法務省から、登記識別情報制度についての研究会(第1回)議事概要が公開されました。各業界や有識者から構成されるメンバーを見ても、法務省さんの苦労が伺えますね。今回は、登記識別情報を含めた登記関連手続きのオンライン化について、頂いたコメント等も踏まえた、作者の考えを述べてみたいと思います。
●オンライン化の優先度を整理する
「オンライン利用促進のための行動計画」で絞り込まれている登記関連の手続について、さらに優先度をつけ、(不動産・商業)登記手続きの中で、代理人申請が多いもの・本人申請が多いもの、簡易なもの・複雑なもの、といった分類を行い、それぞれ導入計画を立てましょう。
・「利用者が誰なのか」を把握します
・オンライン化に対する「国民のニーズ」を確認します
・「国民の視点」で手続を整理します
●国民に安心と信頼を提供するサービスを考える
オンライン申請における適切かつ合理的な本人確認を考え、既存の考え方に縛られない柔軟な発想で、国民が安心できるサービスを実現しましょう。
★参考例:
・申請時の本人確認は、電子署名と登記簿情報の照合で行う
・登記完了の通知は、官の電子署名を付した電子公文書で行う
・希望者には、窓口で紙の「登記完了書(証明書)」等の交付サービスを行う
登記識別情報の
・前回の登記完了後、登記名義人に交付するものであり、登記名義人しか知りえない情報である。したがって、登記識別情報の提供があれば、登記義務者が本人であることを直ちに確認することができる。
という考え方は、やはり無理があるような気がします。
行政が各登記申請に対して整理・管理のために処理番号等を付けるのは良いのですけど。。「登記済証」の発想から抜け出せないと、こういう考えになってしまうのでしょうね。
●業界からの意見を見極める
法務省自身が、サービスや業務の改善について明確なポリシーを持ち、業界からの意見を見極め、調整していきましょう。
・「オンライン化計画」ではない「サービス改善計画」を作ります
・国民に対して、改革の決意を表明し、積極的に情報を公開します
・業界からの意見は、十分に精査します
(必要性・費用対効果・実現可能性・社会影響といった観点から)
士業などの各業界から上がってくる意見は、必ずしも国民や社会の利益を考えたものではありません。そこには、「業務独占の維持」といった既得権益(業界の利益)を維持する意向があるからです。そのため、「使いやすさ」よりも「政治的な効果」が優先されてしまうことがあります。
こうした考えは、業界・組織としては致し方ないことで、自らの利益を守るための正当かつ正常な行為だと思います。
しかし、業界からの意見をそのまま採用してしまうと、
・システムが複雑になり割高となる
・士業にも企業・個人にも使い難くなる
・後の修正が困難となる(法制度の変更など)
といったリスクが大きくなります。
●エンドユーザーの意見を聴く
有識者だけでなく、実際の利用者(エンドユーザー)から意見を聴き、同時に、民間サービスからノウハウを学びましょう。
・業界や組織だけでなく、個人や企業から直接意見を聴きます
・利用者を顧客とする民間サービス提供者から意見を聴きます
・海外等の成功例を「制度・業務改革」の観点から分析します
個人や企業から直接意見を聴くことで、実務家・エンドユーザーとして「使いやすいもの」「使いたいもの」を具体化していきましょう。
民間サービス提供者の例として、司法書士を顧客とするソフトベンダーなどがあります。彼らのノウハウから学ぶべきことは、非常に多いでしょう。
海外の成功例については、電子署名や添付書類の扱いなどの「方法論」だけでなく、どのように制度や業務改革し、サービスの改善を実現していったのかを学びましょう。
色々と述べてきましたが、一番大切なのは、法務省(行政)のポリシーだと思います
仕事のやり方を見直して、国民に喜んでもらえるサービスを実現したい。
その意志がある限り、電子政府・電子申請は、それほど間違った方向には進みません。
もし迷ったら、「これって、本当に便利なの?」「自信を持って勧められるサービスなの?」と立ち止まって考えてみましょう。
より良い電子政府・電子申請サービスは、「急がば回れ」でございます
●オンライン化の優先度を整理する
「オンライン利用促進のための行動計画」で絞り込まれている登記関連の手続について、さらに優先度をつけ、(不動産・商業)登記手続きの中で、代理人申請が多いもの・本人申請が多いもの、簡易なもの・複雑なもの、といった分類を行い、それぞれ導入計画を立てましょう。
・「利用者が誰なのか」を把握します
・オンライン化に対する「国民のニーズ」を確認します
・「国民の視点」で手続を整理します
●国民に安心と信頼を提供するサービスを考える
オンライン申請における適切かつ合理的な本人確認を考え、既存の考え方に縛られない柔軟な発想で、国民が安心できるサービスを実現しましょう。
★参考例:
・申請時の本人確認は、電子署名と登記簿情報の照合で行う
・登記完了の通知は、官の電子署名を付した電子公文書で行う
・希望者には、窓口で紙の「登記完了書(証明書)」等の交付サービスを行う
登記識別情報の
・前回の登記完了後、登記名義人に交付するものであり、登記名義人しか知りえない情報である。したがって、登記識別情報の提供があれば、登記義務者が本人であることを直ちに確認することができる。
という考え方は、やはり無理があるような気がします。
行政が各登記申請に対して整理・管理のために処理番号等を付けるのは良いのですけど。。「登記済証」の発想から抜け出せないと、こういう考えになってしまうのでしょうね。
●業界からの意見を見極める
法務省自身が、サービスや業務の改善について明確なポリシーを持ち、業界からの意見を見極め、調整していきましょう。
・「オンライン化計画」ではない「サービス改善計画」を作ります
・国民に対して、改革の決意を表明し、積極的に情報を公開します
・業界からの意見は、十分に精査します
(必要性・費用対効果・実現可能性・社会影響といった観点から)
士業などの各業界から上がってくる意見は、必ずしも国民や社会の利益を考えたものではありません。そこには、「業務独占の維持」といった既得権益(業界の利益)を維持する意向があるからです。そのため、「使いやすさ」よりも「政治的な効果」が優先されてしまうことがあります。
こうした考えは、業界・組織としては致し方ないことで、自らの利益を守るための正当かつ正常な行為だと思います。
しかし、業界からの意見をそのまま採用してしまうと、
・システムが複雑になり割高となる
・士業にも企業・個人にも使い難くなる
・後の修正が困難となる(法制度の変更など)
といったリスクが大きくなります。
●エンドユーザーの意見を聴く
有識者だけでなく、実際の利用者(エンドユーザー)から意見を聴き、同時に、民間サービスからノウハウを学びましょう。
・業界や組織だけでなく、個人や企業から直接意見を聴きます
・利用者を顧客とする民間サービス提供者から意見を聴きます
・海外等の成功例を「制度・業務改革」の観点から分析します
個人や企業から直接意見を聴くことで、実務家・エンドユーザーとして「使いやすいもの」「使いたいもの」を具体化していきましょう。
民間サービス提供者の例として、司法書士を顧客とするソフトベンダーなどがあります。彼らのノウハウから学ぶべきことは、非常に多いでしょう。
海外の成功例については、電子署名や添付書類の扱いなどの「方法論」だけでなく、どのように制度や業務改革し、サービスの改善を実現していったのかを学びましょう。
色々と述べてきましたが、一番大切なのは、法務省(行政)のポリシーだと思います
仕事のやり方を見直して、国民に喜んでもらえるサービスを実現したい。
その意志がある限り、電子政府・電子申請は、それほど間違った方向には進みません。
もし迷ったら、「これって、本当に便利なの?」「自信を持って勧められるサービスなの?」と立ち止まって考えてみましょう。
より良い電子政府・電子申請サービスは、「急がば回れ」でございます
1.不動産登記特有の本人確認が必要というのが、だれも異論がないというのは、なにが根拠ですか?
2.特有の本人確認の手段として、どういうことを考えているのですか?物証に限り、形式審査に限る必要がありますか?
3.「登記識別情報」という情報にした目的は、オンライン申請のためであることは異論はないですか?
4.オンライン申請の実証実験を行っていますが、その結果の分析はでましたか?
5.その結果、「登記識別情報」の存在がオンライン申請の障害になっていることとなっていませんか?
6.その障害は、「登記識別情報」を郵送で受領したり、通知書で交付したりすることで、取り除かれますか?
7.申請だけオンラインにして、「登記識別情報」の交付事務が残ることで、行政の効率化が図られますか?
オンライン申請50%のそもそものの目的は、行政効率を上げて、小さな政府、歳出削減、公務員純減をするためだったはずです。申請だけ50%にしたところで、行政効率があがらなかったら、オンライン化の目的とはずれます。国民のために簡素で効率のよい利便性の高い、国民に利用しやすい行政を目指すためだったはずです。いま一番取り組むべきことはは、証明事務などの出力系事務の効率をあげることこそが、国民ののために必要なオンライン化なのです。公務員を窓口業務から開放し、資格者を利用すべきところは利用してこそ、登記業務は飛躍的に行政効率をあげるのです。そのことをよくかみ締めていただきたいと思います。決して業界を擁護するものではありません。国民に必要のない資格なら当然に淘汰されていきますから。
最後に、分筆登記に「登記識別情報」を発番するなど、愚の骨頂です。その時点で「登記識別情報」の理論的崩壊なのです。「登記識別情報」を発番すれば問題が解決するというものではないのです。そうすることによる調査士業務との関係が問題になるのです。そこまで考えてから発言されてほしいです。
ほんとうは、本人申請がどこまで可能かで、制度設計すべきだったと思います。
実情は司法書士、土地家屋調査士の関与率が高いですけどね。
識別情報は不動産登記独特の本人確認手段で、オンライン申請でいえば、権利を失う場合や、重要な制限を加えられる場合は、電子署名のみでは足りず、さらにひとつ追加されえるものです。
もっともあらかじめいらない(不通知)、不安になったから失効という制度が入りましたので、識別情報がない場合は、事前通知、公証人の認証、司法書士に依頼する場合は、本人確認情報が必要になると。
電子署名で本人性は十分推定できるじゃないか?という意見も強かったのですが、やはり独自のもので、申請意思を担保すべきとの意見が多く、登記済証に変わるものとして採用されました。
ただ暗証番号とちがって、自分で変更することができません。どっちかといえばIDに近いですね。
マイホームでも、敷地、建物、私道持分と別々に出ます。夫婦共有ならX2になります。
機密性を重視するあまり、変な形になってしまいましたね。
バイオメトリックスになって本人性がより確実になっても、独自のものを求めるかどうかは議論の分かれるところですが、私は、あった方がいい、という考えです。
私は、司法書士ですが、行政書士も兼業です。司法書士の登記申請関与率の高さには異様さを感じています。今でも。
ただ 今のオンラインにはまったく利便性を感じません。電子政府掲示板に書いたような、建物新築ワンストップのようなものがでて来るには、ほど遠い状況ですが、当面実証実験を繰り返して、時間をかけて検証していくしかないと思っております。
不動産のオンライン申請で問題と思うのは、オンライン化によって手続が複雑化していることですね。
その原因を作っているのが、登記識別情報という本人確認手段だと思うのです。もちろん、それだけではありませんが。。
オンライン化にあたっては、事前に、紙申請を含めた手続きについて、可能な限り簡素化・合理化すること。
これが、大原則です。
そもそも、紙申請では、「登記済証」がなくても、申請できる仕組みになっているのですから、「登記済証」を申請意思の担保として取り扱うことは、無理があります。
「登記済証」は「権利書」ではありませんが、「登記済証」があった方が、申請が簡単ですよ。ということですよね。それ以下でも、それ以上でもないと。
申請意思を担保するのは、申請書の内容と署名押印です。これは、行政手続でも商取引でも採用されいている大原則ですよね。明快でわかりやすい。
ですから、オンライン登記申請では、「登記済証」も「登記識別情報」も必要なく、電子署名だけで足りるのです。
思うに、「登記済証が持つ効果への過大な期待と幻想」+「IT関連の知識と誤解」=「登記識別情報」となったのでしょう。
そう。IT関係に強い司法書士さんほど、このトラップに陥りやすいのだと思います。
IT関連の知識(実際は誤解も多い)があるばっかりに、妄想が膨らみ、それが暴走してしまうのです。
周囲の人も、よくわからないもんだから、既存の商慣行に従って、今まで通り仕事ができるのだし、きっと良いのだろう。と考え、誰も止められる人がいない。。
これが、ITに詳しくない司法書士さんや電子申請に興味が無い司法書士さんだと、
「なんでそんな面倒なことやってるの? それなら、紙申請で良いじゃない。」と一蹴されます。こちらの方が、極めて健全で的を得た認識と言えるでしょう。
さて、「申請意思の担保」から離れてみると、「登記済証」が何のために存在するのかが見えてきます。
「登記済証」は、
1)申請(本人確認手続)を簡素化するため
2)権利者に安心感を提供するため
にあるのです。
「登記済証」や「登記識別情報」は、「所有物」や「知識」を使った本人確認の手法ですよね。
「所有物」や「知識」を本人確認の手段として使うのは、それによって本人確認手続を簡素化できるからです。
本当はもっと厳格に本人確認をしなくちゃいけないのだけど、キャッシュカードや社員証を持っている、暗証番号を知っている、といったことで、「おそらく本人だろう」と推定できるのですね。
つまり、「所有物」や「知識」を使って本人確認を行う場合、それによって手続が簡素化されないと、意味が無いのです。
この観点からも、いかに「登記識別情報」が機能していないかわかります。
「登記識別情報」に関する議論を見るにつけ、なんて不毛なことをしているんだろうと思います。。
しっかりしたポリシーや設計思想があれば、「登記識別情報」なんて発想は出てこないですし、そのために税金や時間を費やすこともなかったでしょうから。
[申請意思を担保するのは、申請書の内容と署名押印です。これは、行政手続でも商取引でも採用されいている大原則ですよね。明快でわかりやすい。]
新法になって売買契約や贈与証書などの登記原因証明情報が必須化されました。これに当事者が署名押印したり、電子署名すれば十分申請意思は担保されるのです。
ところがオンラインでは登記義務者の電子署名を要求しながら、書面では認め印、三文判でもいい。
結局 登記原因証明情報については細かく規定せず運用でいこうということになりました。
識別情報はオンラインで自動化を可能にするためだったのが、登記原因証明情報必須化で自動化が困難になった。
わざわざ印刷してチェックします。
どーもよくわからない。
でも 新法になっても大量に仕事をこなす事務所は、原因証明情報をより定型化し、識別情報通知書があればシール剥いでコピーを使い、早い安いを売り物にする。
いつも、コメントありがとうございます。
> 新法になって売買契約や贈与証書などの登記原因証明情報が必須化されました。これに当事者が署名押印したり、電子署名すれば十分申請意思は担保されるのです。
はい、これはわかりやすくて良いですね。
> ところがオンラインでは登記義務者の電子署名を要求しながら、書面では認め印、三文判でもいい。
そうですよね。こういうアイマイなところが、わかりにくくて良くありません。
「登記原因」は自己申告なわけですから、その申告内容について「間違いありません」と言う意味で、署名押印する。
で、不動産登記のような高額な財産が関係する手続きは、押印について実印を使いなさいと。
こうであれば、わかりやすいです。
しかし、手続きの簡素化を目指すためには、申請書本体に「登記の原因」欄を設けて、選択肢を提供し、申請者はチェックするだけで良い、といった工夫が必要でしょうね。
http://e-public.nttdata.co.jp/f/repo/362_a0603/a0603.asp
もちろん、証明事務はだんぜん進んじゃっています。そういうインセンティブを早く導入して電子化に慣れさせて、登記申請へと誘導していったわけです。もっとも中央集権国家だからできたことなのでしょうが。
コメントありがとうございます。
・手続の絞込み
・記入方式の簡素化
この2点は、オンライン化に必須ですね。
ご指摘のように、資格者が対応するのは
・特殊なケースの取り扱い
・中立的な立場からの登記原因(売買契約等)のチェック
となるのが本来だと思います。ルーチンワークは、司法書士以外でもできるようにすると。
一般の人が不動産を購入する場合、専門家に依頼してチェックしてもらえる選択肢は、やはり必要と思います。
証明事務については、サービスという視点から、根本的な見直しが必要ですね。