寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第90回例会

2009年06月05日 | 例会履歴

2009.06.05 早稲田大学早稲田キャンパス

【研究発表】聖徳太子信仰における転生する太子のイメージと匂い  吉村晶子
【要旨】古代から中世の日本において、さまざまな広がりをみせた仏教的世界観のなかで、「聖なるもの」とかかわる「香」や「匂い」は、しばしば重要な役割を担っていた。太子信仰の画期をつくった『聖徳太子伝暦』以後、太子は、「香」や「匂い」と強烈に結びついて語られるようになる。聖徳太子と匂いとの深い関連づけは、もちろん、香が仏教とともに日本へ伝来したものであることともかかわるであろう。しかし、より深い考察を試みたなら、しばしば異常なほど長く残存し、移され、運ばれるものとされる仏教文学における匂いの特性と、転生によって絶えず太子という過去の存在を現在化する太子信仰のあり方とが重なり合ったところにこそ、太子信仰における「匂い」の突出した意味を見出すことができるのではないだろうか。本発表では、太子という信仰対象のイメージと、仏教的世界観における匂いのありようとの親和性を検討し、日本の古代・中世における匂いとは何か、という問題のその一面を明らかにしたい。