江戸観光案内

古地図を片手に江戸の痕跡を見つけてみませんか?

浄瑠璃坂

2014-09-27 | まち歩き

浄瑠璃坂は市谷の閑静な住宅街に在る、比較的緩やかな坂です。坂名の由来は、坂上に操り人形浄瑠璃の芝居小屋が在ったとする説、かつて近くに在った寺の薬師如来が東方浄瑠璃国の主であったからとする説、坂が六段になっており、六段で完結する浄瑠璃にかけたとする説等、諸説在ります。


巷では、浅田次郎さん原作で、中井貴一さんと阿部寛さん出演の映画「柘榴坂の仇討」が目下上映中ですが、ここ浄瑠璃坂は、寛文十二年(1672年)に実際に仇討が行われた地で、その仇討は「浄瑠璃坂の仇討」として広く知られています。「浄瑠璃坂の仇討」は40名以上が徒党を組んだ討ち入りでした。有名な「元禄赤穂事件(いわゆる忠臣蔵)」が起こるのは30年後のことで、赤穂浪士が参考にしたとも言われています。

ちなみに柘榴坂はというと、こちらも実在する坂で、品川駅西口を出て、第一京浜を渡ってすぐのところに在ります。


鬼平犯科帳(二)「女掏摸お富」(池波正太郎著、文藝春秋)に登場する、元掏摸のお富は、今は足を洗い、笠屋の女房として暮らしています。しかし、過去を知る男にゆすられ、止むに止まれず盗みに手を染めます。掏摸を働いたあと、お富は後悔にさいなまれながら浄瑠璃坂(作品中は「浄るり坂」)を上ります。


浄瑠璃坂 東京都新宿区市谷砂土原町1丁目1

東京メトロ南北線市ヶ谷駅から約300m 徒歩約4分


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市ヶ谷八幡

2014-09-13 | まち歩き

市ヶ谷八幡(現市谷亀岡八幡宮)は、JR総武線市ヶ谷駅から外濠を渡ってすぐ、左内坂の西側の高台に建つ神社です。太田道灌が文明十一年(1479年)に江戸城西方の守護として、鎌倉の鶴岡八幡宮の分霊を勧請したのが始まりで、鶴に対して亀岡八幡宮と称しました。創建当時は市ヶ谷御門内に在りましたが、寛永年間(1624年~44年)に外濠の外の現在地に遷座しました。

 

亀岡八幡宮は天正年間(1573年~92年)に戦火で破壊され、荒廃していきますが、後に三代将軍・徳川家光やその側室・桂昌院(五代将軍・徳川綱吉の生母)等の信仰を得て再興されます。境内には茶店や露天商が立ち並び、大いに賑わったそうです。江戸名所図会や古地図[1]には市ヶ谷八幡宮の名で記されています。

 

市ヶ谷八幡は、鬼平犯科帳(二)「女掏摸お富」(池波正太郎著、文藝春秋)の中に登場。元掏摸のお富は、今は足を洗い、笠屋の女房として暮らしています。しかし、過去を知る男にゆすられ、止むを得ず盗みに手を染めます。長谷川平蔵は、市中巡回の途中、市ヶ谷八幡の境内で、お富を見掛けます。

 

市ヶ谷八幡が登場するその他の作品

  • 鬼平犯科帳(四)「おみね徳次郎」、池波正太郎著、文藝春秋
  • 鬼平犯科帳(六)「狐火」、池波正太郎著、文藝春秋
  • 鬼平犯科帳(七)「泥鰌の和助始末」、池波正太郎著、文藝春秋
  • 鬼平犯科帳(二十一)「春の淡雪」、池波正太郎著、文藝春秋
  • 剣客商売(一)「井関道場・四天王」、池波正太郎著、新潮社
  • 剣客商売(九)「或る日の小兵衛」、池波正太郎著、新潮社
  • 剣客商売(十三)「剣士変貌」、池波正太郎著、新潮社

 

[1] 市ヶ谷牛込絵図、安政四年(1857年)/人文社復刻地図

 

市谷亀岡八幡宮 東京都新宿区市谷八幡町15

JR総武線市ヶ谷駅から約300m 徒歩約4分

 

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