寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第108回例会

2012年08月07日 | 例会履歴

2012.08.07 近畿大学東京事務所

【研究発表1】建永二年における専修念仏者の斬首配流事件  森新之介
【要旨】建永2年(1207)2月、専修念仏者の安楽房遵西と住蓮は斬首となり、その師たる法然房源空は配流となった。この事件については旧くか ら、源空の専修念仏宗の盛行を妬んだ南都北嶺が讒訴したことによるものだ、と理解されてきた。近年、上横手雅敬や平雅行によって研究が進められているが、今なお数多くの不審が存する。そもそも、従来「建永の法難」と通称されてきたこの事件が、当時後鳥羽院による不当な弾圧と目された形跡は殆んどない。「法難」という通念すらも懐疑し、事件を根本から検証する必要があると考えられる。そこで本発表では、これまで十分には検討されてこなかった遵西住蓮の斬首時期に着目し、源空配流の意義や後鳥羽院の宗教政策について一つの仮説を提示したい。

【研究発表2】散佚『武州太田荘惣社鷲明神十巻縁起』考―鷲宮神社(埼玉県北葛飾郡鷲宮町)の古縁起とお伽草子「源蔵人物語」―  佐々木雷太
【要旨】埼玉県北葛飾郡鷲宮町に鎮座する鷲宮神社は、鎌倉幕府からの尊崇を受けた、関東屈指の古社として著名である。しかし、現在の鷲宮神社では、中世以前に遡る古縁起の存在は確認されず、その片鱗が『林羅山詩集』所載「癸巳日光紀行〈八十七首〉」に窺われるのみである。既に平瀬修三氏は、この「癸巳日光紀行〈八十七首〉」に抄録された鷲宮神社古縁起が、お伽草子「源蔵人物語(浅間御本地)」との関連を想定させる内容であることを指摘された[同氏「『神道集』巻第六「三嶋明神事」考」『伝承文学研究』6(昭和39年)]。しかし、この平瀬氏のご指摘は、お伽草子「源蔵人物語(浅間御本地)」の作品研究において充分に検討され活用される機会が少なかったものと想定される。本発表では、「癸巳日光紀行〈八十七首〉」 のみならず、従来注目されなかった資料をも参照し、鷲宮神社古縁起と、お伽草子「源蔵人物語(浅間御本地)」との関連についての考察を試みる。