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子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

子宮内膜症患者が腹腔鏡下手術を受ける価値があるのか?その10

2006-10-16 | 子宮内膜症
★子宮内膜症をできるだけ切除したにもかかわらず残る痛み
5-10%くらいの患者さんは、たとえ、できるだけ子宮内膜症を切除しても骨盤痛はある程度は残ってしまう。「月経でやっぱり痛い」という場合と「月経の時以外の痛みが治らない」という場合がある。私の経験では、重症子宮内膜症で深部病変を多く切除した方よりも、むしろ子宮内膜症自体は思ったほどひどくなかった人に見られる傾向がある。これにはいろんな原因が考えられる。

★取り残した子宮内膜症が痛みを起こしている。
相当な重症例の手術では、どうしても深部病変がある程度は残ってしまう。しかし、取れるところはできるだけ切除しているのでトータルでは90%以上の病変を取り除いている。そういう患者さんの痛みはほとんど治る。

もちろん、残った子宮内膜症病変が再燃して痛みの原因になるということはありうるが、少なくとも術後2-3年は痛みがほとんどなくなる。

だから、わずかに取り残した子宮内膜症病変が【治らない痛み】の原因になるとは考えにくい。むしろ、症状が強いにもかかわらず、子宮内膜症が思ったより軽症である場合のほうが痛みが取れないことのほうが多い。

もちろん、この場合でも子宮内膜症病変を取り残しているということはありえる。というより、子宮内膜症を認識できなかったということかもしれない。正常に見える仙骨子宮靭帯のなかにもある程度の割合で子宮内膜症病変があると言われている。

右卵巣を切除し右骨盤壁の腹膜病変を完全に取り除いたにもかかわらず、右下肢痛と腰痛が治らないという例があった。この場合、その原因は2つ考えられる。骨盤のより深いところ(たとえば閉鎖リンパ節の周辺など)に子宮内膜症があるのかもしれないし、子宮内膜症が痛みの原因ではないかもしれない。

★子宮内膜症がその痛みの原因ではない。
じゃあ、その痛みは何なんだと言われそうだが、腹腔鏡でも明らかな所見がなく何でその症状があるのかわからないという例がある。メンタルなものがあるのかもしれないし、子宮内膜症以外の器質的疾患があるのかもしれない。(間質性膀胱炎など)

★あらたに子宮腺筋症が出てきた。
非常に少ないが、術後フォローしていると子宮腺筋症が出来ていることがある。(子宮腺筋症ではなく子宮が収縮していて、腺筋症様に見えることもあるかもしれない。)精査してフォローする必要がある。この場合、月経痛は強くなるものの月経以外では痛みが出ないことが多いので鎮痛剤のみで様子をみていいのかもしれないが、低用量ピルを内服したほうが腺筋症は進行しないように思えますね。

骨盤痛の病態、治療は非常に複雑だ。手術をして、「ハイ、終わりました」というわけにはいかない。個々の患者さんの病態を把握し手術や治療をして術後フォローをする、予後がよくならない場合には別の手だてを考える必要がある。
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