寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第93回例会

2009年08月25日 | 例会履歴

2009.08.25 早稲田大学早稲田キャンパス

【研究発表1】辰狐と文殊―『神道集』における―  有賀夏紀
【要旨】『神道集』巻三「稲荷大明神事」は、ダキニ天(辰狐)とその眷属について細かに記載されていることから、中世の稲荷信仰を考察する際にしばしば言及されてきた。だが、本章段それ自体については、いまだ詳細な検討がなされていない。そこで本発表では、まず「稲荷大明神事」に反映されている当時のダキニ天信仰の様相を明らかにした上で、その本地説の特徴と叙述形式について言及する。そして、本章段を含めたいわゆる「公式的縁起」(儀軌的な記述が連なる章段)の位置づけを唱導という観点から再考することで、『神道集』を総体的に把握するための一視点を提示したい。

【研究発表2】『洛山寺海水観音空中舎利碑銘』から見た韓国仏教の海洋信仰  松本真輔
【要旨】韓国東海岸にある名刹洛山寺は、『華厳経』に依拠した観音信仰の拠点としてよく知られている。同寺には、1619年に再建された観音殿に関する『洛山寺海水観音空中舎利碑銘』と呼ばれる碑文と舎利塔が現存し、近年には「海水観音」と呼ばれる巨大な観音石像が建立されている。海水観音は、南海菩提庵、江華普門寺が韓国三大観音と言われ、これ以外にも、江華積石寺、南海竜宮寺等に存在している。その「起源」に関しては不明な部分も多いが、 おそらく水月観音から派生したものであろう(唐呉道子作と言われる図像も残されている)。本発表では、この洛山寺の観音信仰を中心に、韓国仏教の海洋信仰(当然補陀洛が関わる)について考えてみたい。 一般に韓国の仏教信仰は山岳の問題がよく言われるが、海との関わりを見ていく必要もあるだろう。