寺社縁起研究会・関東支部

@近畿大学東京センター

第98回例会

2010年03月26日 | 例会履歴

2010.03.26 早稲田大学早稲田キャンパス

【研究発表1】『神道集』巻一「宇佐八幡事」をめぐって  有賀夏紀
【要旨】南北朝期ごろの成立とされる『神道集』は、中世における神仏習合思想の展開と受容をかんがえるうえで、重要な書のひとつである。従来の『神道集』研究では、いわゆる「物語的縁起」が中心的な課題であったが、『神道集』の約半数をしめる神道論や、神々の本地説を中核にすえた「公式的縁起」と称される章段は、いまだ十分な検討がなされていない。よって本発表では、「公式的縁起」のひとつである巻一「宇佐八幡事」にかんして、その信仰の様相をあきらかにするつもりである。

【研究発表2】日本平安期および中国往生伝における「匂い」  吉村晶子
【要旨】日本の平安期往生伝と、その頃までに成立していた5つの中国往生伝を取り上げ、そこにえがかれた「匂い」についての考察をおこなう。日本の往生伝の嚆矢『日本往生極楽記』は序文において、先行する中国往生伝『浄土論』『瑞応伝』の名をあげ、それらと同じ志のもとに撰述したものであることを述べている。このように日本の往生伝は中国往生伝の影響のもとに生まれたのであり、往生人の往生を確かならしめる奇瑞の数々も総じて類型的で共通することがらも多い。しかし、こと「匂い」についてみていくと、『浄土論』や『瑞応伝(往生西方浄土瑞応刪伝)』にはなく、『極楽記』以降の平安期往生伝にしばしばみられる「移り香」というモチーフの存在が注目される。発表者はこの「移り香」について、これまで日本の往生伝や高僧伝、太子伝などを中心に、聖性と匂いとの関わりについて考察してきたが、本発表では、『極楽記』序文のあげていないそのほかの中国往生伝や高僧伝などの匂いの描写も視野に入れた考察を行う。そもそも往生の匂いというイメージは、どのような背景のもとで成立し、広がり、日本へと渡ってきたのか。中国往生伝類における「匂い」のイメージと日本の平安期のそれとを比較検証するなかで明らかにしたい。