


あらすじ(「BOOK」データベースより)
江戸は神田、玄関で揉めごとの裁定をする町名主の跡取りに生まれた麻之助。このお気楽ものが、町の難問奇問に立ち向かう。ある日、女好きの悪友・清十郎が「念者のふりをしてくれ」と言ってきた。嫁入り前の娘にできた子供の父親にされそうだという。本当の父親は一体誰なのか。




玄関で町の揉めごとの裁定をする町名主という存在を初めて知り、興味深く読みました。裁定によって感謝されたり恨まれたり、大変な職業というのが第一印象。
主人公の麻之助は町名主の跡取り。16歳までは生真面目で勤勉だったのに、突然人が変わってお気楽ものになりました。お気楽ものでけんかが強くて、ふらふら遊んでいる麻之助、その裁定が見事なんです!真実を大事にし見極め、揉めごとにかかわった人たちの幸せを願う人情深さ、悪は許さない正義感、そして時折見せる切ない一面、とても惹きつけられました。お気楽ものに見せておいて、そんな噂は町中にも広まっているにもかかわらず、麻之助の裁定は元来の真面目さがきちんと出ていて、子供のころから本質は変わってないんじゃないかと思わせられます。
麻之助が心に秘めている思いをどうするのか、今はしたくないと思っている結婚をするのか、気になります。じんわり温かく、ちょっぴり哀愁漂う物語、続きを読みたいと思います。