寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第107回例会

2012年05月12日 | 例会履歴

2012.05.12 近畿大学東京事務所

【研究発表1】「二尊院縁起絵巻」について―作品紹介とその特質―  土谷真紀
【要旨】京都府・二尊院に所蔵される「二尊院縁起絵巻」(全二巻)は、16世紀半ばころ狩野派によって制作された絵巻である。美術史の領域において、本絵巻に関する専論はなく、狩野元信研究や室町絵巻研究のなかで触れられるに過ぎなかった。発表では、まず本絵巻の紹介をおこない、画面と内容構成について考察する。本絵巻の内容は、二尊院の草創から絵巻制作時(室町時代半ば)に至るまでの寺史が軸となっているが、詞書には記されないにもかかわらず、詳細に描き込まれる段がある。今回は、下巻第五段に描かれる武家行列と下巻第八段の巻末に配される「米俵を運ぶ人馬」の描写について分析を試み、本絵巻が、初期狩野派の絵巻であると同時に、応仁の乱以降、盛行をみた室町期の寺社縁起絵巻の一翼を担う貴重な一例であることを提示したい。

【研究発表2】中世大和長谷寺の造営と律家  大塚紀弘
【要旨】長谷寺は創建以来、9回ほど大火を経験しており、本尊十一面観音立像および観音堂の焼亡も7度に及ぶ。その際の再興事業については、関係史料の豊富な室町後期を中心に、先行研究で追究されており、寺内の安養院や往生院、さらに本願院が、勧進聖の拠点となったことが指摘されている。ただ、勧進聖や彼らの集住した院家の性格については、未だ検討の余地が残されているように思われる。そこで本報告では、平安後期から鎌倉中期にかけての3度の再興事業に注目し、その経過を跡づけるとともに、勧進聖の集団が中世の長谷寺で果たした役割について考察したい。