ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

人格?

2006-03-31 | どうでもいい話
“医者ズバッ”で医師と教師には人格のテストがないという場面があった。
出演の芸能人たちがそれに反応して、ああでもない、こうでもないと・・・
それを見ていると、ある友人(開業医)と飲んでいたときのことを思い出した。

それは、「白い巨塔」が放映されていたころだった。

「一般人から見ると財前先生は悪者で、里見先生がいい先生なんだろう?
何言ってんのかと思うよねぇ~。
だってさぁ、財前先生は患者を治すんだよ。すごいじゃない。
まぁ、たいていの教授は患者治せないからねぇ。(爆)」

これは私が言ったことではなく、友人が言ったことなので、お間違いなく。

彼ならこう言っただろう。
「人格磨く暇があったら技術を磨けよ~!」
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直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その7

2006-03-30 | 子宮内膜症
骨盤痛、狭窄、悪性化などの問題について考えたが、今回は妊孕性の点から考えてみる。

腹膜病変については、切除、焼灼し、腹腔内を十分洗浄することで、術後に妊娠しやすくなることが明らかになっている。腹腔鏡下手術の術後1年くらいは(妊娠のための)ゴールデンタイムである。

深部病変の切除が妊孕性の向上にどのように寄与するのか、あまりわかっていない。ところが最近、それに関する報告*がでてきた。(*Fertility after laparoscopic colorectal resection for endometriosis: preliminary results. Fertil Steril. 2005 Oct;84(4):945-50.)

これによると、腸管切除(区域切除)した22例の挙児希望例のうち10例が術後に妊娠していたとのことだ。(平均観察期間24ヶ月)また、妊娠しなかった12例では子宮腺筋症が有意にみとめられた。RCT(randomized controlled trial)でないので何ともいいがたいが、重症子宮内膜症でもこれだけ妊娠するというのはかなりの好成績に思える。つまり、深部病変を切除することにより妊孕性は上がるということだろう。

C.H.Kohも講演で3回体外受精が上手く行かなかった重症子宮内膜症症例で腸管切除した後、体外受精に成功した例を紹介している。

しかし、この報告*の著者の別の論文をみてみると区域切除を40例施行し、開腹移行例が4例、他に合併症では直腸腟瘻が3例、骨盤内膿瘍が1例、一過性排尿障害が7例となっている。

手術により骨盤痛、狭窄だけでなく妊孕性まで改善しているようなので手術をする価値は十分あると思うが、合併症については十分考慮しておかなければならない。

今回の結論は(あくまで予想であるが)
・深部子宮内膜症病変を切除することで妊孕性は向上する。
・子宮腺筋症が残っていると妊孕性は向上しない。
・子宮腺筋症の切除は妊孕性の向上にどのように関係するかわかっていない。
(私は腺筋症切除で妊娠しやすくなるという印象を持っている。)
ということでいいと思う。
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医者ズバッを見た

2006-03-30 | どうでもいい話
3/24に医者ズバッという番組が放映された。みのもんたと芸能人、名医20人が医療に関するテーマで激論を繰り広げるというものだった。腹腔鏡下手術のエキスパートとして金平永二先生が出演するということで録画しておいたのだが・・・・あまりの内容のひどさに参った。出演したことを後悔していた先生方も多かったのではないだろうか?それともいい宣伝になったということかな?

途中で鏡視下で結紮縫合をするという場面があったが、一般向けなのであの程度の内容になるのも仕方がない。また、金平先生が3日で1-2時間しか眠らずに働いたことがあるというコメントをされていた。私も30時間くらいなら、ぶっ続けで働くことはしょっちゅうだった。

たとえば、火曜日の午前、腹腔鏡下手術、午後、外来、そのまま当直入りして水曜日に外来。夜は2時間程度しか眠れないことは珍しくないので水曜日の外来では頭がボーッとしてきて、患者さんに説明している途中で何を喋っていたのかわからなくなるうこともしばしば・・・

金曜日の朝、術後の患者を回診し退院指導、そのまま宝塚に飛び、腹腔鏡下手術を2件、終了後、松山へ戻り、午後8時半ごろからそのまま当直入り、帝王切開、分娩などで朝まで一睡もせず働くなんてこともあった。

まるでニューヨークから成田までフライトしたパイロットが、休憩もなしにそのままシンガポールまで行ってしまうようなものだ。事故を起こしてくれといわんばかりではないか?(もう二度とあんな生活はしたくない)

番組の話にもどるが、金平先生の話で、「え~?医者って余ってんじゃないの~?!」の芸能人の声。しかも、気がついたら次の話題へ・・・今年一番むかついた瞬間だった。台本どおりやっているのだろうが、理解に苦しむ。
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海外からのお客様

2006-03-28 | 腹腔鏡
昨年末、海外在住の方(日本人で子宮内膜症患者)が来られた。過去に子宮内膜症の治療歴があるためにその国では健康保険が効かず、手術を受けるのに何と約200万円かかってしまうそうだ!日本なら自費で手術したとしても請求額はせいぜい60-70万円である。しかも日本の健康保険は過去の治療歴云々などを問うことは決してないので健康保険は適用され自己負担額は20-25万円くらいになっただろうと思う。

ということで帰国され、当院に来られた。腹腔鏡下手術で骨盤内の子宮内膜症病巣切除、子宮腺筋症核出、直腸半層切除などを行った。子宮内膜症保存手術のフルコースともいえる手術であった。

術後、患者さんから聞いたのだが、その国では医師が足りないのか国公立病院、とくに救急の部門では待ち時間が非常に長いそうだ。その方も急性腹症(チョコの破裂?)で救急を受診したそうだが4時間待たされたそうだ。そのくらいならまだいいほうで、待っている間に亡くなってしまう方もいたそうだ・・・

公立病院では医療費は安いらしいが、医師の質には疑問があるようで、しかも腹腔鏡や子宮内膜症の専門医はいない。プライベート(開業医)にかかればいいのだが、医療費は非常に高くなる。

日本の患者は幸せだと思う。しかも誰も非常に安い料金で良質の医療を受けていることを知らない。残念ながら、近いうちにそのような医療体制は崩れていくかもしれない。国が医療費を抑制していく方向で政策をすすめているのだから仕方がないと思う。

私の手術が60-70万で、海外の医師の手術が200万円、手術料自体はもっと差があるのかもしれない。手術料が高くても勤務医の給料が増えるわけではないが、こういう話を聞くと術者としてのプライドはぼろぼろなのである。

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12年間お世話になりました。

2006-03-26 | ご挨拶
先週木曜日に県立中央病院、金曜日に県立今治病院での手術を終わり、愛媛県立病院での診療を終了いたしました。平成6年4月に愛媛県立中央病院に赴任し12年間にわたり診療をさせていただきました。愛媛県立病院で同僚として一緒に働いていただいた皆様、受診していただいた患者の皆様にお礼申し上げます。この12年のあいだ、大変貴重な経験をさせていただいたことを感謝いたします。

私が担当しておりました水曜日午前の外来は近藤医師が引き継ぐ予定になっております。子宮筋腫、子宮内膜症などの術後のフォローの方も引き続き受診をお願いいたします。
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皆様に重要なお知らせ

2006-03-20 | ご挨拶
私は今月をもちまして愛媛県立中央病院を退職し、2006年4月より大阪の「健保連大阪中央病院」に勤務いたします。愛媛県立中央病院を受診していただいた多くの方の手術をお断りすることになってしまったことをお詫び申し上げます。

健保連大阪中央病院はJR大阪駅の西、オオサカガーデンシティにあり、JR大阪駅より徒歩7分、また大阪空港より空港バスで30分ハービスENTで降車後徒歩3分と、交通の便の大変よいところにあります。

大阪の方だけでなく関西一園、また国内からも受診していただける便利なところにあります。ハービスENT、ハービスOSAKAなどの文化、観光施設があり大阪観光も兼ねて来院していただけると思います。もし遠方から手術に来られた場合でも、リッツカールトンホテルを筆頭にシティホテル、ビジネスホテルがありますので、ご家族の方々も近くに宿泊していただけます。

大阪に移りましても、今まで行っていた腹腔鏡下手術、とくに子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術を積極的におこなってまいります。身体に負担の少ない手術を実践していくとともに、術式や技術の最先端を追求し婦人科腹腔鏡下手術の術者の育成に努力したいと思っております。

なお、診療は4月3日から開始いたしますが、外来日はまだ正式に決まっておりません。できるだけ早く受診したい方はinfo@endosurgery.jpへご連絡ください。
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直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その6

2006-03-19 | 子宮内膜症
前回は腸管の狭窄について考えた。他には下血などもある。腸閉塞や下血の症状がなければ、なかなか積極的には腸管の切除まですることは考えにくい。悪性化も一応考えておかなければならない。

最近、卵巣チョコレート嚢胞の悪性化が指摘されるようになってきた。婦人科癌の専門家がある程度の基準を設けて卵巣チョコレート嚢胞は手術すべし!(卵巣を摘出)、という発表をしている。


子宮腺筋症と子宮体癌との関連を指摘するものもある。また、腸管の類内膜腺癌の報告もある。私の経験ではダグラス窩の子宮内膜症が悪性だった(初期の子宮体癌合併でしたが)ものもあった。ちなみに病理医によれば子宮体癌とダグラス窩の腺癌は発生が別ではないか、とのことだった。

重症子宮内膜症は慢性的な強い炎症を起こしているので、(とくに深部病変は)癌化と関連するのも理解しやすい。

10-20年も前には、卵巣チョコレート嚢胞の悪性化はほとんど指摘されていなかった。これから、10年後、20年後にはチョコだけではなく、腹膜、腸管の子宮内膜症や子宮腺筋症の悪性化が問題になっているかもしれない。

もちろん、だから子宮内膜症は切除すべしと言っているのではない。ただ、可及的にdebulking(子宮内膜症の病巣を減量させること)することが腹腔内のさまざまな臓器の癌化を抑制しているかもしれない・・・と漠然と考えている。どうだろう?

少なくとも10-20年以上経たないと結論は出ないだろうと思うが。
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早ければいいわけではない。

2006-03-18 | 腹腔鏡
名手と言われる人の手術は早い。しかし、早い手術が必ずしも良いとは限らない。
一番大事なことは、目的とする手術が確実に終わることである。次は、合併症、副損傷のないこと。できるだけ痛くないほうがいい。そして、術後癒着もなく出血も少ないのなら言うことはない。早さや経済性は、それから求めるべきものではないだろうか?

腹腔鏡下手術は時間がかかるものだ。手術時間は気になるが、時間は気にせず丁寧にやりたい。
早ければいいわけではない。早いだけのオペは危険きわまりない。

(腹腔鏡では早くすら出来ない人が多いのだが・・・しっかりブラックボックスなどで研修してください。)
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それをいっちゃあ、おしめえよ

2006-03-10 | 腹腔鏡
卵巣嚢腫核出は体内法でするのが好きだ。体外に引き出してする体外法もあるが、切開が大きくなり、術後痛い。わざわざ狭いところで手術操作をするのが好きでないというのもある。

類皮嚢腫の手術は、最近、あまりしないが、だいたい一時間から一時間半で終わる。9cm大で二胞性の腫瘤では1時間40分くらいだった。

ある先生に言われた。「それって何の意味があるの?」

体外法で一時間で終われば、そのほうがいいのか?それなら開腹して30分で終わらせたらいいのでは?癒着のない卵巣嚢腫の手術に3時間もかかれば論外だが、1時間40分くらいならQOLを損なうとは思えない。早けりゃいいのか?
・・・同じことを患者さんから言われたなら、体内法止めてもいいけど・・・

「何の意味があるの?」
あまり建設的な言葉ではない。
・・・「それをいっちゃあ、おしめえよ~」・・・寅さんになってしまった。
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直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その5

2006-03-06 | 子宮内膜症
前回まで直腸子宮内膜症について骨盤痛の点から考えてみたので、今回は腸管の狭窄について考えてみる。

重症子宮内膜症だからといって腸管が必ずしも狭窄しているわけではない。腸管狭窄例は手術に対象となるもののうち、約3-5%程度ではないかと思う。それに、腸管表面の子宮内膜症を放置したからといって、すぐに腸管が狭窄してしまうということはない。

しかし、子宮内膜症は閉経まで続く経過の長い疾患である。20-30代女性で腸管におよぶ子宮内膜症を残した場合、その後、腸管を狭窄したり腸管内に浸潤していくような病変に進行していくかもしれない。

5年前に私が腹腔鏡下手術をした方(40代、癒着剥離のみ、直腸子宮内膜症の切除はせず)が、最近、骨盤痛の再発と便秘で来院した。内科で大腸内視鏡検査をしたところ直腸粘膜面に一部子宮内膜症が浸潤していたのだ。この方は幸いにも閉経が近くなっており症状も軽度なので経過観察することにした。

直腸表面の子宮内膜症を放置した場合、長い経過のうちに、このように狭窄をきたしたり直腸内腔まで浸潤してくるケースがあるのだ。もちろん、狭窄を予防するために腸管を切除するというのはおかしな話と思う。

しかし、病変をできるだけ切除して遺残を最小限にできれば、術後は子宮内膜症による骨盤内炎症も最小限になるので(子宮内膜症の進行も止まり)将来的な狭窄を予防することができるかもしれない。
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