浅草橋駅のすぐ近くにある神社です。はじまりは康平五年(1062年)と伝えられており、江戸時代の初期には福井藩松平家の邸内社として祀られていましたが、この地が町屋となってからは、地域の産土神として崇拝されて来ました。江戸切絵図(地域毎に分割された古地図)には福井町(フクイ丁)の中に「杏八マン」と描かれています[1]。
藤沢周平著「囮」[2](暗殺の年輪に収録、文藝春秋)の中で、主人公の甲吉が、人を殺めたやくざ者の情婦を見張った場所がこの銀杏岡八幡です。浅草橋駅周辺は久月や吉徳をはじめとする人形屋が立ち並び、桃の節句を前にした時期はお雛様の売り出しで華やぎますが、「囮」の中でもその美しい情景が書かれています。
また、銀杏岡八幡は、池波正太郎著「嘘の皮」(剣客商売(三)に収録、新潮社)の中でも銀杏八幡として登場します。
[1] 東都浅草絵図、安政四年(1857年)
[2] 第六十六回直木賞候補作品
銀杏岡八幡神社 東京都台東区浅草橋1-29-11
JR・都営浅草線 浅草橋駅から約130m 徒歩約2分