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子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

子宮内膜症患者が腹腔鏡下手術を受ける価値があるのか?その4

2006-06-01 | 子宮内膜症
今回は子宮内膜症病変そのものが引き起こす痛みである。

この痛みは月経時に子宮内膜症病変からの出血のためにおこる。腹膜病変なら腹腔内に出血をおこし、深部病変であれば病巣内に出血をおこす。深部病変内の出血は組織の間に貯まり、まわりの組織を引き裂いてしまう。腹膜病変であれ深部病変であれ病変部からの出血は強い痛みを起こす原因となる。

これにより炎症がおこりマクロファージが出す化学物質により周囲組織が損傷される。また、深部病変ではとくにプロスタグランディンという化学物質が多く作られる。このプロスタグランディンは子宮や腸管の平滑筋を収縮させるはたらきを持っていて陣痛促進剤や腸閉塞の治療薬として使われる。

月経時には子宮内膜症や子宮腺筋症の病変部から産生されて子宮や腸管を強く収縮させる。それにより陣痛のように強い月経痛を引き起こしたり、下痢になったりする。

このように、子宮内膜症の痛みは
1. 卵巣チョコレート嚢胞が原因となる痛み
2. 癒着や引きつれによる痛み
3. 子宮内膜症病変そのものによる痛み
などが原因となる。

骨盤痛、月経痛を取り除くために手術をするのであれば、手術中の所見(もちろん術前の評価からも)から、この患者さんはなぜ痛いのかを考え、その原因を取り除く手術をしなければならない。

普通、開腹手術であれば、卵巣チョコレート嚢胞の切除やある程度の癒着剥離はどの施設でも行っている。また、腹腔鏡下手術でも行う術者も少なくはない。卵巣チョコレート嚢胞やちょっとした癒着が原因であれば運よく月経痛、骨盤痛は治るだろう。しかし、子宮内膜症の深部病変やかなりシビアな癒着や引きつれが原因になっているのであれば、手術したにもかかわらず痛みがあまり治らないというのは決して珍しいことではない。
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