ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

子宮内膜症病変の完全切除

2013-01-20 | 子宮内膜症
土曜日まで宇都宮で行なわれた日本エンドメトリオーシス学会に参加してきました。

腹腔鏡のセッションでは、ある施設の演題で、子宮内膜症を完全切除できると考えているのか?という質問をしました。

子宮内膜症は腹腔内に発生することが多いのですが、我々が見ている病変は炎症の結果ですので、仮にendometoriotic foci(子宮内膜症病巣)があったとしても、硬結や炎症像を呈しない限り見えることはありません。顕微鏡で見ているわけではありませんので、完全に切除したつもりでも、ミクロのレベルではfocus(病巣)は残っています。ですから、一見完全に病巣を切除したつもりでも、本当に完全に病巣を切除しているということはありえないと考えます。我々の行なっていることは、最大限にdebulking(減量手術)しているだけです。

子宮内膜症の術後の状態は、コップの中に水が半分残っている状態に似ています。「半分しか入っていない」と思うのか、「半分も入っている」と思うのか、考え方はいろいろですが、子宮内膜症術後の場合は必ずコッブの底に小さな穴が空いています。

つまり、問題は「半分しか入っていない、半分も入っている」ではなく、「コップの底に小さな穴が空いているかもしれない」と考えているか、それとも「たぶん、穴は空いていないだろう」と考えているかになります。小さな穴が空いているかもしれないと考えるのであれば、指で穴を塞ごうとするでしょうし(つまり術後薬物療法)、穴は空いていないと考えるのであれば、そのままにしているでしょう。

その後、同施設の別演題のディスカッションで「完全に切除できたと思ったら、術後薬物療法はしません」というコメントもありました。(やっぱり、完全に切除できると思ってんじゃん

水を飲もうと思ったときに、コップの中にはほとんど水が残っていないことも有りえます。私たちの仕事は、彼女達が、水を飲みたいと思ったときに、どれだけ多くの水を残してあげられるかだと思っています。

子宮内膜症を完全に切除しているかどうかは別にして、完全に切除していると思ってはいけないのではないかと考えています。
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