寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第116回例会

2015年11月14日 | 例会履歴
2015.11.14 近畿大学東京センター
 
【研究発表1】『発心集』後人裏書攙入説  森新之介
【要旨】『発心集』は、蓮胤鴨長明(久寿二年[1155]か~建保四年[1216])が晩年に編纂した仏教説話集である。伝本には版本八巻と写本五巻があり、八巻本の慶安四年版は、今日伝存の諸本で最も原形に近いと見てよい。しかし、複数箇所は後人の増補でないかと、夙に野村八良や永積安明、橘純孝によって考証されてきた。これらを整理して簗瀬一雄は、前六巻の偶数巻末と後二巻の全体は後人の増補だとする説を唱えた。本発表では、通説で蓮胤の作だとされている複数箇所が、本来後人の裏書であったことを明らかにしたい。
 
【研究発表2】『江島縁起』の系統比較とその成立背景の検討  鳥谷武史 
【要旨】本発表で対象とする『江島縁起』は、江島を舞台とした江島神社の創始譚として、同社関係の研究に資するところが大きい。しかし、同所に関わる宗教者の存在を考えるとき、伊豆・箱根・鎌倉にまたがる信仰圏を考慮して読み解く必要がある。同縁起の系統は、真名本および仮名本の二系統に分類されるが、両者の間には、文体の差にとどまらず、増補・改編の過程で、大きな違いが生じている。本発表では、両系統の内容比較を中心としつつ、奥書の記述をもとに、成立年代・制作背景の検討をおこなう。また、文中に言及される弁才天の信仰にも着目し、中世に著述された弁才天偽経との関連について言及したい。