江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

銀杏岡八幡

2011-02-26 | まち歩き

浅草橋駅のすぐ近くにある神社です。はじまりは康平五年(1062年)と伝えられており、江戸時代の初期には福井藩松平家の邸内社として祀られていましたが、この地が町屋となってからは、地域の産土神として崇拝されて来ました。江戸切絵図(地域毎に分割された古地図)には福井町(フクイ丁)の中に「杏八マン」と描かれています[1]

藤沢周平著「囮」[2](暗殺の年輪に収録、文藝春秋)の中で、主人公の甲吉が、人を殺めたやくざ者の情婦を見張った場所がこの銀杏岡八幡です。浅草橋駅周辺は久月や吉徳をはじめとする人形屋が立ち並び、桃の節句を前にした時期はお雛様の売り出しで華やぎますが、「囮」の中でもその美しい情景が書かれています。

また、銀杏岡八幡は、池波正太郎著「嘘の皮」(剣客商売(三)に収録、新潮社)の中でも銀杏八幡として登場します。


[1] 東都浅草絵図、安政四年(1857年)

[2] 第六十六回直木賞候補作品


銀杏岡八幡神社 東京都台東区浅草橋1-29-11

JR・都営浅草線 浅草橋駅から約130m 徒歩約2分


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三ツ目橋

2011-02-19 | まち歩き

竪川が開削された当時、隅田川から数えて三番目の橋だったので三ツ目橋(現在の呼称は三之橋)と名付けられました。

この橋の近くの林町五丁目(現在の墨田区立川3-14付近)には、かつて堀部安兵衛の借宅が在り、長江長左衛門の名で剣術指南をしながら吉良邸討入りの機会をうかがっていました。

三ツ目橋は、用心棒日月抄(藤沢周平著、新潮社)の「代稽古」の章で登場し、主人公の青江又八郎は奇妙な縁から、長江長左衛門(堀部安兵衛)の道場で代稽古を務めることになります。


三ツ目橋(三ノ橋)が登場するその他の作品

  • 藤沢周平著「黒い繩」(暗殺の年輪に収録、文藝春秋)
  • 藤沢周平著「善人長屋」(春秋の檻 獄医立花登手控え(一)に収録、講談社)
  • 藤沢周平著「白い骨」(愛憎の檻 獄医立花登手控え(三)に収録、講談社)

三ツ目橋南詰 東京都墨田区立川3-18-2

都営新宿線 菊川駅から約450m 徒歩約6分


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二ツ目橋

2011-02-12 | まち歩き

本所・竪川に架かる橋で、隅田川から数えて二番目の橋なので、二ツ目橋(現在の呼称は二之橋)。現在は間に二つの橋が加わって、隅田川から四番目の橋です。

二ツ目橋は鬼平犯科帳シリーズ(池波正太郎著、文藝春秋)で度々登場し、特にこの橋の北詰に在ったと推定される軍鶏鍋屋「五鉄」は長谷川平蔵行きつけの店として、「本所・桜屋敷」(鬼平犯科帳(一)に収録)以来、同シリーズには欠かせない存在となっています。

一方、その「五鉄」ですが、作品の枠を超えて、剣客商売シリーズ(池波正太郎著、新潮社)でも、「三冬の乳房」(剣客商売(二)に収録)、長編「浮沈」(剣客商売(十六))、「ないしょないしょ」(剣客商売番外編)に登場しています。

残念ながら、長谷川平蔵と秋山小兵衛が競演する作品は無く、「五鉄」で鬼平と秋山小兵衛が偶然出会うことはありませんでした。しかし、平蔵は小兵衛のことを知っていました。老中・田沼主殿頭意次の下屋敷に於いて催された剣の試合で、勝ち上がった平蔵の立ち合いの審判を務めたのが秋山小兵衛だったからです(「寺尾の治兵衛」(鬼平犯科帳(二十)に収録))。平蔵は小兵衛のことを「当代、まれに見る名人であった」と回想し、「いまも生きておられたなら、ぜひとも一度、お目にかかりたいものだが・・・」と口にします。


二ツ目橋(二ノ橋、二之橋)が登場するその他の作品

  • 藤沢周平著「白い骨」、「片割れ」、「影法師」(いずれも愛憎の檻 獄医立花登手控え(三)に収録、講談社)
  • 藤沢周平著「鬼ごっこ」(花のあとに収録、文藝春秋)
  • 宮部みゆき著「遺恨の桜」(初ものがたりに収録、新潮社)

二ツ目橋北詰 東京都墨田区両国4-1-12

都営新宿線・大江戸線 森下駅から約500m 徒歩約7分

都営大江戸線 両国駅から約500m 徒歩約7分


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一ツ目弁天社

2011-02-05 | まち歩き

鍼灸・按摩治療の名人として知られ、視覚障害者のための教育施設を世界で初めて開設したとされる杉山和一検校が、五代将軍徳川綱吉から拝領した本所一ツ目の土地に江ノ島弁財天を分社して祀らせた神社で、一ツ目橋の南詰に在ります。古地図には「弁才天」や「杦山弁天」とあり、現在は江島杉山神社と称されています。

藤沢周平著「夜鷹斬り」(用心棒日月抄に収録、新潮社)で“一ツ目の弁天さま”として登場するのがこの神社です。池波正太郎著「寒月六間堀」(鬼平犯科帳(七)に収録、文藝春秋)、「むかしなじみ」(鬼平犯科帳(十)に収録、文藝春秋)にも登場しています。


一ツ目弁天社が登場するその他の作品

  • 藤沢周平著「消えた女」(新潮社)

江島杉山神社 東京都墨田区千歳1-8-2

JR両国駅から約600m 徒歩約8分

都営新宿線・大江戸線 森下駅から約900m 徒歩約11分


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