ここではないどこかへ -Anywhere But Here-

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スリング・ブレイド

2006-02-04 23:56:56 | 映画
晴れ。立春だというのに第一級の寒波がやってきた。こんな日は録りためていた映画をゆっくりと見る。

「スリング・ブレイド」という作品を見る。
"スリング・ブレイド"とは大きめの刃物のこと。
主人公カール(ビリー・ボブ・ソーントン)は母親とその愛人を"スリング・ブレイド"で殺して精神病院に収監され、25年ぶりに自由の身となる。
退院直前にカールがアンソニー・ホプキンスのような鋭い眼光で自らの"歴史"を語るシーンは
この物語がスリリングな展開を予感させるかのような緊張感溢れるシーンだが、やがてそのような映画ではないことが分かってくる。
カールは知的障害を持っており、自分の犯した罪の意味を25年かけて理解してきたのである。
退院したカールは故郷のアーカンソーの田舎町で機械修理の店に住み込みとして働くようになる。
鈍重で穏やかで優しげなカールの姿はスタインベックの「二十日鼠と人間」のレニーを髣髴とさせる。
カールはフランクという少年と知り合う。カールの穏やかな父性に、父を亡くしたフランクが惹かれふたりは心を通い合わせることになる。
フランクの母には恋人がいるがこの男がとんだ荒くれ者で、二人を苦しめる。
そしてフランクを守ろうとするカールの目にはやがてはっきりとした意思の光が宿ってくる。

ビリー・ボブ・ソーントンの演技がすばらしい。
監督・脚本・主演の三役をこなしているそうで、じっくりと作りこんだという感じである。
フランク役の少年、ルーカス・ブラックもいい演技をしているし、抑えた質感や音楽にもこだわりが感じられて、
知的障害者の無垢な愛情という手垢のついた主題であるにも拘らず、飽きさせることがなかった。