2004.05.27 早稲田大学戸山キャンパス
【研究発表】中世南都縁起説の諸問題―『建久御巡礼記』をめぐって― 大橋直義
【要旨】治承四年の焼亡以後、復興の最中にあった興福寺諸堂宇とともに、その縁起説はおおきな変貌をとげる。近本謙介氏が、その変貌の端緒を「物語」的再構築をうけた『建久御巡礼記』に求めているように、平安期以前の縁起説には見られない様相がその表現様式にいたるまであらわれはじめるのである。このような理解に基づきつつ、縁起説の増幅の様相について検討を行い、『建久御巡礼記』ならびに『興福寺流記』の位置づけを試みてみたい。