かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 239,240

2024-04-12 10:38:45 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究29まとめ(2015年7月実施)
    【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)100頁~
    参加者:S・I、M・S、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


239 初夏のわれは野に立つ杭となり君の帽子の飛びくるを受く  

        (当日意見)
★いつでもどうぞ、どこへ飛んできてもエラーしないで受けますよという感じが出て
 いる。(M・S)
★どっしりとした存在感がある。寺山のような青春歌ですね。(S・I)
★気持ちの良い初夏に野原で杭となって君がたわむれに帽子を投げるのを受けている、
 そんな素直な歌として読んでもいいように思うのですが、なぜわざわざ「杭」なんで
 しょうね。何せ一連の題が「陰陽石」ですから、つい余計なことを思ってしまうので
 すが。フロイト流に解釈すと、尖った物は男性性を、丸い物は女性性を表す訳ですか
 ら、まあこの歌も裏にはそういうことを暗示しているのかなと思います。(鹿取)


240 朝早き地震に根元揺さぶられ爽快となる五月の壮樹  

        (当日意見)
★さっきのフロイトの話からすると、また違う意味になってきますよね。でもこれ
 は、素直に読んでいいのかな。(S・I)
★これは素直に読んでいいのかなあ。地震だから地が揺れるんで根元が揺さぶられるの
 よね。それで爽快になるというのはよく分からないんだけど、運動したような感じで
 さっぱりするのかなあ。「壮樹」って造語でしょうか、壮年の樹ってことですよね、
 そこに自分を重ねてはいるんでしょうけれど、読んで爽快になる歌ですよね。(鹿取)


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