ごろりんブログ

雫石鉄也のブログ

わが谷は緑なりき

2021年06月15日 | 映画みたで

監督 ジョン・フォード
出演 ロディ・マクドウォール、ドナルド・クリスプ、サラ・オールグッド。モーリン・オハラ、ウォルター・ピジョン

 炭鉱の街の話である。20世紀の日本では炭鉱といえば九州の筑豊だが、19世紀のイギリスではウェールズなのだ。フロスト警部もんを読むと、ウェールズというとイングランドにバカにされてるけど、ウェールズ人だって誇り高くいっしょうけんめい生きてるのだ。そういう映画である。
 19世紀ウェールズの炭鉱の街。緑が豊かな美しい谷だ。父、母、5人の兄さん、お姉さんが1人、そして長男のお嫁さんの大家族のモーガン家の末っ子ヒューの視点で映画は進む。
 炭鉱といえば、ストと落盤事故がぱっと思いつくが、この映画でもストと落盤事故が大きなエピソードとして描かれる。
 モーガン家の男は父、兄、男は全員炭鉱で働く。母、姉、兄嫁は家を守る。お父さんは一家の長で、食事でもお父さんの前に食べ物に手を出すと、手をピシャとたたかれる。お祈りしてお父さんが食べ始めて、みんなが食べ始めるのだ。
 この炭鉱の街も不況が来た。労働者の賃金は下げられ、モーガン家の二人も解雇された。姉の結婚、兄の事故死。モーガン家もいろいろあった。ヒューは学校に入学するが、ウェールズの炭鉱の子だとイジメにあう。父の友人に教えてもらったボクシングでいじめっ子をやっつけるが、イングランド人と思える教師に理不尽にも体罰を受ける。ボクシングの師匠が教師をどつき倒すところはスカッとする。
 時は流れ、ヒューも大人になった。父も亡くなった。ヒューはこのウェールズの炭鉱の街を出ていく。美しい緑豊かだったこの谷もボタ山がいっぱいになり、すっかり様変わりしていた。
 キリスト教のにおいは強いが、見ごたえのある名画だ。この映画を観終わったあと、なんだか「天空の城ラピュタ」を観たくなった。