ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

はじめにお読みください

健保連大阪中央病院に勤務するラパロスコピスト(腹腔鏡術者)のブログです。婦人科腹腔鏡下手術、子宮内膜症、慢性骨盤痛等の治療を専門としています。

このブログでは腹腔鏡下手術、子宮内膜症、子宮筋腫に関する基本的な事柄については解説していません。まず、下記のウェブサイトをご覧になることをお勧めします。
日本子宮内膜症協会
子宮筋腫・内膜症体験者の会 たんぽぽ

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直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その5

2006-03-06 | 子宮内膜症
前回まで直腸子宮内膜症について骨盤痛の点から考えてみたので、今回は腸管の狭窄について考えてみる。

重症子宮内膜症だからといって腸管が必ずしも狭窄しているわけではない。腸管狭窄例は手術に対象となるもののうち、約3-5%程度ではないかと思う。それに、腸管表面の子宮内膜症を放置したからといって、すぐに腸管が狭窄してしまうということはない。

しかし、子宮内膜症は閉経まで続く経過の長い疾患である。20-30代女性で腸管におよぶ子宮内膜症を残した場合、その後、腸管を狭窄したり腸管内に浸潤していくような病変に進行していくかもしれない。

5年前に私が腹腔鏡下手術をした方(40代、癒着剥離のみ、直腸子宮内膜症の切除はせず)が、最近、骨盤痛の再発と便秘で来院した。内科で大腸内視鏡検査をしたところ直腸粘膜面に一部子宮内膜症が浸潤していたのだ。この方は幸いにも閉経が近くなっており症状も軽度なので経過観察することにした。

直腸表面の子宮内膜症を放置した場合、長い経過のうちに、このように狭窄をきたしたり直腸内腔まで浸潤してくるケースがあるのだ。もちろん、狭窄を予防するために腸管を切除するというのはおかしな話と思う。

しかし、病変をできるだけ切除して遺残を最小限にできれば、術後は子宮内膜症による骨盤内炎症も最小限になるので(子宮内膜症の進行も止まり)将来的な狭窄を予防することができるかもしれない。
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