かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 70

2023-07-05 13:12:59 | 短歌の鑑賞
  2023年版渡辺松男研究⑨(13年10月)
     【からーん】『寒気氾濫』(1997年)33頁~
      参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター 鈴木 良明    司会と記録:鹿取 未放


70 父は酔いて帰りてゆけり寒々と罅われし樹のごとき銀河よ

       (レポート)
 作者の家に父が訪れ、酒食をともにした。日もすっかり暮れて、酔った父が自宅へ帰ろうとする。見送りながら戸外にでてみると、「寒々と罅われし樹のごとき銀河」が展かれている。「冷え冷え」ではなく、「寒々と」とあるから、季節は、初冬であろうか。星空だけが煌々と照り輝き、罅われた樹皮のような銀河に、まるで呑み込まれるかのように、父は帰っていったのである。 (鈴木)


       (当日意見)
★「寒々と罅われし樹のごとき銀河」というのがお父さんの内面の比喩でもあるんで
 しょうね。(鹿取)
★人間の体は宇宙っていうことがあるから、下の句はお父さんのことだと思っていま
 した。(慧子)
★直接には「罅われし樹のごとき」は銀河を形容しています。でもその「罅われ」が
 お父さんの精神の亀裂のようにも感じられます。まあ、戸外に出たとき見た景であ
 っても、お父さんの精神の象徴であっても、結局は同じ事ですね。(鹿取)         

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