かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 115

2023-09-14 11:06:26 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究13【寒気氾濫】(14年3月)まとめ
      『寒気氾濫』(1997年)48頁~
       参加者:崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:崎尾廣子 司会と記録:鹿取 未放


115 まばたけば深まりてゆく静寂の花敷(はなしき)部落月あかり冴ゆ

      (レポート)
 群馬県吾妻郡に一軒宿の「花敷の湯」がある。「花敷部落」はこの花敷温泉がある集落なのであろう。夜更けと共に集落の人々の眠りも深まっていく。「まばたけば」から「花敷部落」に月の冴ゆる集落の「静寂」を改めて実感している。地名が歌に静かな調べを作っており余韻も生まれている。(崎尾)
  花敷温泉:猪狩りのためにこの地を訪れた源頼朝が発見したとされています。その
       ときに、桜の花びらが一面に敷きつめたように湯に浮かんでいたことか
       ら「花敷」と名付けられました。歌人の若山牧水もこの地を訪れ「一夜
       寝てわがたちいづる山かげの温泉(いでゆ)の村に雪降りにけり」の短
       歌を残しています。(インターネット)

                               
         (当日発言)
★レポーターのインターネットとあるのは「中之条町観光協会」のHPからの引用です
 ね。源頼朝が発見とか牧水が歌を詠んだとか権威付けがされてますけど。花敷部落は
 牧水が「みなかみ紀行」で訪れた村の一つでたくさん歌を詠んでいて、たくさんの歌
 碑も建っています。花敷部落、美しい名前ですね。(鹿取)
★私は「まばたけば」が分からない。まばたかなくても月明かりが冴えているのは見え
 る。(藤本)
★でも「まばたけば」があるのが渡辺さんですよね。自分の行為と対象をわりと強引に
 結びつけている。(鹿取)
★ここがうまいところだ。普通の人は情景だけ詠むんだけど。「まばたけば」があるか
 ら静止画ではなく時間の移り変わりが出ている。まばたいて見る度に風景が深まって
 いく。まばたく度に新しい視点を更新していくような感じ。それに実感ができる。
    (鈴木)
★そうですね。「まばたけば」があるから渡辺さんの肉体がでているというか、肉体を
 通してリアリティを保証している。(鹿取)

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