艦長日誌 補足(仮) 

タイトルは仮。そのときに思ったことを飲みながら書いたブログです。

三国日誌 補足(仮) その17~趙雲の苦悩

2008年09月21日 23時51分30秒 | 三国日誌 補足(仮)
 三国日誌 補足(仮)前回までのあらすじは…

 「今日あたりはドッピオくんも、晩飯は鍋かい?」上司が尋ねてきた。
 夜になって気温が下がってきたので、無類の鍋好きな僕としては確かに鍋もいいけど、食材買いに行くのが面倒。
 「最近はイカめしばかり食べてます」
 「イカめし?!なんで?」
 「大量に買ったのがあって。最初はおいしかったんですけど、飽きてきました」
 「それは、ここのところ仕事終わるのが遅いからスーパーに買い物も行けないってこと?」
 「いや!そういうわけでもないっす」(実際今週は早めに帰ったりもしてるし)
 「栄養偏るね」
 「がっつり偏ってます。なので一応、子持ちめかぶなんかも食べてます」
 「毎日?」
 「毎日」
 この様子を聞いていたらしく、部長がやってきて、「毎日イカめしって、切ないね」と、かるく半笑いで。僕も半笑いで。

 北方の雄である名門の袁紹と、成り上がりながら中原の覇者である曹操が、官渡(かんと)で対陣し、その戦が長期間に及びました。
 そんなときに、三国志ダメ人間選手権があったら一、二を争う、我らが劉備玄徳さんは何をしていたか?
 詳しくは『三国日誌 補足(仮) その15』をご覧ください。

 …

 放浪の末、荊州の劉表を頼ることにした劉備、関羽、張飛の三兄弟と、趙雲。その他ご一行さま。
 運が良かったのかなんなのか、意外にも主の劉表に好かれることができて、新野(しんや)という地方に、まんまと食客として雇われの身となりました。

 

 ようやく、この「三国日誌 補足(仮)」にも、地図を導入しました。わーい。
 今まで「地図がないから位置関係わかんねーよ!」「漢字ばかりで読みづらいんだよ!」と、ジョッキ片手にお叱りを受けてきましたが、これならどうさ。

 (でも、地図を探すのが面倒でもないんだけど、時間かかるので、本編のほうは今後短めになりそうです。まぁ、少しは短くなったほうがいいのかな。今までの文章の長いこと長いこと。自分で読むのはイヤンなるもん)

 「新野か~…いいところだね」
 「いいところですね」
 誰ともなく呟いた劉備に、趙雲が答えます。

 この新野という地方は、荊州では北方に位置します。ここからさらに北にあるのは曹操の拠点である許昌(きょしょう)。つまりは、圧倒的な兵力を有する曹操とは最前線の位置にあたるところ。

 まんまと食客として荊州の劉表のごやっかいになることになった劉備たちですが、配置された場所は、あんまり条件のいいところとはいえない。曹操がその気になったら大軍勢で押し寄せてくるような場所だし。

 もちろん、劉備を養うこととなった劉表陣営としての狙いはそこでした。いつ攻めって来るかわからない曹操に対する備えとして、劉備を置いたのですから。

 最初、放浪の末にやってきた劉備に対して、劉表は寛大な態度で一行を迎え入れました。
 なんといっても「劉」の姓がつくってことは、歴史を遡れば、たぶん同族だし、劉備の世間の評判はすこぶるいいものだったし、しかも帝からはその血筋を認められて「皇叔」としての立場も持っていたから。
 こういう人間とお近づきになるのは、劉表にとってもマイナスではない。しかもそんな人間が窮乏に瀕しているなら、助けるのもまた、ひとの道ではないか。

 劉表そのひとはけっこういいやつです。その昔、帝の命で役人としてこの荊州に赴任し、一人でコツコツと仕事をして今では荊州の主という地位を築きました。苦労人だったし、ひともいい。
 だから劉備の境遇には心から同情していました。曹操から追われている境遇に対して。

 だが、劉表の下にいる者たちは「コトはそんなに単純じゃあないぞ」と考えました。
 そもそも、曹操なんかに目をつけられるほどの人物ってのは、良くも悪くもものすごい人物であるに違いない。それが良いものでなくて、目の敵にされているということは?…劉備玄徳というのは、危険な人物であるということではないか?

 劉表の幕臣に蔡瑁(さいぼう)という男がいます。
 この男、字は伝わってません。三国志には何百人も登場人物がいるのですが、なかには字が不明の人間ってのも多い。
 現代までの1800年という時を越えて、その名が残らなかったのは、歴史の偶然か、はたまた必然か。

 蔡瑁には美人の妹がいました。この妹は劉表の第二夫人として嫁いでいます。つまりは劉表とは姻戚関係にあります。
 そんな蔡瑁が劉表に言いました。

 「我が君、聞くところによると、劉備がこの地に留まることを許可されたとか?」
 「ああ、劉備は噂どおりの好青年だったよ。今は曹操を敵に回して大変な目にあっているようだから、好きなだけ滞在していいと許可した」
 「ちと危険ではありませんか?」
 「危険とは?」

 蔡瑁は、諭すように話しました。
 「曹操に目をつけられるほどの人間が、いつまでもこの地でおとなしくしているわけがない。いつか我が君と肩を並べて、この荊州を自分のモノにしようとまでするかもしれない」と言って、劉表の不安を煽りました。
 あくまでも、この荊州と自分の主人を守りたいという自分の気持ちが劉表に伝わるように、言葉を選びながら。

 劉表の正室にも男の子がいて、世襲に習うのなら、その子こそが劉表に万が一のことがあったときには跡取りとなるのですが、劉表の第二夫人である蔡夫人にも、劉表との間に男の子がいました。
 蔡瑁としては叔父の地位を利用して、ゆくゆくは荊州において摂政のような立場を狙っていたのです。もちろん正室との間の世継ぎの子は廃してしまって。
 そんな野望を奥底に秘めながら。
 劉備みたいな人間が、劉表の信用を得て、いつか荊州において力を振るうことになるのは、蔡瑁にとってはありがたい話ではありません。

 ときに涙を浮かべながら熱弁を振るう蔡瑁に、思わず劉表も騙されてしまいました。
 いずれ中国全土を巻き込んでの戦乱の世がくるだろう。曹操にそこまで危険視されるほどの劉備ならば、国境近くに配置することによって、この荊州の安全をも図れるのではないか。蔡瑁の進言を聞いているうちに、劉表はそう思いました。

 こうして劉備は、養われることは保証されながら、その引き換えに、北方の危険な地である新野の城を任されることになったのです。

 「曹操が攻めてきたらどうしますか?劉備どの」心配顔で尋ねてきたのは、新参の趙雲子龍でした。
 「おお、超雲か。どうしたそんなに慌てて。まぁ、飲んでおけ」

 新野に赴任してからも、劉備、関羽、張飛の三人は飲んでばかり。
 「劉備という人物は、きっと万人を戦乱から救う世を作ってくれるに違いない。自分はそんなひとについていきたいし、仕えたい」と志を持って駆け参じた趙雲でしたが、最近では「早まったかな?自分の方向性を決めるのを」と、悩んでいました。
 まるで、放分に入ってみたら「期待したほど楽しいサークルでもないな」と思いはじめた一年生のように。

 「曹操は今、官渡で袁紹と睨みあっていて、とてもこっちまで兵を回す余力はない。心配しなくてもだいじょうぶだよ」劉備は楽観的な口調で言いました。
 「ならば、こっちから逆に手薄となっている許昌に攻め入ってみては?」真剣にそう問いかける若者の趙雲に、劉備もきちんと目をみて答えました。
 「できることならそうしたい。だが、こっちの手持ちの兵力はどんなに見積もっても曹操の何十分の一にもならない。今コトに及ぶのは無謀ってものだ。な~に気を楽にして推移を見ていよう。苦労して苦労して道が開けるってひとはいうけど、ときには何もしていなくても自然と運が転がり込むってこともある」

 テキトーじゃん。
 趙雲は思っていました。しかし趙雲は同時にこうも考えました。「この劉備さんは今の今までテキトーな生き方だった。だったかもしれない」
 よくよく思い返せば…劉備という人間は関羽と張飛の三兄弟で、黄巾の乱を鎮めるための義勇軍を結成して、その活躍は諸国に鳴り響いた。だがその成果は認められずに流浪の日々。危機に陥った人間を助けて、助けられて、その恩を忘れることなく、必要以上のものは欲しない生き方をしてきた。
 曹操や、その他群雄が力をもって、軍事力で領土を拡大し、その下で犠牲になる人民や兵士たちの数多の命を失うなか、それを自ら欲せずして、まるで危険を避けるかのようにこここまで生き残っているのは、今この乱世ではこのひとだけではないのか?
 危険を避ける能力というのは、生き残るためには絶対に必要な力であるし、今もって英雄と呼べる人間のなかに、それを備えているのは劉備だけかもしれない。
 ひとの心が荒みきった戦乱の世の中で、義の旗だけで生き残り、今また流浪の日々を送っているかもしれないが、誰よりも自分以外の幸せを考えているのはこの劉備さんなんじゃあないか。

 「ところで趙雲、今日飲みに行こうぜ」

 思考を中断されて我に返った趙雲は耳を疑いました。
 「え?昨日の飲んだじゃあないですか」
 「今日は村さ来で100円サワーの日だから行こうぜ」
 「昨日もそう言って飲みにいったじゃあないですか?!行きません!」
 …やっぱり、このひとがすごいひとだと思ったのは勘違いだったかな。趙雲は複雑に思いました。やっぱテキトーだ。このひと。
 「前フリうまいね~。店の前で『偶然~!』とか言って待ってるんでしょ?」
 「行きませんよ!」
 「今夜しか」
 「行きませんってば!」

 その何時間かあと、村さ来の前で待っている趙雲は、陽の暮れた寒空を眺めながら、もう一度わが身を省みて「劉備さんについていっていいんだろうか?」と自問することになりました。

 その頃、蔡瑁は「なんとかして邪魔な劉備を始末するには…」という謀略を張り巡らせていました。
 劉表には、危機感がない。劉備はおとなしく飼いならされるようなタマじゃあない。除いておかないと、いつか災いとなるだろう。しかし我が君が「劉備を保護する」と宣言した以上、部下としてその命令には逆らえない。
 「こうなれば、暗殺しかない」

 つづく(たぶん)

 :三国日誌 補足(仮)の補足
 三国志ってやつは、話としてはとんでもなく長いし、たくさんの登場人物も出てきて、ハッキリ言って僕なんかの文章力ではとても書ききれません。
 また、今までの話は時間軸もめちゃくちゃな書きかたとしてきたので、「こんなんじゃあ意味わかんないよ!」とジョッキ片手に憤慨されたことも反省して、なるべく順番に書いていきたいと考えてます。
 でも、なんつっても三国志を一から書くと長いので、今回の「劉備たちが荊州に流れ着いたところ」から「諸葛亮の登場」「赤壁の開戦」までの時系列的に流していくつもり。
 途中、聞いたことのない人物の名前や地名、もしくは普段の日記にあるような意味のわからない表現も多々、登場することになりけど、初めてのかたでもなるべくわかりやすく読めるように工夫していく所存です。
 結果として、解説めいたことが重複してしまったり、間延びした文章になることもあるでしょうが、そもそも飲んでいるときも同じ話をしだしたり、間延びするような性格なので、ご容赦ください。
 「赤壁の開戦」まで、って。三国志の中で最大のターンポイントとなる赤壁の前で書くのやめんのかい!ってカンジもあるけど、なんつーか、一緒に寝てもなんにもしないでホントに寝てしまうどっかのドッピオみたいなもんだから気にしないでね。
 慢性的に、突発的に、発作的に書き連ねて、今年中には赤壁までいきたいな~。