かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 121

2023-09-27 13:54:12 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究14【寒気氾濫】(14年4月)まとめ
    『寒気氾濫』(1997年)50頁~
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、N・F、
        藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木良明    司会と記録:鹿取 未放
             

121 館外の森に雪降り剥製の大木葉木菟(おおこのはずく)義眼をひらく

      (レポート)
 「大木葉木菟」は、剥製などを展示している博物館の中にあるのだろうか。館外の森にはしんしんと雪が降って、本来ならその森の中に生息していたはずの大木葉木菟が捕えられ剥製の姿で立ちつくす。義眼を大きく見開いて剥製の大木葉木菟は何を思っているのだろうか。(鈴木)


          (当日発言)      
★木葉木菟というのはブッポウソウと鳴くので有名ですが、大木葉木菟というのはそれ
 より一回り大きいもの。それで秋から冬にかけては竹林に群れて生息する癖があっ
 て、そういう鳥が剥製にされて義眼を入れられる。家族のこと、仲間のこと、何を見
 ていたのだろうという疑問を感じた。そこを詠っているのかなと。(N・F)
★雪が降ると家の中も静かな感じになる。そこで義眼をひらくという感じはよく伝わっ
 てくる。(崎尾)
★時間帯が分からないけど、人がいっぱいいる館内だと目を開いたりしないから夜かし
 ら。(鹿取)
★義眼だからいつも開いているんじゃないの。(藤本)
★そうなのか、開くというのは瞬間の動作じゃないんだ。剥製だから開きっぱなし?常
 時開いた状態にあるということね。私は雪が降るという条件の中で、誰もいない夜に
 そっと義眼を開いて何かを見ているのかと思っていたわ。(鹿取)
★雪って空と地を行き来して、命を引き渡す役割をしていると作者が思っていたのかな
 と。さっきからの三首はみんな死んだものが出てくるので。(慧子)
★大鷹の剥製と白鳥の剥製ですね。119(冷凍庫から剥製に出す大鷹の死にて久しき
 血はしたたらず)と120(臓も腑も捨てられしなり白鳥の剥製抱けば風花のなか)
 は死んだ鳥に〈われ〉が何らかの働きかけをしていて、121は〈われ〉をかかわら
 せずに対象そのものを詠っている。義眼は常時人工的に開かされているけど、瞬間か
 ある一定の時間かの鳥自身の行為を詠んでいるのではないのかなあ。(鹿取)
★自分の過去を見ているんじゃないの。開きっぱなしの義眼をある時開けて。(慧子)
★逆に義眼が開きっぱなしだからすごいなあって。命がなくなっても開きっぱなし。あ
 る時目を開けるんじゃつまらない。(鈴木)
★なるほどねえ、半永久的に開きっぱなしって確かに怖いわねえ。(鹿取)
 

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