ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

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おすすめの本はこちら?ブックス・ラパロスコピスト

「外科医 須磨久善」

2009-08-02 | 大阪日記
先週、T先生が私に読んでみてほしいと一冊の本を貸してくれた。ということで先週、電車の中でずっと読んでいたのがこれである。

「外科医 須磨久善」
日本で第一例目のバチスタ手術を施行し、あの「チームバチスタの栄光」のモデルとなった心臓外科医、須磨久善医師について、これまた、あの海堂尊氏が書いたドキュメンタリーである。

この中で描かれている須磨久善先生の経歴をみると(多少の誇張もあるのかもしれないが)・・・すごい
・41歳でベルギーのブリュッセルで公開手術
・胃大網動脈を利用したバイパス手術
・日本初のバチスタ手術、そしてスマ手術への進化
などなど。

専門ではないので、どのように評価するべきなのかはよくわからないが、海堂尊氏に語る須磨久善先生のことばはたいへん興味ぶかい。一般の読者にはちょっとわかりにくいところもあるかもしれないが、医療関係者、とくに外科系医師にとっては共感するところが多いだろう。

例を挙げてみると、
『外科医とはアスリートのようなものです』p38
婦人科手術でも、術者のことを「アスリート」にたとえられることが多い。あるエキスパートの腹腔鏡下手術に立ち会った医療機器メーカーの人は「まるでアスリートですね。」と言って感嘆していたそうだ。

私は、手術中に自分がどのように見えるのかはわからないが、術者をアスリートとたとえるのにはちょっと違和感がある。手術はスポーツのように全力疾走したり全力投球したりするものではない。私の感覚ではどちらかというと「ダンスパフォーマンス」に近い。とくに腹腔鏡下手術はチームワークが大事で、術者と助手の質の高い連携はレベルの高い競技ダンスのように見えるのではないかと思っている。(それをアスリートと言うのかもしれないが)

『まずはイメージを掴むことです。』p98
(外科手術の教育のための肝は何でしょうか?という質問に答えて)『イマジネーション、でしょうね。すべての手術は、想像するところから始めるべきです。(後略)』p199

この言葉だけでは意味はわかりにくいかもしれない。多くの術者は、解剖とか術式を手術書を読んだりや実際の手術を観たり、助手をつとめて学ぶ。手術書に書かれてあることは、あくまで言葉であり、イラストや写真はあくまで平面的である。また、腹腔鏡下手術で見えるのも平面的なモニター画面である。つまり、平面的なもののみを見て、いかに立体構造を把握できるか?(開腹手術なら立体的に見えるはずと思うかもしれないが、術者が立体的な解釈ができているかどうかは別だ。)

そして、さらに立体的構造を把握できるように、臓器を触れるかどうか?(つまり、触知、展開、切開、剥離、縫合結紮の過程において、いかに立体構造のイメージをふくらませていけるかどうか?)

観て味わい、触って味わい、手を加えながら味わえるか?つまり、身体と脳のすべてを駆使してイメージを掴むこと。
どこまで精細に正確にイマジネーションできるかが、手術のすべてではないかと思う。

それができなければ、イマジネーションは、ただの妄想でしかない。

(吉川晃司に「本物の外科医ってどうやって見分けるんですか」と聞かれて)『本物の外科医は背中で語る。それができなければ一流の外科医とは言えない。』p198

よくわからんなぁ。ということは、私の背中はまだ語ってないのだろう。


外科医 須磨久善
コメント
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