かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 365 中欧②

2023-10-18 23:04:24 | 短歌の鑑賞
 2023年度版馬場あき子の外国詠51(2012年4月実施)
  【中欧を行く ドナウ川のほとり】『世紀』(2001年刊)P96~
   参加者:N・K、崎尾廣子、鈴木良明、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:渡部 慧子 司会と記録:鹿取 未放


365 旅人は何を見るべきただ静かなハンガリーの秋を漁夫の砦に

     (レポート)(慧子)
漁夫の砦:ドナウ川に沿ってネオロマネスク様式で建立された、数個の尖塔と廻廊。砦
      といっても闘いに使われたものではなく、マーチャーシュ教会を改修した
      建築家シュレックが街の美化計画の一環として建造した。この名はかつて
      ここに魚の市がたっていたことや、城塞のこのあたりはドナウの漁師組合
      が守っていたいたことなどから付けられた。白い石灰石でできた建物自体
      も幻想的で美しいが、ここはドナウ川と対岸に広がるペスト地区を一望で
      きる絶好のビューポイント。(「地球の歩き方」)

     (当日発言)
★1、2句が眼目。最初から風景に入っていくのが普通の歌い方だが、ここで気分をし
 らしめている。一呼吸おいてから焦点を絞っていく見せ方。(鈴木)
★「ハンガリー」と大きく出ているところがおもしろい。(鹿取)
 

     (後日意見)(2013年10月)
 例えば「ケンピンスキーホテルの一夜リスト流れ老女知るハンガリー動乱も夢」など一連の終わりの方の歌を読むと、365番歌の初句と2句がそれらの終わりの方の歌の伏線になっているのが分かる。つまり漁夫の砦からはドナウ川に沿って美しい町並みが広がっている。静かな秋の景観に旅人である〈われ〉はうっとりしてしまう。しかし美しい景観の背後にはハンガリー動乱はじめ歴史上の戦いの傷が隠されているのだ。〈われ〉はそれを見なければならないし、見ようと思う。それら戦いの記憶に、(たとえ戦さに使われたものでなかったとしても)「漁夫の砦」という名称の選びは意識の中で繋がっているのだろう。(鹿取)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男『寒気氾濫』の一首... | トップ | 馬場あき子の外国詠 366... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事