にハッとします。

違う見方のできる友に出会えた事を今、私は神様に感謝しています。
ありがとう、toneちゃん。

ホテルネタ、また書くd(^-^)ネ!
(けど、過去に何を書いたか忘れてしまったまだらボケの私どす・・・(。_・))
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