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松島稲荷

2015-07-18 | まち歩き

松島稲荷(現松島神社)は、日本橋人形町に在る神社です。日本橋七福神の一社で、やはり日本橋七福神の一社である水天宮からは目と鼻の先に在ります[1]。水天宮は安産祈願の神社として広く知られ、戌の日には特に多くの参拝客で賑わう神社ですが、この地に建立されたのは、明治五年(1872年)のことで、歴史的には割合に最近になって建てられた神社と言えます。一方の松島神社は、ビルの1階に社殿を構え、見掛けこそ都会の神社の様相を呈していますが、口伝では鎌倉時代の元亨(1321年)以前に創立されたと推定される古い神社です。松島の名は、かつてこの辺りが入り海であった頃に、松の樹が鬱蒼と茂る小島が在り、そこに諸神を勧進して崇拝したことから、人々が松島稲荷大明神と唱えるようになったと伝えられています。

松島稲荷は、時代小説の中では、「北町奉行所朽木組 隠れ蓑」(野口卓著、新潮社)収録の「門前捕り」の中に登場しています。主人公の定町廻り同心・朽木勘三郎と組む、岡っ引きの伸六は、他の岡っ引きに先んじて、事件が起こった旗本屋敷で証言を取り付けることに成功します。後日、お礼の品の酒を携えて再びその旗本屋敷を訪ねると、遅れを取った岡っ引きら十人近くが、俺達にも話を聞かせろと門番に詰め寄る騒ぎに。見かねた伸六は、静かに話せる所で、「知ってることはなにもかも話すことにしやしょう」と、岡っ引きらを松島稲荷に連れて行きます。

 

[1] 水天宮は改築工事中で、現在は明治座の隣、日本橋浜町に仮宮が在ります。

 

松島稲荷(松島神社) 中央区日本橋人形町2-15-2
東京メトロ半蔵門線水天宮駅から約150m 徒歩約2分

 


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