かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  346

2021-10-30 13:50:00 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究41(2016年8月実施)『寒気氾濫』(1997年)
     【明快なる樹々】P139
      参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部 慧子    司会と記録:鹿取 未放


346 逆光の湖につぎつぎ白鳥の降りたちてきてひかりにかわる

    (レポート)
 逆光だから作者にはまぶしい湖が広がる。そこへ白鳥がおりたちてひかりにかわると言う。まぶしんでいると物は完全には見えない。その状態を捉えたのであろう。白鳥はまぶしさのなかでまぶしいものになった。動から静へうつるときひかりに変容した。(慧子)


    (当日意見)
★湖はいつも光を生んでいる。(慧子)
★以前に「秋桜の逆光の路」の歌を鑑賞したが、あれと同じで、白鳥が光輝いている湖と一体
 になって光になる。(真帆)
★逆光の中を黒っぽく見えながら降りてきて、日溜まりに降りてくると白く見える。(M・S)
★ただ逆光だというだけだと白鳥である必然性がないと思うのですが、ここは対象が白鳥であるこ
 とが大切です。白い色と、やはり白鳥という鳥に清らかさとか神々しいものを見ているんだと思
 います。それが次の歌「日のなかにまどろみていし白鳥が羽ばたくときに日をはじきたり」 に 
 繋がっているのでしょう。(鹿取)


    (後日意見)
泉発言の「秋桜の逆光の路」の歌の全体は「秋桜の逆光の路へ行くひとよまぶしき路はにんげんを消す」。『寒気氾濫』の「垂直の金」の一連にある。
 また、この前後の歌をもっと突き詰めていくと『泡宇宙の蛙』(1999年刊)の【白鳥】の中の名歌「白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた」に行き着くと思うが、その点は次の347番歌で解説する。(鹿取)

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