寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第110回例会

2013年03月04日 | 例会履歴

2013.03.04 近畿大学東京事務所

【研究発表1】南都諸寺僧形像考―鑑真像と行信像の造立をめぐって―  小野佳代
【要旨】奈良時代の南都諸寺には数多くの僧形像が安置されていた。しかし僧形像の多くは本尊の周辺に安置され、主役として造立されることが少なかったことから、奈良時代の僧形像の造立状況については思いのほか意識されてこなかったのではなかろうか。そこで本発表では、まず奈良時代の南都諸寺の僧形像の安置状況を史料によって確認したうえで、天平宝字七年(763)に造立された唐招提寺・鑑真和上坐像の意義を改めて問い直し、鑑真像がわが国の僧形像史に与えた影響力の大きさについて考えてみたい。さらに、鑑真像につづく法隆寺夢殿の行信僧都坐像については、その人物像に不審な点が多く、造立事情についても再考の余地を残しているように思われる。行信像の造立事情や意義についても併せて考察を加えてみたい。

【研究発表2】インドにおける大乗仏教の展開と密教の黎明―『蘇婆呼童子請問経』をどのように解釈すべきか―  杉木恒彦
【要旨】およそ6世紀頃のインドの大乗仏教にて編纂された『蘇婆呼童子請問経』は、薬叉たちの王である持金剛に対し、「真言をとなえる等の儀礼実践を行っても結果が生じないのはどうしてですか」というスバーフ(蘇婆呼)の質問から始まる。それに対し、持金剛は「発菩提心や十善戒等の大乗仏教の基本的な戒が全ての根本であるからそれを守らねば真言を唱えても意味がない」と答える。そして、憑依魔や男女の薬叉など様々な霊的存在から自らを守る(あるいはそれらを飼い馴らす)技術や、各種な優れた能力を得る方法など、様々な修行方法・日常の行のあり方を説く。比較的近年の研究では、伝統的な僧院の外で活動を繰り広げる出家の仏教修行者たちの教団の存在を仮定し、本経典はその教団における行を説いたものであるとする解釈がある。だが本発表では、このような解釈に対し異議を唱え、当時の経典編纂史的コンテクストも踏まえながら、新たな解釈を試みたい。