かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  283

2021-08-14 19:22:44 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究35(16年2月実施)
    【ポケットベル】『寒気氾濫』(1997年)118頁~
     参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、曽我亮子、藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:石井 彩子 司会と記録:鹿取 未放


283 テーブルのテーブルかけを外しつつ内閣のまた支持率下がる

       (レポート)
 内閣支持率が下がっているという、やがて総理も変わるだろう、この国のトップはすぐ変わる、まるでテーブルかけを外すように簡単で容易なことだ。テーブルかけを外すという行為によって、「内閣支持率が下が」っている事象を想起された。テーブルかけをつけたり外したりすることは日常的な反復行為で、また明日になれば新しいテーブルかけを付け、宴会や会議が始まるだろう、そこで国の政策や方向が決まるのかもしれない。人は束の間に現れては退場する、が、恒久的なものはなにもない。ニーチェの永劫回帰を思わせる。(石井)


     (当日発言)
★レポートでは「テーブルかけを外すように」とおっしゃってるけど、「外しつつ」だから
ちょっと違う。この歌集は1997年の刊行だから、細川さんから村山さんに替わった頃か
な。(藤本)
★2枚目に余ったので安倍内閣とオバマの支持率の表を載せました。(石井)
★この図は関係ないですね。時代が違うから。(藤本)
★いや、いつ作られた歌か分からなかったものですから。(石井)
★この歌集は1997年の刊行だから、作られた時代は見当が付くと思いますが。(藤本)
★まあ、この歌は別にどの内閣の時のという具体的な話でなくていいと思うけど。〈われ〉
が「テーブルかけを外しつつ」テレビか何かでまた内閣の支持率が下がったというニュー
スでも見ているのかと思いました。なるほど、宴会のホテルのテーブルかけという設定
は、内閣の支持率とよく繋がるけど、作者の意図は違ったような。レポートの「テーブ
ルかけを外すように」総理がすぐに変わるというのは現実にはそうかもしれないけど、
歌はあくまで支持率が下がる話です。テ ーブル掛けを掛け替えるように次々トップが
変わる話ではないです。(鹿取)
★「テーブルかけを外」すのは作者の行為ですが、テーブルかけを外すことによって、いつ
か聞いた内閣の支持率が下がっているということを想起した。プルーストがマドレーヌ
を食べながら昔 のことを思い出したようにです。(石井)
★なるほどね、今テレビを見てるより思い出した方が自然かもしれないですね。(鹿取)
★「テーブルかけを外」すのと同じような感じで政治を見ている。飲食と同じです。日常茶
飯のことでたいしたことではない、作者は政治にたいした関心を持っていない。(慧子)
★いや、私はむしろ飲食と同じように政治も大事だと思いますし、「作者は政治にたいした
  関心を持っていない」とは思いません。(鹿取)
★支持率が下がるという今のことを言っているから、作者が政治に関心があるとかないと
 か、あまり深い意味はないと思うけど。(藤本)
★内面的な関連が必要です。ただ事象だけを詠んでいるわけではないので。(石井)
★テーブルというのは組閣などのことで、まとまっているものがやがて崩れてきたりしてみ
 んながバラバラになる。そんなことかなと読んだのですが。内閣がテーブルかけを外すの
 ではなく、やっぱり作者なのかなあ。(真帆)
★「テーブルかけを外」すという行為は下句と関連性があるようにうたわれている訳で、そ
 うでないと解釈ができないです。こじつけ的な解釈かもしれないけど。浮き世の上がった
 っり下がったりを冷ややかにみていらっしゃるのかな。(石井)


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