江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

如意輪寺

2015-02-21 | まち歩き

如意輪寺は墨田区吾妻橋に在る天台宗のお寺です。慈覚大師が嘉祥二年(849年)に聖徳太子自作の太子像を安置したことが始まりと伝えられ、東京でもかなりの古刹です。本堂は小ぢんまりとしていますが、それが隅田川を挟んで対岸に在る橋場不動院のようでもあり、愛らしい感じがするお寺です。浅草方面からだと、隅田川に架かる吾妻橋を渡り、東京スカイツリーに向かう道を、ちょっとだけ寄り道したところに在りますから、是非訪ねてみて欲しいと思います。

如意輪寺は、鬼平犯科帳(池波正太郎著、文藝春秋)第四巻の「敵」の中で、門前の花屋が盗人宿という設定で登場しています。この盗人宿を隠れ家としている、盗人の頭・大滝の五郎蔵は、最後には火付盗賊改方長官である長谷川平蔵に捕らえられることになるのですが、その後、平蔵の密偵として鬼平犯科帳シリーズを通じて活躍することになります。そういうことでは、「敵」は鬼平犯科帳シリーズの中でも、記念碑的な作品だと言えるでしょう。

 

如意輪寺 墨田区吾妻橋1-22-14
都営浅草線浅草駅から約550m 徒歩約7分
都営浅草線本所吾妻橋から約400m 徒歩約5分

 

 


六義園

2015-02-07 | まち歩き

悪法・「生類憐みの令」で知られる徳川第5代将軍・徳川綱吉。初代・徳川家康や第8代・徳川吉宗のヒーロー像とは対照的に、歴代の徳川将軍の中では最も将軍に相応しくない将軍として誰もが思い、またドラマや小説では、バカ殿振りが強調される人物です。従って、その寵愛を受け、側近中の側近でもあった柳沢保明(後に吉保に改名)もまた、ドラマや小説では、保身や立身出世といった私欲に走る悪者として描かれることが多いように思われます。しかし、角度を変えて見れば、徳川吉宗は庶民にまで倹約を強いたために経済や文化を停滞させた人で、徳川綱吉こそが艶やかな江戸文化を開花させた功労者という見方も出来るのだそうです。ですから、柳沢保明もまた、その一端を担ったという言い方も出来るのかもしれません。実際、柳沢保明という人は、文学や和歌への造詣が深い人だったそうです。

六義園(りくぎえん)は、柳沢保明が徳川綱吉から拝領した駒込の地に、自らの下屋敷として造営した庭園です。その名は、古今和歌集の選者の一人である紀貫之が、中国の古い漢詩の分類を転用して和歌の6種の風体とした六義にちなんでおり、柳沢保明は、ここに古今和歌集の世界を表そうとしたのだそうです。関東大震災や戦災の被害にもほとんどあっておらず、江戸の大名庭園を今に伝える貴重な庭園です。

時代小説の中では、六義園は、葉室麟著「花や散るらん」の中で、柳沢保明が吉良上野介と会談したり、播州赤穂藩主浅野長矩が柳沢保明の側室・町子に呼び出されたりする場所として印象的に登場しています。六義園は一級の庭園であり、このブログで取り上げる必要がないほど有名な存在ですが、時代小説の中では頻繁に登場する存在ではないため、ここで紹介することにしました。

 

六義園 東京都文京区本駒込6
JR山手線駒込駅から約550m 徒歩約7分
都営三田線千石駅から約800m 徒歩約10分