かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 86

2023-08-07 15:25:31 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究⑪(2014年1月)
    【精神現象学】『寒気氾濫』(1997年)40頁~
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放
       

86 超高層のカーテンウォールのとの曇り求愛飛翔の鳥を見ぬなり

       (レポート)
 ここでもランドマークタワーの超高層ビルを詠んでいる。あまりに高いので壁面が霞んで見えるのを、「カーテンウォール(帳壁)のとの曇り」と詠み、「求愛飛翔の鳥」をうまく導き出している。(鈴木)


       (当日発言)
★「見ぬなり」って否定しているけど、言葉として 「求愛飛翔の鳥」って言っちゃ
 っているので、読者は一瞬求愛のために飛翔していく鳥をイメージしますよね。
 作者は鳥がいないことに代表させて無機質な都市の殺伐感を言いたいのでしょう
 けれど、かえってか意図してか抒情的な歌になっている。カーテンウォールとい
 う言葉もいいですね。辞書的には「建築物で、構造上の荷重を支えない壁。総ガ
 ラスの壁やパネルの外壁などをいう」とありますが、装飾用のものということで
 しょうか。全体にことばが緊密でイメージがうまく繋がっていて、いい歌だなあ
 と思います。(鹿取)
★単なる鳥ではなく、求愛飛翔の鳥というところが大事なんでしょうね。(鈴木)
★生殖、命を繋ぐってことがここには無いということですね。(鹿取)


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