=118 ~木の因数分解~(家具工房つなぎブログ)

南房総でサクラの家具を作っています。ショールーム&カフェに遊びにおいでください。

ジョージナカシマ記念館

2009年03月12日 | 【出張】木を感じる旅~西日本編~
1.木から始めること
2.木を知ること
3.木のこころを読むこと
4.木と対話すること

ジョージナカシマさんが大事にしていたことです。

ジョージナカシマさんは有名な日系アメリカ人の木工家で、そのコノイドチェアは家具好きな方なら見かけたことはあるでしょう。私にとってはアンバランスなくらいの大きさの肘掛板や、少々長めの天板を持ったサイドボードなどのデザインが印象的で、実はそれらがアンバランスのようで調和しているというところが好きです。

そのジョージナカシマさんの世界で唯一の記念館があります。

広いスペースに作品というべきか商品というべきか、たくさんの椅子やテーブル、棚が置かれています。同じタイプの椅子でも昔に作られたものと現在に作られたもの、アメリカで作られたものと日本で作られたものなどが存在し、ジョージナカシマ好きには見るところ満載です。

スタッフの説明を聞きながら、

・たしかにサンダー仕上げの米製と鉋仕上げの日製での違う雰囲気
・2本、3本、4本の脚を持つ椅子のバリエーション
・中でも2本脚で有名なコノイド(疑円錐型)チェアの2本脚は動かしやすく、日本の畳用であったこと
・またコノイドチェアは「ドウツキ」が2箇所で製作をスムーズに行うことができ、製作者のことが考えられていること
・同じく有名な3本脚のミラチェアのミラとは娘さんの名前であり、彼女の成長に従って椅子の脚が短くなっていく椅子が何点もあり、ジョージナカシマさんが大事にしていた「家族」を感じられること
・テーブルの脚にこだわり、特にテーブルの定員を超えてもみんなが座り団欒しやすいデザインになっていること

といったポイントを学ぶことができました。


さて、このジョージナカシマ記念館その所在ですが、高松の桜製作所にあります。
創業60年を誇り職人さんの手仕事を大事にしてきた家具工房です。

今日はこの桜製作所の企画室長の河崎さんにお話を聞くことができました。

とにかく「作る」ことに徹している桜製作所の職人さんは、直接ジョージナカシマさんとお仕事をした世代と、これからの桜製作所を担っていく若手で構成されており、分業を主体に職人の技が磨かれていきます。

非常に面白かったのは、「残業なし」の社風。
社員である職人にとっても会社にとっても有益ではない残業は原則なしという社風で、夕方17時には工房が閉められています。

その一日の業を終え静まった工房を覗かせて頂くと、やっぱり全員が帰られたわけではなく一人の若者が作業をしていました。なんでも自分用の道具箱を作成しているとのこと。割といい木目の材を利用しているということで「そうなんですよ、先輩からいじめらるんですよ」と冗談を言い笑いながら話している。すると、そんな先輩の一人でしょうか、また一人の職人さんが現れ、「しゃーないな、手伝ってやるよ」と言っています。
とても楽しそうな仕事の後の工房でのやりとりです。

また工房での職人さんの棚を拝見させていただくと、

「おー、なんだこの鑿は!」

砥ぎに砥がれて、その刃はピカピカに光っていますが重みのある色で、その形状も磨り減り細っているというよりは絞り落とされた凹凸のあるアスリートの肉体のような造形です。
また鑿も鉋も整理整頓され、職人はそれぞれ自分で自分の道具を作ったり、道具を収納するものを作られていました。
前職ですがご自身職人の経験のある河崎さんも、いい仕事をする職人は、道具を大切にし、道具を自分で作り、そして現場がきれいと言っています。

企画室長という肩書きでありながら自らを「何でも屋」と称する河崎さんは、企画から営業、特別なお客様の送迎までオールラウンドに活躍されており、中でもすごいところが会長が最終判断をされる木取りの候補を選び出すことをされていることです。何人もの木工家のお話をお聞きしても最も難しい部分が木取りであると私も何回も聞いてきました。それをわずかな時間の中で学びつつあるところが素晴らしいです。80歳になられるという会長様のお眼鏡に適う木取りとは?図々しくそのポイントをお聞きしようとした私ですが、なかなか言葉では言い表せないそうです。ある意味感覚のところがあるのでしょう。

なんといっても桜製作所の木材のストックはすごいですから、その何千枚?何万枚?もあるかという板を毎日毎日、思考を交えて見つめていると、やがて「量は質に転化する」のでしょう。そうした優良で豊富な材に囲まれれる環境にある河崎さんをうらやましくもありましたが、実際の仕事はそう甘くはありません。イメージした家具にマッチする板を引っ張り出してはサイズを見たり木目を見たり、これでもないあれでもないと来る日も来る日も倉庫での格闘が続くこともあるそうです。3日間血眼になって探し続けて4日目にひょっと見つかることもある。そんな仕事でもあるそうです。

この材置き場は確かに工房の裏の倉庫ではありますが、ご自身の目で直接材を選びに来られるお客様が足を運ばれる場所でもあります。そして実はそのときが、お客様が家具を購入するプロセスの中で最も興奮されるところでもあるのです。自分でたくさんの木の中から好きな木目、ときにはクセのある穴あきの材など、個性のある木と出会える場所、それがこの材置場。だからその場をどうやってお客様にとって最高の場所にしつらえるか、どうやってお客様に喜んでもらえるように対応するか、これに河崎さんは強い使命を持って取り組んでいます。同時に多くの時間を費やして材を選び木取りをした板を披露させていただける河崎さんにとっての華やかな舞台でもあるそうです。

新分野の製品企画にも余念のない河崎さんを筆頭に、今後の桜製作所の新たな成長が楽しみです。

これから夜の部が始まりますが、まずは昼の部について、河崎さん本当にご対応ありがとうございました。

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