寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

九相図絵解きと修復過程・一般公開

2014年02月19日 | お知らせ

甲南大学の田中貴子さんから、九相図絵解きと修復過程・一般公開のご案内をいただきました。

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このたび、京都伏見にある西岸寺(浄土真宗本願寺派。法性寺小御堂)所蔵の珍しい九相図(五幅)が、老舗の宇佐美松鶴堂さんによって修復されました。
つきましては、そのお披露目を兼ねて、「現代人のための九相図絵解き」と修復過程の解説、ならびに公開鼎談の会を催すこととなりました。

本九相図は、一昨年の夏に調査をさせて頂いたもので、江戸後期ころの新しいものではありますが、『般若九想図賛』と酷似した図様であること、男女二体の死体が描かれることなど、今まで報告例のないものです。(画中に詞はありません)。
禅の不浄観修行の心得を説く『般若九想図賛』との先後関係は不明ですが、これが浄土真宗寺院に伝来し、絵解きされていたらしいことは興味深いものがあります。
西岸寺は、親鸞の「妻」とされる「玉日姫」の廟が現存し、近年発掘調査が行われたものの、「遺骨」なるものの鑑定は出来ませんでした。
しかし、「玉日姫」という親鸞伝説上重要な人物ゆかりの寺として、近世には略縁起の版行も行われていることから考えると、この九相図もまた、近世の民衆に対する教線拡張のため何らかの役割を果たしたと推測されます。

この2月22日には、修復にお力添えを頂いた檀家さまのみにまず絵解きと修復過程の解説を行いますが、メディアや研究者の方々には3月15日に鼎談を加えた内容で公開いたします。
ご存じのように、九相図の絵解きは現在わずかな寺院で行われていますが、台本 は現存ぜず、『往生要集』を元にした「六道絵」の「人道不浄相図」の絵解きをいわば「借用」した内容になっています。
今回は、「本来の九相図絵解き」を復元するのではなく、この現代という濁世に生きる人々のための新たな絵解きを作成いたしました。絵解きの性格を考慮すれば、そうならざるをえないと考えた末のことです。
従って 、研究者の方々にとってはいささか歯がゆいところがあると思いますので、第三部として、中世史、美術史の専門家とともに絵解きと九相図について語る機会を設けました。
いずれも短い時間で意を尽くせないものとなりましょうが、もしご関心がありましたらお運びくださいませ。

なお、西岸寺本堂は座布団使用でも40人程度しか入れません。
この点をお詫び申し上げます。