ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

手術を希望される方はこちらをご覧ください。

医療相談、ご質問にはお答えしませんのでご了承ください。

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直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その7

2006-03-30 | 子宮内膜症
骨盤痛、狭窄、悪性化などの問題について考えたが、今回は妊孕性の点から考えてみる。

腹膜病変については、切除、焼灼し、腹腔内を十分洗浄することで、術後に妊娠しやすくなることが明らかになっている。腹腔鏡下手術の術後1年くらいは(妊娠のための)ゴールデンタイムである。

深部病変の切除が妊孕性の向上にどのように寄与するのか、あまりわかっていない。ところが最近、それに関する報告*がでてきた。(*Fertility after laparoscopic colorectal resection for endometriosis: preliminary results. Fertil Steril. 2005 Oct;84(4):945-50.)

これによると、腸管切除(区域切除)した22例の挙児希望例のうち10例が術後に妊娠していたとのことだ。(平均観察期間24ヶ月)また、妊娠しなかった12例では子宮腺筋症が有意にみとめられた。RCT(randomized controlled trial)でないので何ともいいがたいが、重症子宮内膜症でもこれだけ妊娠するというのはかなりの好成績に思える。つまり、深部病変を切除することにより妊孕性は上がるということだろう。

C.H.Kohも講演で3回体外受精が上手く行かなかった重症子宮内膜症症例で腸管切除した後、体外受精に成功した例を紹介している。

しかし、この報告*の著者の別の論文をみてみると区域切除を40例施行し、開腹移行例が4例、他に合併症では直腸腟瘻が3例、骨盤内膿瘍が1例、一過性排尿障害が7例となっている。

手術により骨盤痛、狭窄だけでなく妊孕性まで改善しているようなので手術をする価値は十分あると思うが、合併症については十分考慮しておかなければならない。

今回の結論は(あくまで予想であるが)
・深部子宮内膜症病変を切除することで妊孕性は向上する。
・子宮腺筋症が残っていると妊孕性は向上しない。
・子宮腺筋症の切除は妊孕性の向上にどのように関係するかわかっていない。
(私は腺筋症切除で妊娠しやすくなるという印象を持っている。)
ということでいいと思う。
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医者ズバッを見た

2006-03-30 | どうでもいい話
3/24に医者ズバッという番組が放映された。みのもんたと芸能人、名医20人が医療に関するテーマで激論を繰り広げるというものだった。腹腔鏡下手術のエキスパートとして金平永二先生が出演するということで録画しておいたのだが・・・・あまりの内容のひどさに参った。出演したことを後悔していた先生方も多かったのではないだろうか?それともいい宣伝になったということかな?

途中で鏡視下で結紮縫合をするという場面があったが、一般向けなのであの程度の内容になるのも仕方がない。また、金平先生が3日で1-2時間しか眠らずに働いたことがあるというコメントをされていた。私も30時間くらいなら、ぶっ続けで働くことはしょっちゅうだった。

たとえば、火曜日の午前、腹腔鏡下手術、午後、外来、そのまま当直入りして水曜日に外来。夜は2時間程度しか眠れないことは珍しくないので水曜日の外来では頭がボーッとしてきて、患者さんに説明している途中で何を喋っていたのかわからなくなるうこともしばしば・・・

金曜日の朝、術後の患者を回診し退院指導、そのまま宝塚に飛び、腹腔鏡下手術を2件、終了後、松山へ戻り、午後8時半ごろからそのまま当直入り、帝王切開、分娩などで朝まで一睡もせず働くなんてこともあった。

まるでニューヨークから成田までフライトしたパイロットが、休憩もなしにそのままシンガポールまで行ってしまうようなものだ。事故を起こしてくれといわんばかりではないか?(もう二度とあんな生活はしたくない)

番組の話にもどるが、金平先生の話で、「え~?医者って余ってんじゃないの~?!」の芸能人の声。しかも、気がついたら次の話題へ・・・今年一番むかついた瞬間だった。台本どおりやっているのだろうが、理解に苦しむ。
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