橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

家探しと谷根千バブル?

2016-05-06 03:35:09 | 谷根千・上野浅草・下町
今住んでいるボロマンションが取り壊されることになり、今、次の住処を探している。
家探しをしているといろんなことに出会う。

先日、谷根千の某所を歩いていると、
「店舗付き住居。詳細は隣の○○まで」
という張り紙が目に付いた。1階に土間の店舗2階住居の物件。
先日、オープンルームになりそうな倉庫物件に出会って、火鉢のある部屋のディスプレイをして火鉢クラブの拠点にしたいというアイディアが膨らんだが、結局おじゃんになったという出来事があった。以来、その思いはくすぶり、こうした物件には反応してしまうのだ。本気で借りる気は無かったが、もし思ったよりも安かったら・・・という思いもあって、「隣の○○さん」のピンポンを押した。

人気のエリアだが、裏通りの古い小さなアパートを改造した小さな間口半間ほどの物件。2階の住居部分の広さはわからない。張り紙には広さや設備、家賃など何も書かれてなかったので、聞いてみることにしたのだ。

私「すいません、張り紙を見たんですが、
この物件、広さとお家賃はどのくらいのものなんでしょうか?」
大家「何の商売やりたいの?」
私「商売というか、1階はギャラリーみたいなものを・・・」
大家「予算は?」
私「お家賃はおいくらくらいなんでしょう?」
大家「予算のない人に説明しても時間の無駄でしょう」
私「・・・」
大家「どのくらいだせるの?」
全然出せないけど・・・家賃知りたいから、適当に言ってみることにした。このまえ千駄木の30平米くらいの店舗が13万くらいで出てたのを見かけたので、15平米くらいとおぼしきこの物件なら、上の階と込みで考えて・・・
私「例えば、20万くらいならどうなんでしょう?」
大家「話にならないわよ。住居は3部屋もあるんだから、そんなんで借りられるわけないでしょ。予算のない人に説明しても時間が無駄なのよ。」
3部屋もあるのか!外から見てもわからんから聞いたんやないか!それなら最初から張り紙に書いとけよ!
★住居部分3K快適な広い住まいです
とかなんとか書いてあれば、それなりに高いだろうと想像つくし、おばはんの時間とらせんで済むわ。
あー、感じ悪。

まあ、本気でここを借りたい!と思いを定めて聞きに行っているわけじゃない私も悪いが(本当は悪いなんて思ってないけど)、こんな応対はないんじゃないのー、と、カチンときた。

そもそも昔はただの住宅地だった裏道で、アパートとしては価値が低かったはず。それが、いろんな人たちが谷根千を盛り上げてくれたおかげで、おばさんの不労所得が増えとるんやないか。
そういうおこぼれ以上のものに預かってるんだから、ちょっとした冷やかしの問い合わせに対応するくらいのことやってもええんとちゃうん!?

昨日、0円ハウスの坂口恭平のトークライブに行ったこともあって、土地の私有によってあぶく銭を手にするおばさんの高飛車な口調を思い出すと、無性に腹が立つ。土地の私有が云々という話はここですると長くなるので置いとくとして、この出来事は、引っ越し先を探す私が、谷根千を離れることの背中を押した(今も正確には谷根千じゃないけど、今の家の前は根津、その前は池の端、その前も根津に住んでた。大学卒業以来だ)。

今まで、商売をやめたお年寄りや、古い家を持て余していた人が、何か新しいことをやりたいが、資金はあまりないという若者に格安で物件を貸すことで、この辺りはある種の文化の発信地のようになっていた。今でも、「実はあまりおおっぴらに言えないけど、ここ○○万円で借りてるんです・・・」などと、安い家賃で物件を貸してもらっている話も聞く。先日のあの高飛車なおばさんのような人は特殊なのかもしれないし、谷根千がブームにならなかったら、あの人もあんなに高飛車にはならなかったろうと思う。

そんな谷根千は近年、企業資本の店が増え始めている。そのおばさんの持つ店舗にもそうした店が入っていた。結局、街の人気が出ると、家賃が上がって、安定してお金のある人しか物件を借りられなくなる。そして、街はつまらなくなっていく。

かつて魅力的だと思っていた代官山や表参道。表参道ヒルズなどは、分厚いガラスに閉ざされたブランド物の要塞。店の裏で熱い思いを抱いて、ものを作ったり、商品をセレクトする個人の姿が見えなくなって、まったくつまらない街になってしまった。

そして今、谷根千バブル。

凋落の道をたどりつつあるテレビが、制作予算が低下したために、予算のかからない「散歩番組」をやたら放送する。そのことが谷根千にさらに人を呼び込んでいる。テレビに出たというだけで、どうということもない店に行列ができていたりする(いや、ほんと最近は休みになるとどこでもここでも行列してるのです)。

静かな街に住みたいとかいうのは、私のわがままだし、商店街の人々が潤うのはいいことだ。でも、それに便乗して、そこの土地を持っているというだけで、高飛車な態度で不労所得で荒稼ぎするのはどうも解せない。早くバブル弾けちゃえよと、寝る前に呪文唱えそうになる(笑)。

町おこしってなんなんだろう・・・。
ちょうど良いあたりで安定すれば良いけれど、世の中そううまくはいかない。誰かが儲かれば、我も我もとなるのは人情。

それが飽きられた時にどうするか。
潮が引いたらさっさと出て行く企業の抜けた後に、何が生まれるのか…。ちょっと気が早すぎるか…。

実際、谷根千はまだ言うほどは大企業が進出しているわけじゃない。兆しである。まだまだ小さな面白い店も生まれているし、居心地の良い店もたくさんある。だからこそ、ずっと、そういう人たちが商売しやすい場所であって欲しいと思うのだ。とかいって、バブってるからもう嫌だとかって、町を出て行こうとする私の方が薄情なのかもね。

もう半月以上賃貸物件を探し続けているが、家を探しながら街を歩いているといろんなことが見えてくる。
見えてくるのは良いが、自分の家がまだ見つからない。
ちょっと真剣に考えろよ!と、自らを鞭打つのでありました。

住処のこと、火鉢クラブVOL.2のテーマになりそうだ。

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