かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 301

2024-08-19 08:52:14 | 短歌の鑑賞
  2024年度版 渡辺松男研究37(2016年4月実施)
     【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)124頁~
      参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、
         曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放

301 わが首のにおいをさせて五十本ネクタイが闇につるされている

      (当日発言)
★レポーターはネクタイを50本も持つ人はいないから50人が解雇の心配をしている
 と解釈されていますが、私は意外に思いました。非常に感覚的な歌だと思いました
 が。五十本のネクタイを持っている勤め人もいるだろうと思います。30年くらいの
 間ですから。新入社員だった時はこれとか思い出もあるでしょう。(S・I)
★五十本というのがミソだと思いますね。三十本だったら一人のものと思うのです
 が。(真帆)
★五十本というのは少し多いかなとも思うけどあっておかしくない数ですよね。家に
 帰ってネクタイを吊したと思うのですが「わが首のにおいをさせて」のところが生っ
 ぽい感じがあってこの歌ではそこが面白いのかなと。(鈴木)
★五十本は一人の勤め人のネクタイの数として違和感なくとりました。においの部分は
 ついてはいろいろ解釈できると思います。物理的にも科学的に鑑定すれば、もちろん
 そういう臭いの分子だかが検出されるわけですよね。勤め人には自分の匂いのしみつ
 いたネクタイの存在を前に、おそらく様々な仕事上の苦難や人間関係の軋轢に苦しん
 だ記憶が蘇ったりするのでしょうね。「闇に」つるされているというのがポイントか
 なあ。闇につるされたネクタイが圧倒的な力で〈われ〉を引きずり込んでいくような
 感じ。(鹿取)
★私は首のにおいをさせた五十本のネクタイって涙ぐましい数だなと思いました。
  (慧子)
★脚光をあびることなく吊されているネクタイなのですね。(M・S)


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