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子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

直腸子宮内膜症は切除する必要があるのか? その7

2006-03-30 | 子宮内膜症
骨盤痛、狭窄、悪性化などの問題について考えたが、今回は妊孕性の点から考えてみる。

腹膜病変については、切除、焼灼し、腹腔内を十分洗浄することで、術後に妊娠しやすくなることが明らかになっている。腹腔鏡下手術の術後1年くらいは(妊娠のための)ゴールデンタイムである。

深部病変の切除が妊孕性の向上にどのように寄与するのか、あまりわかっていない。ところが最近、それに関する報告*がでてきた。(*Fertility after laparoscopic colorectal resection for endometriosis: preliminary results. Fertil Steril. 2005 Oct;84(4):945-50.)

これによると、腸管切除(区域切除)した22例の挙児希望例のうち10例が術後に妊娠していたとのことだ。(平均観察期間24ヶ月)また、妊娠しなかった12例では子宮腺筋症が有意にみとめられた。RCT(randomized controlled trial)でないので何ともいいがたいが、重症子宮内膜症でもこれだけ妊娠するというのはかなりの好成績に思える。つまり、深部病変を切除することにより妊孕性は上がるということだろう。

C.H.Kohも講演で3回体外受精が上手く行かなかった重症子宮内膜症症例で腸管切除した後、体外受精に成功した例を紹介している。

しかし、この報告*の著者の別の論文をみてみると区域切除を40例施行し、開腹移行例が4例、他に合併症では直腸腟瘻が3例、骨盤内膿瘍が1例、一過性排尿障害が7例となっている。

手術により骨盤痛、狭窄だけでなく妊孕性まで改善しているようなので手術をする価値は十分あると思うが、合併症については十分考慮しておかなければならない。

今回の結論は(あくまで予想であるが)
・深部子宮内膜症病変を切除することで妊孕性は向上する。
・子宮腺筋症が残っていると妊孕性は向上しない。
・子宮腺筋症の切除は妊孕性の向上にどのように関係するかわかっていない。
(私は腺筋症切除で妊娠しやすくなるという印象を持っている。)
ということでいいと思う。
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