2010.07.31 早稲田大学早稲田キャンパス
【研究展望】寺社縁起研究の回顧と展望 藤巻和宏
【要旨】寺社縁起研究会・関東支部の前身である旧・寺社縁起研究会を藤巻が立ち上げたのが1998年4月。この12年間の歩みを、本研究会のみならず、国内外の寺社縁起研究の動向とともに振り返りつつ、これからの寺社縁起研究の展望についても、若干の私見を述べたい。縁起研究を、単に「寺社縁起」に分類される限定的な資料だけを対象とするものではなく、事物の起源をめぐる言説研究と捉え直し、その射程と可能性について考えてみたい。
【研究発表】笠寺観音縁起の展開 序説 徳田和夫
【要旨】寺社縁起のなかには、寺院の創建と本尊の霊験説話を、長大な物語草子のごとくに編み直したものがある。笠寺観音(天林山笠覆寺。真言宗。名古屋市)の縁起もその道程をたどっている。室町・桃山期のそれは、優に女性の栄達物語に成りおおせている。その事由は如何に。人物を特化して物語のヒロインとし、それを通じて結縁を勧めるとの構成は、時代の文芸動向を照らし合わせて考えてしかるべきである。また、それは信仰空間のオープン化(=参詣の大衆化)と連動したことでもあるだろう。