かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  178

2021-03-05 19:46:35 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究22(2014年12月) 【非常口】『寒気氾濫』(1997年)75頁~
      参加者:石井彩子、泉真帆、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:石井 彩子  司会と記録:鹿取 未放


178 6月の水たっぷりの樹影濃しひとりのおみなみもごりていん

        (レポート)
 6月は水の季節である。水の恵みをたっぷりと受けた樹の影は、どっしりと存在感を示すように濃い。水は植物ばかりではなく、あらゆる生命の源である。おみながみごもって、羊水の中で胎児が健やかに成長しているのだろうか。(石井)

      (意見)
★下の句は妊婦さんが別にいるのではなく樹の中に生命を持つおみなが身ごもっているのかと思い
 ました。あと、「たっぷり」が全体に効いていて羊水まで感じさせてしまう巧みさがある。
   (真帆)
★ひとりのおみなはこの樹によって身籠もったように感じました。(慧子)
★女性の身体は月の運行や宇宙の動きなどと関連しているので、ここもそういう感じ。三木成夫
 (しげお)という人が『内臓のはたらきと子どものこころ』(1982年発行築地書館)の中で
 「内臓系は植物と対応している」というようなことを書いています。加藤典洋の『人類が永遠に
  続くのではないとしたら』の中でも紹介されています。もっとも三木の言葉を援用しなくても、
  この歌そのまま実感として感じ取れる。(鈴木)
★生命感の躍動が樹木と妊婦に連動している感じ。(鹿取)
★共時性ですね。(鈴木)



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