江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

蔵前八幡

2011-06-25 | まち歩き

蔵前八幡は地下鉄蔵前駅の近くに在る蔵前神社のことです。江戸時代の正式な社号は「岩清水八幡宮」ですが、一般には「蔵前八幡」と唱えられていました。古地図にも正式な社号では無く、八幡宮[1]や八マン[2]と記されています。

この蔵前八幡は相撲とは大変関係の深い神社で、江戸時代には境内で勧進相撲が行われ、両国の回向院、深川の富岡八幡宮、芝の神明宮といった寺社と共に相撲興行開催の拠点の一つでした。勧進相撲というのは、神社仏閣の再興や造営、道、橋の普請等の経費を集める名目で行われる幕府許可の相撲興行のことですが、その内にこれらのための経費集めという目的が無くなっても名称だけは残ったようです。この勧進相撲が時代を経て今の大相撲へと続いています。そんな縁もあり、蔵前八幡の玉垣には力士の名前が並んでいます。


蔵前八幡は、藤沢周平著「幻の女」(風雪の檻 獄医立花登手控え(二)に収録、講談社)の中で、“蔵前の八幡宮”として登場しています。


蔵前八幡が登場するその他の作品

  • 池波正太郎著「浅草・鳥越橋」(鬼平犯科帳(九)に収録、文藝春秋)(「八幡さま」として登場)

[1]東都浅草絵図、安政四年(1857年)

[2]明和江戸図、明和八年(1771年)/古地図史料出版(株)復刻地図


蔵前神社 東京都台東区蔵前3-14-11

都営浅草線 蔵前駅から約150m 徒歩約2分

都営大江戸線 蔵前駅から約120m 徒歩約2分


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三光稲荷

2011-06-18 | まち歩き

人形町交差点の西北、現在の人形町三丁目と堀留町の八千坪あまりの土地は、江戸時代には、歌舞伎、浄瑠璃芝居、あやつり人形、手品、大道芸等を見せる芝居小屋が立ち並び、江戸随一の歓楽街でした。この地には中村座という芝居小屋が在りましたが、大阪の歌舞伎役者、関三十郎が中村座で演技中に、場内に霊光のような閃光が走り、その光は三十郎の体から発せられたように見えたため、観客は大賞賛し、三十郎は名声を不動のものにしました。これは神の御加護によるものと考えた三十郎は、三十郎の三と光の二文字から名付けたお稲荷様を祀り、町内の氏神として崇敬しました。これが三光稲荷の起源です。

三光稲荷は猫族の守護神としても知られ、猫がいなくなった時に願をかけると猫を見付けることが出来ると言われています。


風野真知雄著「耳袋秘帖人形町夕暮殺人事件」(だいわ文庫)の中で、芝居茶屋の娘、おかつが殺された場所が、ここ三光稲荷です。


三光稲荷 東京都中央区日本橋堀留町2-1-13

東京メトロ日比谷線・都営浅草線人形町駅から約210m 徒歩約3分


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新シ橋

2011-06-11 | まち歩き

新シ橋(あたらしばし)は神田川に架かる橋で、現在の美倉橋のことです。江戸時代の地図には、新橋、新シ橋、アタラシバシ等と表記されていますが、明治に入り美倉橋と改称されました。一説には、この地に三つの倉が在ったことから三倉と呼ばれるようになり、それが美倉に転じたとの説があり、他には町名から名付けられたとの説もあります。現在、橋の南詰広場には倉を模した公衆トイレが建っています。


新シ橋は、藤沢周平著「夜鷹斬り」(用心棒日月抄に収録、新潮社)の中で、青江又八郎が橋本町の吉蔵の店や神田川南岸の柳原土手から寿松院裏の住まいへ帰る途中に在る橋として登場しています。また、池波正太郎著「堀部安兵衛(上)(下)」(新潮社)の中では、安兵衛が江戸での人生で何度も関わりを持つことになる船宿「島や」が在る橋(作品中の表記は新橋)として登場しています。


新シ橋が登場するその他の作品

  • 藤沢周平著「亡霊」(よろずや平四郎活人剣に収録、文藝春秋)

新シ橋(美倉橋)南詰 東京都千代田区東神田2-3-1

都営新宿線 岩本町駅から約500m 徒歩約7分

JR・都営浅草線 浅草橋駅から約700m 徒歩約9分


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神田明神

2011-06-04 | まち歩き

天平二年(730年)の創建で、東京の神社の中でも最も古い神社の一つです。創建当時は東京都千代田区大手町の平将門首塚(三井物産の東隣に在ります)周辺に鎮座しており、延慶二年(1309年)にこの平将門公を御祭神として御祀りしました。東京に住んでいる人でも、神田明神の神様のお一人が平将門公であることを知らない人は案外多いので、歴史の教科書で習った偉人が意外に近くで関わりがあることに驚かれる方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。


一方、神田明神といえば、銭形平次(野村胡堂原作)を思い浮かべる人は多いと思います。そう、銭を投げて悪漢を懲らしめる岡っ引きの平次です。投げた銭は回収しているのだろうか? と子供の頃に思った人も、今ではそんな野暮なことは言わない良い大人に成長しているはず。そんな昭和を代表する時代劇のヒーローは、神田明神下に住んでいました。神田明神の境内には、銭形平次を記念した碑が建てられています。


神田明神が登場するその他の作品

  • 池波正太郎著「三冬の乳房」(剣客商売(二)に収録、新潮社)
  • 池波正太郎著「天魔」「約束金二十両」「突発」(険悪商売(四)に収録、新潮社)
  • 藤沢周平著「凶刃 用心棒日月抄」(新潮社)
  • 川田弥一郎著「井戸の底」「襲撃の刃」(江戸の検屍官に収録、祥伝社)

神田明神 東京都千代田区外神田2-16-2

JR御茶ノ水駅から約550m 徒歩約7分

東京メトロ丸の内線 御茶ノ水駅から約550m 徒歩約7分


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