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食・飲・読の日記

日々の食べたり読んだりを綴ります♪

いつまでもショパン@中山七里

2014-12-02 15:30:36 | 本(な)
  いつまでもショパン@中山七里 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
難聴を患いながらも、ショパン・コンクールに出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、コンクール会場で刑事が何者かに殺害され、遺体の手の指十本がすべて切り取られるという奇怪な事件に遭遇する。さらには会場周辺でテロが頻発し、世界的テロリスト・通称“ピアニスト”がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。岬は、鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!




岬洋介シリーズ第三弾です。
第二弾 おやすみラフマニノフの読書感想文はこちら
第一弾、第二弾は日本が舞台だったのに対し、第三弾はポーランド。しかもショパンコンクール。そしてテロ。爆弾。何やら物騒な気配が漂います。それでも岬洋介は岬洋介のまま、クールなのに温かく、自分のことは後回しでいつも他人のことを気にかけてる、かっこいい男性です。心ときめいちゃいます。そしてこのシリーズのだいご味と言えば音楽の記述。曲を言葉で表すってすごいです。テンポ、強弱、浮かび上がる風景、運指まで記述されています。中山七里さんの博識に脱帽です。特に今回は運指の記述が私にはおもしろかったです。自分の指をチョロッと動かしてみると「ありえない!」と驚きました。ポーランドの期待の新星・ヤンの成長物語の要素が多く、ミステリーとはちょっと言い難いような‥。最後の岬洋介のノクターン、人の心を動かすノクターン、実際に演奏を聴いてみたいと思いました。テンポよく、おもしろく読みました。ただ、もうちょっと岬洋介に近づきたいな、岬洋介のことを知りたいなという思いが残りました。

下戸は勘定に入れません@西澤保彦

2014-09-25 09:33:33 | 本(な)
  下戸は勘定に入れません@西澤保彦 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
大学で教鞭をとる古徳先生はバツイチ・独身の50歳。人生に疲れ、酔って死ねれば本望とウイスキー片手に夜道を歩き始めたが、偶然、旧友・早稲本と出会ってしまう。いまや堂々たる実業家のこの男は、かつて古徳の恋人を奪って結婚したのだった。気まずさに逃げようとする古徳だが、早稲本の誘いを断り切れず、豪邸のホームバーで杯を傾けることに。やがて、酔った2人は28年前の晩へとタイムスリップしてしまう。条件が揃うと、酒の相手を道連れに時間をさかのぼってしまう古徳先生。はたして失った恋の秘密を解き明かすことができるのか?前代未聞のタイムスリップ本格ミステリ!。




同じ日付・曜日に同じ相手と同じお酒を飲むと、過去のその日にタイムスリップできるという設定はおもしろかったです。お酒を飲んでいるにも関わらず、謎を推理する主人公・古徳って、頭いいなぁと思います。私の場合、酔ってなくても推理できません。2話目の「もしくは尾行してきた転落者の謎」は他とちょっとテイストがちがって、悲しくてせつなかったです。ただ、最後は条件がそろわないとできないタイムスリップがあっさりできたり、早稲本の娘の父親が誰かが結局わからないし、ちょっと納得いかないところがありました。まぁハッピーエンドっていうのはよかったかな。

おやすみラフマニノフ@中山七里

2014-06-11 15:32:28 | 本(な)
  おやすみラフマニノフ@中山七里 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
第一ヴァイオリンの主席奏者である音大生の晶は初音とともに秋の演奏会を控え、プロへの切符をつかむために練習に励んでいた。しかし完全密室で保管される、時価2億円のチェロ、ストラディバリウスが盗まれた。彼らの身にも不可解な事件が次々と起こり…。ラフマニノフの名曲とともに明かされる驚愕の真実!美しい音楽描写と緻密なトリックが奇跡的に融合した人気の音楽ミステリー。




「さよならドビュッシー」に出ていた岬洋介が事件を解決するミステリーです。第1章はじめに、ピアニスト岬洋介がオーケストラとともに演奏している描写で、なぜか鳥肌が立ってしまった! たぶん、物語の語り手である城戸晶の興奮が私に伝わって、伝わりすぎて、鳥肌になったんじゃないかと。クラシック音楽にはとんと疎い私ですが、この本の音楽描写はまるで音楽を聴いているかのように、音楽を読んでいる感じがします。とにかく音楽の表現がすごくて、1章読むごとにYouTubeで音楽を聴きたくなりました。ていうか、実際、本を片手に聴いてました。クラシック音楽に詳しい人はその描写をどう感じるかわかりませんが‥ 事件解決は最後の最後、どんでん返しありの結末で、ミステリーとしても楽しめました。が、音楽が強く印象に残りました。
ちなみに以前読んだ「さよならドビュッシー」は、結末にインパクトがありすぎて、まさにミステリーという感じがしてとてもおもしろかったです。

お父さんと伊藤さん@中澤日菜子

2014-06-07 15:01:33 | 本(な)
  お父さんと伊藤さん@中澤日菜子 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
娘と彼氏の狭い同棲部屋で始まったぎこちない共同生活。すれ違って生きてきた父と娘に心通じあえる日は?第8回小説現代長編新人賞受賞。誰にでも起こりうる家族問題を笑いと緊張の絶妙なタッチで描くデビュー作!




娘・彩の視点で物語は描かれています。彩34才、同棲している彼氏の伊藤さん54才、突然2人で暮らしている狭いアパートにやってきてしまった彩のお父さん74才。なかなかシュールな設定です。彩はゆるーい感じで生きていて、今は伊藤さんと楽しく暮らしているからそれなりにいい状況。そこにやってきたのは昔から苦手だったお父さん。この、昔から苦手だったお父さんというところに、私自身共感し、彩側に付いてぐいぐい読み進めました。お父さんのとんでもない秘密を知るところでは、彩の絶望・怒り・あきらめといった気持ちがストンと理解できました。それでも彩は、お父さんのことを「どうしようもなく、それはあたしの父」と改めて認識します。ここ、そうだよね、父は父。うんうん、とうなづいてしまいました。
この物語で彩やお父さんは「私と一緒」「お父さんと似てる」という感じですが、伊藤さんは‥‥。ちょっと不思議な雰囲気を醸し出しています。その伊藤さんがいろいろなことのクッションになったり、彩の背中を押したりで、とても素敵なのです。最後の伊藤さんのセリフ、ぐっときます。家族との関わり、人との関わりを考えさせられる作品でした。

追伸:「見晴るかす」「吃驚した」という表現はしっくりきませんでした。会話で「吃驚したわよー」とか使わないもので‥

雪と珊瑚と@梨木香歩

2014-05-08 14:01:15 | 本(な)
  雪と珊瑚と@梨木香歩 

あらすじ(「BOOK」データベースより)
珊瑚、21歳。生まれたばかりの子ども。明日生きていくのに必要なお金。追い詰められた状況で、一人の女性と出逢い、滋味ある言葉、温かいスープに、生きる力が息を吹きかえしてゆくー。シングルマザー、背水の陣のビルドゥング・ストーリー。




できちゃった婚でシングルマザーの珊瑚。働かないと生きていけない切羽詰まった状況で偶然見つけた張り紙「赤ちゃん、お預かりします」 ここで年配の女性、くららと出会います。くららは子供を産んだことのない、元修道女。私はくららの魅力にひきつけられ、物語の前半すらすら読み進んでいきました。気持ちが温かく、おおらかで、でもしっかりした信念を持つ、料理上手なくらら。そんなくららと出会い、人との関わりを拒絶してきた珊瑚の気持ちが変わっていきます。赤ちゃんがいることで変わらざるを得ない状況でもありました。珊瑚自身は母親からネグレクトされ、「普通の家庭」を知らずに育っていて、頑固でくそまじめで融通が利かない人です。珊瑚がそうした自分の頑なさ、人からの助けは受けないというプライドと折り合いをつけていく物語です。珊瑚の育った環境、今の状況を思うと「頑張って」と応援したくなりそうなものですが‥ 私は何か違和感を感じました。くららと出会う前はバイト先のパン屋の夫婦や同じアパートに住む那美に助けられ大切に思われています。くららと出会ってからはくららはもちろん、たくさんの人たちに支えられ助けられ、総菜のお店を出し、成功します。すごく人間関係に恵まれています。物語の最後のほうで、珊瑚を慕う同僚に「うらやましい」と言われる珊瑚。元同僚に「大嫌いです」という手紙をもらう珊瑚。ここで私の違和感の元がわかりました。この「うらやましい」と「大嫌いです」の両方が私の心にあったのです。それを突き付けられ、私自身の心の狭さ、いやらしさを思い知らされました。現実にはそんなにうまくいくはずがないとも思いました。珊瑚の気持ちもあまり理解できませんでした。
それでも最後はなんだかじんわり、ほっこりした気分になりました。それからくららのお料理にも、心を温めてもらいました。