寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第97回例会

2010年02月04日 | 例会履歴

2010.02.04 早稲田大学早稲田キャンパス

【資料紹介】陽明文庫第30函「寺社関係資料」の紹介と検討  橋本正俊
【要旨】陽明文庫には、寺社縁起類を納める箱が蔵されていることが、これまで幾度か指摘されることがあった。発表者は一昨年、その箱にあたる第30函を調査する機会を得たので、その報告を行う。結論から言えば、この箱に納められる資料のうち縁起関係の資料は数点ではあるが、多くが寺社関係の記録類である。また、それらの資料のほとんどに、近衛家など江戸時代前期の近衛家当主が関わっており、第30函は「江戸時代前期の近衛家歴代が監督書写した寺社関係資料を納めた箱」と言える。これらの資料を概観し、その特徴について報告したい。

【研究発表】中世浄土宗の法談に関わる一資料(承空本私家集紙背文書より)  橋本正俊
【要旨】中世には、聖徳太子信仰と併せて善光寺信仰も高まる中で、聖徳太子と善光寺如来が往復書簡を交わしたという伝承が生まれ、広まっていった。この伝承について、発表者は何ら新しい見解を持たないが、近年紹介された冷泉家時雨亭文庫蔵「承空本私家集」の紙背文書に、この伝承を略述したものが確認される。この一群の私家集の書写に関与した承空は、鎌倉時代の浄土宗西山派の僧侶であり、同紙背には、他に「一言芳談」と共通する説話も記されていて、浄土宗の法談・唱導に関わるものかと思われる。本資料は最近影印刊行されたけれども、説話・仏教研究の方面ではあまり顧みられていないようであるので、紹介した上で若干の検討を加えたい。