Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

つぶやき電子政府情報(2013年3月6日):デジタル世代にとって今の電子政府サービスは苦痛だと思う

2013年03月06日 | 電子政府

行政書士・社会保険労務士の方と久しぶりに飲んだ際に、「10年経っても電子申請は進まないねえ」と話す中で、絶賛されていたのが法務省の「かんたん証明書請求」サービスでした。電子署名の付与やファイルの添付が不要で、電子公文書の発行も無し。登記事項証明書の交付をオンラインで請求して郵送されるサービスです。これぐらいが国民の許容範囲であり、これ以上複雑で難しくなると利用増加も厳しいと理解した方が良いでしょう。

その時にちらっと話に出たのが、公益法人information 国・都道府県公式公益法人行政総合情報サイトにある電子申請サービス。案内資料(PDF)によると、平成22年7月30日現在、新しい公益法人制度の申請に占める電子申請の割合は97.9%とのこと。こちらも電子署名や電子証明書は一切不要となっています。

もう一つ、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」サービスも紹介しておきましょう。オンラインで年金加入記録の照会、年金見込額の試算などができるサービスですが、2013年2月26日、ユーザID発行数が150万件を突破したそうです。年金記録問題が発覚した社会保険庁時代に「年金個人情報提供サービス」が開始されて200万以上の利用者がありましたが、日本年金機構で新サービスとして生まれ変わってからも着実に利用者を増やしています。もちろん、「ねんきんネット」でも電子署名や電子証明書は不要です。
 
住基カードの普及が伸び悩む中で(これに対して住基ネット自体は年間5億件近い利用があります)、マイナンバー制度で検討されるマイ・ポータルでは、「個人番号カード」というICカードを使ってパソコンから利用することを想定しているようです。ICカードの利用には、ICカードリーダを別途購入する必要があります。「住基カード+公的個人認証の電子証明書」の組み合わせは明らかに失敗だったのに、どうして懲りもせず同じようなことをするのだろうと不思議に思うかもしれませんが、行政には失敗を認めない(無謬性)習慣があるのに加えて、住基カードにかけてきた費用や関係者の苦労を考えると、埋没費用(サンクコスト)として処理する(つまりは、不要なものを捨てる)ことができないのです。ですから、この問題は政治的な決断が無いと解決できません。
 
そんなことを思っていたら、Joe's Laboに「八重の桜」がパッとしないわけというエントリーがありました。大河ドラマを見るのがしんどいと感じたことから、「どうも多くの人のエンタメ耐久力は一時間もたなくなっているのではないか。」と指摘されています。電子政府サービスを考える際に、私もこの傾向が気になっていました。電子申請や電子申告などのオンライン行政サービスが始まった2003年頃は、まだ民間のオンラインサービスも未熟で、国や自治体のオンラインサービスに対する期待値も低かったため、利用者の忍耐力というか許容度も高かった。しかし、インターネットが広く普及してブロードバンドが当たり前になり、民間のオンラインサービスが急速に進化を遂げたことで、人々のオンラインサービスに対する期待値も高くなってしまった。その一方で、オンライン行政サービスが改善するスピードはあまりにも遅く、以前だったら大目に見てくれていたような使いにくさや面倒さも許してもらえないようになってきたと感じ始めたのが2006年頃です。
 
現在、成熟・洗練されたモバイル機器やオンラインサービスに慣れ親しんだ世代にとっては、ほとんどの電子政府サービスは苦痛でしかありません。自分でわざわざ住基カードやICカードリーダを揃えて電子申告してくれるのは、私のように40代以上のファミコンでドラクエを楽しんだような世代までなのではないかと思います。そして、40代以上のおじさんが中心となって電子政府・電子自治体サービスを考えている限り、こうした状況が変わることも期待できないでしょう。


『医療ICTシンポジウム ―地域医療情報連携への期待と今後に向けた展望―』の開催
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000062.html
総務省による地域医療情報連携基盤の構築に向けたプロジェクト成果を紹介し、地域医療情報連携の課題と展望等について討論すると。平成25年3月14日(木)開催。参加費無料ですが、事前の申し込みが必要です。
http://jp.fujitsu.com/group/fri/events/other/health-ict2012.html

内閣官房 国会提出法案(第183回 通常国会)
http://www.cas.go.jp/jp/houan/183.html
内閣法等の一部を改正する法律案(政府CIO室)、番号法案および整備法(社会保障改革担当室)など。マイナンバー法案に大きな修正はありませんが、中身については引き続き議論がありそうです。若干の修正項目として、通知カード、個人番号カード、マイ・ポータル、特定個人情報保護委員会、個人番号の利用範囲の拡大など。5月頃の成立を目指すようです。政府CIOの権限は物足りないですが、最初はこんなものでしょうか。
関連>>政府CIO関連法案を国会提出、「内閣情報通信政策監」設置へ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130301/460255/

平成25年度予算
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2013/index.htm#02
国庫債務負担行為には、情報システム関係の費用が多く含まれています。
関連>>予算書情報・決算書情報検索
http://www.bb.mof.go.jp/YDS/search/YDSG010
例えば、年度を指定して「番号制度」で検索すると、マイナンバー関連の予算が出てきます。

国の会計基準では、老朽化した首都高速を再建できない
国会主導で「公会計基準」づくりに動け
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130123/242687/?P=1
電子政府とも関係が深い会計基準の問題。日本では国のバランスシートを作っていても、実際の予算決算とはまったく連動していないと。インフラ老朽化問題をきっかけとして、公会計の導入と米国GAOのような独立した監査機関が必要です。

混迷した韓国の政治状況を一変させたネットの威力
http://enterprisezine.jp/iti/detail/3362
韓国が電子政府で成功した要因としてよく挙げられるのがアジア通貨危機(IMF管理)ですが、それと同じぐらいに重要なのが、最近まで軍事独裁政権下だったということ。独裁政権には戻りたくないという強い思いが、電子政府による透明性向上や国民による積極的な政治参加の強い動機になっているのだと理解しています。

元歌舞伎町のすご腕スカウトが挑む新しい行政
33歳で初当選、異能の市長が地方を変える
http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20130226/244224/?mlp&rt=nocnt
市政の基本は対話の積み重ねと。市民を巻き込んだ改革が、全国色んなところで起こると面白くなってきますね。

全国に広がり始めた「私の税金はどこへいった」
http://bit.ly/W2nAuV
横浜市版につづき、千葉市版が開始。福岡市でも市民の手で開発が始まったと。この動きがどこまで行けるか興味深い。

第2回一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002w4wd.html
前回の宿題事項、新たなルールなどを議論。指定第2類医薬品、偽造医薬品問題の現状と対策、各委員からの資料など。対面販売を重視する業界からの意見もありますが、オンライン販売業界からの資料に比べるとイマイチかな。

50 Most Innovative Countries
http://www.bloomberg.com/slideshow/2013-02-01/50-most-innovative-countries.html
200以上の国・地域を対象にしたトップ50。R&D集約度、生産性、ハイテク密度、研究者の集中、製造能力、教育レベル、特許活動の7つの要因で測定したと。革新的な国として米国と並んで挙げられるのは、今や韓国のようです。エストニア31位、中国29位、ニュージーランド28位、オーストラリア22位、スイス21位、英国18位、カナダ17位、ロシア14位、オランダ11位、フランス10位、デンマーク9位、オーストリア8位、シンガポール7位、日本6位、スウェーデン5位、フィンランド4位、ドイツ3位、韓国2位、米国1位など。個別指数の順位で見ると、日本は生産性や教育に課題があると言えそうです。

ICT超高齢社会構想会議ワーキンググループ(第3回)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/ict_cho-koureika/02ryutsu02_03000100.html
構成員によるプレゼンテーションと意見交換。超高齢化社会に向けた「働き方」の改革、日本最大級クラウドソーシングサービス、超高齢社会におけるICT活用の方向性、超高齢社会のくらし方、シニアが地域の“志事”で輝く、シニア就労とICTの未来など。ICTを上手に活用すれば、高齢者に限らず女性や若者の就労や社会参加の機会も増えますね。

テーマ別会合(産業競争力会議)の担当民間議員等の決定(PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/20130305kettei.pdf
IT担当の主査に楽天の三木谷社長が決定。ちょっと期待できそう。
関連>>産業競争力会議 議員名簿(PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai1/siryou2.pdf
世界一を目指していきたい~成長戦略の策定に向けて
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/seicho_senryaku2013.html

平成24年度厚生労働省補正予算案の概要
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/12hosei/
追加額の計3兆2,198億円のうち、2兆5,164億円は基礎年金国庫負担割合2分の1の維持費用として。

GMOグローバルサイン 候補者、国会議員および政党の認証サービスを開発、全政党へ寄付
https://jp.globalsign.com/information/news_press/2013/02/458.html
ネット上での公的な活動が増えて、さらにマイナンバー制度も導入されると、「なりすまし防止ビジネス」の市場規模も拡大することでしょう。

暗号化の“皮”を重ねて匿名性を確保する
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130218/456767/?ST=security&P=1
インターネットにおける匿名性の確保は重要ですが、たまたま使われたツールが悪者にされるのは避けたいところ。解説にあるように「ハッキングツールではない」ことを理解したい。

行政改革推進会議(第1回)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/dai1/gijisidai.html
課題として、無駄の撲滅(行政事業レビュー、調達改善)、特別会計改革、独立行政法人改革など。この会議には、早い段階で政府CIOに参加して欲しい。電子政府は行政改革の話ですが、特別会計制度はかなり手ごわい相手です。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/dai1/siryou04sankou.pdf

第2回 産業競争力会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai2/siryou.html
省庁や議員からの提出資料がたくさんあります。産業の新陳代謝の促進、人材力強化・雇用制度改革、立地競争力の強化、クリーン・経済的なエネルギー需給実現、健康長寿社会の実現、農業輸出拡大・競争力強化、科学技術イノベーション・ITの強化について、テーマ別会合を行うと。
関連>>山本情報通信技術(IT)政策担当大臣提出資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai2/siryou8.pdf
行政機能や政策効果の向上を目指した「真の行政改革」への貢献(利用者視点に立った行政のデザインとガバナンスの強化へ)として、利用者にとって使い勝手の良い電子行政の実現、番号制度に係る情報システムの構築に併せた業務改革の推進、サイバー攻撃・災害等に強い政府情報システム基盤の構築など

需要高まる公共ビッグデータ
韓国の情報化振興院が活用ガイドを公表
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130221/457783/?mle
情報化振興院では、この後にデータ分析に関するガイドも公表しており、ビッグデータ対応の政府基盤が整備されつつあります。

JIPDEC、行政書士が確認した企業情報DB「ROBINS」を開始
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130218/456945/?ST=govtech
行政書士など資格者が信ぴょう性を確認した情報だけを掲載する企業情報データベース。将来的には、企業に割り当てられた様々な企業コードの紐付けが可能なDBサービスとする考えがあると。「標準企業コード」「プライバシーマーク指定審査機関コード」「EDINETコード」の約3万2000社のコード情報が確認できるそうです。

米国のID詐欺、2012年は被害者数・被害額ともに過去3年で最多
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20130222/458103/?bpnet
被害者1200万人以上の被害総額は約210億ドルと。データ漏えいの通知を受け取った4人のうち1人は、流出したデータがもとでID詐欺の被害に遭ったと。社会保障番号が流出した場合、ID詐欺に遭う確率が平均より5倍高くなるとも。予防、検出、事故後の対応に関するヒントも提示。

電子行政における外字問題の解決に向けて
―人間とコンピュータの関係から外字問題を考える―
http://jp.fujitsu.com/group/fri/report/research/2013/report-400.html
行政手続きで使用する漢字(氏名や地名など)をJIS第1水準とJIS第2水準に制限し、それ以外の漢字の使用を法律で禁止すること等を提案。個人的には、「外字をこれ以上増やさないだけでなく、期限を決めて廃止する」のが良いと考えています。
関連>>外字実態調査が示す電子政府の課題、司令塔不在では役所で使う漢字さえ統一できない
http://blog.goo.ne.jp/egovblog/e/47ee0e0734092e9a569bee3557d6c143


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