今回は、英語の移動現象に関してです。EG62の、‘seem’の構文から、以下、見ましょう。
(1)It seems [ that Tom loves Susan ]. ([ トムは、スーザンが好きな ] ようだね。)
(2)Tom seems to love Susan. (訳同上)
EG62では、(1)の‘Tom’は、移動によって、(2)にあるように、‘seem’の主語位置まで移動してくる、ということを見ました。しかし、それには、条件があって、(2)にあるように、(1)の‘that’節から、‘to’不定詞への書きかえが必要であり、以下のようなカタチでの移動は禁止されていました。
(3) Tom seems [ (that) _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))
(3)は、‘to’不定詞への書きかえなしで、(1)の‘that’節内から、‘Tom’を、‘seem’の主語位置に移動したのですが、結果はアウトです。これは、‘that’があっても省略されていても、結果は同じ、アウトになります。そこで、(1)から(2)への書きかえは、暗記してすませるようなこととして教えられることが一般的になっていて、普通、(3)のようなことまで考える、ということは、まずありません。さらに、以下を見ましょう。
(4)It is easy (for Tom) to deceive Susan. ((トムには)スーザンを騙すなんて簡単だよ。)
(5)Susan is easy (for Tom) to deceive _ . (訳同上)
今度は、(4)から(5)への書きかえですが、これは、EG23の、‘easy’構文です。(4)では、‘Susan’が、‘to’不定詞の目的語ですが、そこから、(5)にあるように、‘is easy’の主語位置まで、移動しています。‘easy’構文の重要なポイントは、「目的語の移動」、だったわけですが、以下のような場合は、どうでしょうか。
(6)It is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves Susan ]. (〇)
((トムには) [ ジョンがスーザンを愛している ] なんて、想像するのは簡単だよ。)
(7)Susan is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves _ ]. (×) (訳同上)
(6)の‘to’不定詞内に、‘that’節を置いてみましたが、その「目的語」を移動の対象に選んでみたわけですね。そこで、(7)ができ上がるわけですが、何と、アウトになってしまいました。‘easy’構文は、その‘to’不定詞内部の目的語が、移動の対象となることは、EG23で既に確認済みです。しかし、‘to’不定詞内に、‘that’節を置いた場合、その中では、いくら目的語と言えども、移動の対象として選んではいけない、ということらしいのです。続けて、以下を見ましょう。
(8)It is said [ (that) Tom is smart ]. (〇) ([ トムは頭が良いと ] 言われている。)
(9)Tom is said _ to be smart. (〇) (訳同上)
(10)Tom is said [ (that) _ is smart ]. (×) (訳同上)
今度は、他でもよく解説されているように、(8)から(9)への書きかえパターンですが、もちろん、OKですね。この構文の特徴は、‘that’節内の主語が、必ず、移動の対象として選ばれる、ということです。そして、ポイントは、移動の際に、(8)の‘that’節が、(9)では、‘to’不定詞に変わっていることです。ですので、これらの点を踏まえると、‘seem’の構文と、同タイプの変形パターンと言えます。
そこで、(8)の‘that’節内から、‘to’不定詞に変えずに、そのまま、(10)のように、‘Tom’を移動させた場合は、アウトになります。(‘that’節の‘that’の直後にある要素は移動できない、という、別個に独立したルールがありますが、that’があろうと、省略されていようと、アウトです。(EG59参照))
こういったことから、どうやら、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、と言えそうです・・・。って、ちょっと待った!EG47の、「疑問詞の移動」はどうするんじゃい!そ、そうでした。以下も見てみましょう。
(12)John says [ (that) Tom saw Mary ]. (〇)
(ジョンは [ トムはメアリーを見た ] と言ってるよ。)
(13)Who does John say [ (that) Tom saw _ ] ? (〇)
(ジョンは [ トムは誰を見たと ] 言ってるかい。)
そうなんですね。「疑問詞の移動」に関する例を見る限り、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、とは言えないんです。それに加えて、関係節の例もありますね。
(14)Susan thinks [ the boy bought bread ]. (〇)
(スーザンは [ 少年はパンを買ったと ] 思っている。)
(15)the boy [ who Susan thinks [ _ bought bread ] ] (〇)
([ スーザンが [ _ パンを買ったと ] 思っている ] 少年)
一般的に、関係節をつくる場合、(14)のような文を基にすると、(15)のように、‘the boy’は、関係代名詞‘who’に変化してから、関係節の先頭まで移動していく、と考えられています。この場合、‘that’節は、‘to’不定詞などへの書きかえはありません。
ですので、関係節の場合も、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、とは言えません。(that’は意図的に省略してあります。既に述べたように、‘that’節の‘that’の直後にある要素は、その外に移動できない、という、別個に独立したルールがあるためです。(EG59参照))
そこで、疑問詞や関係詞の移動、と言った問題は残っていますが、とりあえず、これらの疑問詞や関係詞を、「‘wh-’表現」、として、ひとまとめにしておき、ここでは、アウトである、(3)、(7)、(10)に対する例外として扱っておきます。とは言え、見方によっては、今回の議論の利点は、移動の種類は、実は、大きく、2通りに分類可能ではないか、という示唆があったということです。
つまり、‘that’節という、1つの基準を置いてみることで、その内部から外への移動が可能か否かで、移動には、「弱い移動」と、「強い移動」が、ありそうだ、ということです。「弱い移動」とは、実質的に、意味を変えずに、ただ、カタチが変わるだけの変形をするような移動で、‘seem’構文、‘easy’構文、受身文、といった類の構文で、‘that’節内の、移動対象とされる要素を、その外に移動させるだけの力はありません。
「強い移動」とは、「‘wh-’表現」の移動であり、肯定文から疑問文への意味的変化や、関係節という、文の一部として、他にかかる要素となる、文法的役割の変化が伴う構文において起こる移動のことです。‘wh-’表現は、‘that’節内から、その外に飛び出す力をもっています。
今回のポイントは、‘that’節を1つの基準として、英語には、やたらと多い移動現象の分類分けを試みた、ということです。とりあえず、今回、明らかになったのは、‘seem’構文、‘easy’構文、受身文、といった類の移動構文は、‘that’節内からの移動が起こると、アウトになってしまう、ということです。
疑問詞や関係詞の移動、つまり、「‘wh-’表現」の移動は、今回、その例外扱いとされましたが、実は、‘that’節から、その外の移動を、全く、ものともしないとは、完全には言い切れない証拠も、他にあるのです。この点に関しては、機会を改めて考えることにします。
■注1 :‘easy’構文の場合、‘It is easy [ that Tom deceive Susan ].’「[ トムにはスーザンを騙すなんて ] 簡単だよ。」、というような、「it ~ ‘that’節」のカタチは、もともとアウトで、必ず、it ~‘to’不定詞、のように、‘to’不定詞を取ることになっています。そこで、あえて、OKである‘that’節内からの移動テストをするため、(6)、(7)のように、to’不定詞内の動詞が‘that’節を取っているカタチの例にしてみました。
■注2 :受身文は、普通、‘John loves Mary.’「ジョンはメアリーを愛している。」、のような、‘Mary’を目的語とする能動文から、‘Mary is loved by John.’「メアリーはジョンに愛されている。」、というように、目的語が、主語位置に移動することで生成される、と定義されています。しかし、(9)に対応する能動文と考えられる、‘Someone says Tom to be smart.’自体が、アウトである、という事実があるので、必ずしも、(9)は、‘Someone says that Tom is smart.’が、‘Someone says Tom to be smart.’、というカタチになる、というように、‘that’節内の主語‘Tom’が目的語になる、という派生を受けてから、受身文になったのだ、という確証はありません。そこで、(9)を生成する他の可能性として、「主語」、というステイタスも、受身文の主語位置に、直接、移動する対象であると、一度、考えてみる必要があります。そうなると、(10)がアウトになる原因は、目的語の移動ではないから、というよりも、むしろ、‘that’節内から、その外に移動させたから、という可能性も十分に考慮できると思われます。ですので、この場合、(9)の‘to’不定詞は、‘Tom’の移動が起こった後で、(10)のままでは、アウトになるため、これを避けるために変化が起こったカタチである、と説明されることになります。
●関連: EG23、EG47、EG59、EG62
★みんなの英会話奮闘記★ ★元祖ブログランキング★ ★英語・人気blogランキング★
(1)It seems [ that Tom loves Susan ]. ([ トムは、スーザンが好きな ] ようだね。)
(2)Tom seems to love Susan. (訳同上)
EG62では、(1)の‘Tom’は、移動によって、(2)にあるように、‘seem’の主語位置まで移動してくる、ということを見ました。しかし、それには、条件があって、(2)にあるように、(1)の‘that’節から、‘to’不定詞への書きかえが必要であり、以下のようなカタチでの移動は禁止されていました。
(3) Tom seems [ (that) _ loves Susan ]. (×) (訳同(1))
(3)は、‘to’不定詞への書きかえなしで、(1)の‘that’節内から、‘Tom’を、‘seem’の主語位置に移動したのですが、結果はアウトです。これは、‘that’があっても省略されていても、結果は同じ、アウトになります。そこで、(1)から(2)への書きかえは、暗記してすませるようなこととして教えられることが一般的になっていて、普通、(3)のようなことまで考える、ということは、まずありません。さらに、以下を見ましょう。
(4)It is easy (for Tom) to deceive Susan. ((トムには)スーザンを騙すなんて簡単だよ。)
(5)Susan is easy (for Tom) to deceive _ . (訳同上)
今度は、(4)から(5)への書きかえですが、これは、EG23の、‘easy’構文です。(4)では、‘Susan’が、‘to’不定詞の目的語ですが、そこから、(5)にあるように、‘is easy’の主語位置まで、移動しています。‘easy’構文の重要なポイントは、「目的語の移動」、だったわけですが、以下のような場合は、どうでしょうか。
(6)It is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves Susan ]. (〇)
((トムには) [ ジョンがスーザンを愛している ] なんて、想像するのは簡単だよ。)
(7)Susan is easy (for Tom) to imgine [ (that) John loves _ ]. (×) (訳同上)
(6)の‘to’不定詞内に、‘that’節を置いてみましたが、その「目的語」を移動の対象に選んでみたわけですね。そこで、(7)ができ上がるわけですが、何と、アウトになってしまいました。‘easy’構文は、その‘to’不定詞内部の目的語が、移動の対象となることは、EG23で既に確認済みです。しかし、‘to’不定詞内に、‘that’節を置いた場合、その中では、いくら目的語と言えども、移動の対象として選んではいけない、ということらしいのです。続けて、以下を見ましょう。
(8)It is said [ (that) Tom is smart ]. (〇) ([ トムは頭が良いと ] 言われている。)
(9)Tom is said _ to be smart. (〇) (訳同上)
(10)Tom is said [ (that) _ is smart ]. (×) (訳同上)
今度は、他でもよく解説されているように、(8)から(9)への書きかえパターンですが、もちろん、OKですね。この構文の特徴は、‘that’節内の主語が、必ず、移動の対象として選ばれる、ということです。そして、ポイントは、移動の際に、(8)の‘that’節が、(9)では、‘to’不定詞に変わっていることです。ですので、これらの点を踏まえると、‘seem’の構文と、同タイプの変形パターンと言えます。
そこで、(8)の‘that’節内から、‘to’不定詞に変えずに、そのまま、(10)のように、‘Tom’を移動させた場合は、アウトになります。(‘that’節の‘that’の直後にある要素は移動できない、という、別個に独立したルールがありますが、that’があろうと、省略されていようと、アウトです。(EG59参照))
こういったことから、どうやら、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、と言えそうです・・・。って、ちょっと待った!EG47の、「疑問詞の移動」はどうするんじゃい!そ、そうでした。以下も見てみましょう。
(12)John says [ (that) Tom saw Mary ]. (〇)
(ジョンは [ トムはメアリーを見た ] と言ってるよ。)
(13)Who does John say [ (that) Tom saw _ ] ? (〇)
(ジョンは [ トムは誰を見たと ] 言ってるかい。)
そうなんですね。「疑問詞の移動」に関する例を見る限り、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、とは言えないんです。それに加えて、関係節の例もありますね。
(14)Susan thinks [ the boy bought bread ]. (〇)
(スーザンは [ 少年はパンを買ったと ] 思っている。)
(15)the boy [ who Susan thinks [ _ bought bread ] ] (〇)
([ スーザンが [ _ パンを買ったと ] 思っている ] 少年)
一般的に、関係節をつくる場合、(14)のような文を基にすると、(15)のように、‘the boy’は、関係代名詞‘who’に変化してから、関係節の先頭まで移動していく、と考えられています。この場合、‘that’節は、‘to’不定詞などへの書きかえはありません。
ですので、関係節の場合も、‘that’節には、その内部から外への移動を妨げるような要因がある、とは言えません。(that’は意図的に省略してあります。既に述べたように、‘that’節の‘that’の直後にある要素は、その外に移動できない、という、別個に独立したルールがあるためです。(EG59参照))
そこで、疑問詞や関係詞の移動、と言った問題は残っていますが、とりあえず、これらの疑問詞や関係詞を、「‘wh-’表現」、として、ひとまとめにしておき、ここでは、アウトである、(3)、(7)、(10)に対する例外として扱っておきます。とは言え、見方によっては、今回の議論の利点は、移動の種類は、実は、大きく、2通りに分類可能ではないか、という示唆があったということです。
つまり、‘that’節という、1つの基準を置いてみることで、その内部から外への移動が可能か否かで、移動には、「弱い移動」と、「強い移動」が、ありそうだ、ということです。「弱い移動」とは、実質的に、意味を変えずに、ただ、カタチが変わるだけの変形をするような移動で、‘seem’構文、‘easy’構文、受身文、といった類の構文で、‘that’節内の、移動対象とされる要素を、その外に移動させるだけの力はありません。
「強い移動」とは、「‘wh-’表現」の移動であり、肯定文から疑問文への意味的変化や、関係節という、文の一部として、他にかかる要素となる、文法的役割の変化が伴う構文において起こる移動のことです。‘wh-’表現は、‘that’節内から、その外に飛び出す力をもっています。
今回のポイントは、‘that’節を1つの基準として、英語には、やたらと多い移動現象の分類分けを試みた、ということです。とりあえず、今回、明らかになったのは、‘seem’構文、‘easy’構文、受身文、といった類の移動構文は、‘that’節内からの移動が起こると、アウトになってしまう、ということです。
疑問詞や関係詞の移動、つまり、「‘wh-’表現」の移動は、今回、その例外扱いとされましたが、実は、‘that’節から、その外の移動を、全く、ものともしないとは、完全には言い切れない証拠も、他にあるのです。この点に関しては、機会を改めて考えることにします。
■注1 :‘easy’構文の場合、‘It is easy [ that Tom deceive Susan ].’「[ トムにはスーザンを騙すなんて ] 簡単だよ。」、というような、「it ~ ‘that’節」のカタチは、もともとアウトで、必ず、it ~‘to’不定詞、のように、‘to’不定詞を取ることになっています。そこで、あえて、OKである‘that’節内からの移動テストをするため、(6)、(7)のように、to’不定詞内の動詞が‘that’節を取っているカタチの例にしてみました。
■注2 :受身文は、普通、‘John loves Mary.’「ジョンはメアリーを愛している。」、のような、‘Mary’を目的語とする能動文から、‘Mary is loved by John.’「メアリーはジョンに愛されている。」、というように、目的語が、主語位置に移動することで生成される、と定義されています。しかし、(9)に対応する能動文と考えられる、‘Someone says Tom to be smart.’自体が、アウトである、という事実があるので、必ずしも、(9)は、‘Someone says that Tom is smart.’が、‘Someone says Tom to be smart.’、というカタチになる、というように、‘that’節内の主語‘Tom’が目的語になる、という派生を受けてから、受身文になったのだ、という確証はありません。そこで、(9)を生成する他の可能性として、「主語」、というステイタスも、受身文の主語位置に、直接、移動する対象であると、一度、考えてみる必要があります。そうなると、(10)がアウトになる原因は、目的語の移動ではないから、というよりも、むしろ、‘that’節内から、その外に移動させたから、という可能性も十分に考慮できると思われます。ですので、この場合、(9)の‘to’不定詞は、‘Tom’の移動が起こった後で、(10)のままでは、アウトになるため、これを避けるために変化が起こったカタチである、と説明されることになります。
●関連: EG23、EG47、EG59、EG62
★みんなの英会話奮闘記★ ★元祖ブログランキング★ ★英語・人気blogランキング★
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます